79話 人前でいちゃつくな
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「はぁ。まぁ、いいけど。」
宮前が呆れたという風に大きく溜息をついた。
「西野が言いたい事はなんとなくわかるし。けど、それが私の性格なんだからいい加減分かってよね。」
流石、幼馴染。
良い意味でも、悪い意味でも、声に出さずとも、俺の本心はバレバレらしい。
「....」
今は何を言っても自爆しかねないので、宮前の視線は痛いが取り敢えず沈黙を貫く。
そんな俺の気まずさを空気を読まず和ませてくれるのが雄大だ。
「和花奈―。おはよー!!昨日はお疲れ様ー。」
嬉しそうに両手を広げ、宮前に抱き着いていく。
それまで不機嫌顔だった宮前の顔が一瞬で別人格のように華やぐ。
「雄大、おはよう。雄大も観に来てくれてありがとうっ!」
「昨日の和花奈も、めっちゃ可愛かったっ!」
「ふふっ!ありがとうっ!!雄大!」
「予選通過したし、今度は全国だなっ!」
「そうっ!今まで以上に頑張らないとだねっ!雄大もサッカー部インハイ行くんでしょ?一緒に頑張ろっ」
2人はキャキャと言っていちゃついている。
どうやら、この週末にあったチアリーディングの地方大会の話をしているみたいだ。
清女のチアは何度も日本一を取っているチアリーディングの強豪校であると雄大が自慢げによく話している。
「....、こ、これは....」
櫻崎さんは、そんなバカップルが創り上げる熱々の空気感に驚き、引き気味に俺のほうへ視線を流してきた。少し頬が赤い。箱入りのお嬢様としては、このようなバカップルのいちゃつきに免疫がないのかもしれない。
「あーっと....こいつらは、これが平常運転だから気にするな……。」
何も知らない人からすれば破廉恥だが、彼らにとっては、それは愛情表現の一つに過ぎない事を俺は、先輩方のラノベ本で学んだ。
「そう、なの、ですか?」
半信半疑なのも無理はない。
朝っぱらから、彼らの熱量にあてられているんだからな。
俺からしたら、公共の場で抱き合うだとか、手を繋ぐだとかは恥ずかしくてできないし、したくないという選択肢しか出てこないが、まぁ、きっと、俺が知らない世界がまだあるのだろうと無理くり理解をしている。
「お、お二人は、とても仲がよろしいのですね。」
たどたどしくも、そう無難な返答を返す櫻崎さんはなんとも言えない表情をしていた。
「度が過ぎてるけどな....」
「くすっ。でも、なんだかとても羨ましい光景です。」
最後に櫻崎さんは楽しそうに笑った。
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「それでー、西野の後ろにいる子は?」
いったい、誰?同級生?後輩?
雄大とのスキンシップが落ち着いた頃、我に返った宮前が俺達の隣にいた櫻崎さんへ視線を移した。
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