37話 は、はじめまして.....。

■■■■■


ガチャリと扉が開く。


「先生〜。戻りました~。」

元気に、山本さんが帰ってきた。




「おかえりなさい」

別にここは、俺の家ではないが、

状況的に、お客様を出迎える立場であるから、



俺は作業している手を止め、

部屋の入口に目をやった。




「どうぞ、どうぞ。

サクラザキ先生も入ってきて下さい。

中に、虹乃先生がいらっしゃいますよ〜」



山本さんが廊下に向かって、手招きをしている。




「は、はい。」

初めて聞くサクラザキ先生の、

少し緊張気味で細めな声がした。


ん?

このとき、

俺の頭の中で、一瞬、疑問が生まれた。


が、答えも出さずに気のせいだと片付けた。


■■■■■


「し、失礼、します....。」

そう言って、1人の女性が部屋に入ってきた。




最近覚えた、高貴な柔軟剤の香りが、

何故か、ふわりと部屋に舞った。



「は、はじ、め、まして...。

イラストレーター、の、サクラザキ、です。」


彼女は緊張のせいか、噛み噛みで、きゅっと目をつむって、深々とお辞儀をした。

ずっと、うつむき加減だから、

はっきりと彼女の顔が見えない。


「に、虹、乃、先生の作品が大好きで、

今回は一緒にお仕事をさせて貰える事、

大変、光栄に思っています!!!」



言い切ったところで、

サクラザキ先生が、ぱっと顔を上げた。

俺と目が合った。


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