70話  サクラザキの誕生秘話②

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Twitterのアカウントを作って1週間。最初は、鍵垢で、暇なときに、気になる著名人をフォローして、記事や呟きを見漁るような事をしていました。恥ずかしながら、Twitterの使い方や、「RT」「フォロワー」「トレンド」なんかの意味はネットで検索したりして勉強していましたね。


それが、段々、鍵を外したり、面白いと思った呟きには♡を押したり、皆にもっと広まって欲しいものには、リツイートを引用してコメントを書いたりと、Twitterの沼にはまっていきました。

そして、ついに、承認欲求が私にも湧いてきます。

『自分も何か、Twitterで皆を楽しませたいな。』

『私も、凄いと褒められたいな。』

『ここならば、櫻崎という色眼鏡で見られることなく、Twitterの中の誰か。別人になれる?』

そう思うようになっていました。


その頃、なぜか、Twitterではアニメやイラスト、ラノベなどのジャンルがニュースやトレンドを席巻していたんです。

今、思えば、ちょうど、夏のコミックマーケット、『夏コミ』が開催されていた時期だったんだと思います。



そのニュースや広告、トレンドから、私は、Twitterにはイラストを投稿している人が沢山いる事を知りました。

リアルな動物のデッサンから、アニメキャラの二次創作まで幅広く。

アナログやデジタル、水彩、厚塗り、技法は様々。


何を思ったのか、私も、気づけば、習い事で描いたひまわり畑の水彩画を写真に撮って、自分のアカウントに投稿していました。

勿論、アナログの絵です。

投稿して、1時間、3時間、1日たっても、いいね♡は付きませんでした。

まぁ、当然と言えば当然ですね。

それが、初投稿ですし、フォロワーも50人くらいだったので。


投稿して1か月後。

『やっぱり、私には難しいかな...。おじい様に見つかる前に消そう。』

そう思って、その投稿イラストを削除しようとした時、私のイラストにコメントが付きました。

コメントには、こう書かれてありました。

『初リプ、失礼します。お互い、夢に向かって、頑張ろうな!』



1ヵ月も経ってからの事です。とてもラグのある返信でしたが、とても、とても胸が熱くなりました。


私は嬉しくなって、私を見つけてくれたこの人は一体どんな人なんだろうと、プロフィール欄を覗きに行きました。

プロフィール欄を見ると、私と同じ中学生でした。


『生きる事全てが嫌になって、ラノベの世界に逃げ込んだ中二病男子(13歳)。今は、小説投稿サイトに生息しています。夢はでっかく書籍化!!』と書いてありました。

一緒に、その小説投稿サイトのURLが貼ってあったので、私は、その人の小説を読みに行きました。


彼の小説はいわゆる、異世界ファンタジーの類で、才能や環境に恵まれない主人公が努力と覚悟だけで悪と戦うという異世界ラノベではありきたりの拙い設定の物語でした。

それでも、自分の人生に絶望しながらも、頑張る主人公の姿描写に、私は自分を重ねて読んでいました。

生きるのに必要なのは、自分がどう生きたいのか未来を想像する力。

人助けに必要なのは、自分を鼓舞してくれる未来の自分。


主人公が口癖のように自分に言い聞かせる言葉、『自由を手に入れる為に、俺は、死に物狂いで生きてやる!! 誰にも邪魔されないくらいの富と名声をこの手で獲得してやるんだっ!』。

この言葉、今でも私の活力になっています。

そこから、私は彼の小説のファンになりました。


思わず俺の喉がゴクリと鳴った。




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