61話 嵐の前の静けさ
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「おはよー。」
「おー、おはー」
廊下で朝の挨拶が交わされるのをよそ目に、俺達は2年2組の教室へ向う。
教室に着くと、櫻崎さんは既にクラスの中心にいた。
陽キャの塊に囲まれて楽しそうにしている。
マカロン色のふわりとした癖のなさそうな髪の毛。昨日は、2つおさげスタイルで結んでいたが、そーいえば、学校では、髪の毛を結っているイメージがない。
まぁ、俺がそれほど彼女に関心が無かっただけなのかもしれないが。
髪を結わえると言う行為が、彼女の仕事モードを示すのなら、特別感があっていいなと思った。
てか、あれだな。
こうやって学校に溶け込んでると、
誰も、彼女がサクラザキさんだとは思うまい。
顔を隠せる職業ほど怖いものはないな。
そんな事を考えつつ、俺は、いつも通り、読みかけの単行本を開き、朝のホームルームが始まるのを待った。
HRが始まる5分前。
皆、次の準備や支度で、ガチャガチャと席に付き始める。
「西野君、おはようございます。」
さっきまで、教卓前でワイワイと雑談していた櫻崎さんが俺の隣の席に座った。
こんな形で関わり合いを持つとは思っていなかったから、少しだけ気まずい。
「あ、ああ。おはよう。」
誤魔化しついでに、『イラストの進捗状況はどうだ?』と聞いてみたいが、昨日の今日だし、高校だし止めておいた。
俺達の関係がバレるのは、お互い望んでいないからな。
まぁ、山本さんに聞けば、進捗状況くらい把握出来るだろう。
それでも、昨日の彼女の態度に俺は一つ疑問を持った。
それを確かめる必要がある。
けれど、櫻崎さんと二人きりで話すタイミングがない。
また編集部に2人同時に呼び出されるまで待つしかないか....。
しかし、神様は俺に矛と盾を向けてきた。
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