27話 彼女もまた秀才である

その視線の先では、

「おぉぉ!!! 櫻崎さん、また2位じゃん!?」

「さっすが、姫様。」

「秀才だー」

「いとはちゃん!!いや、絃葉様!!!今度、勉強教えて下さい!!!」

俺の隣は、お嬢様の取り巻きで大混雑していた。

「あ、ありがとうございます。」

取り巻きの中心になってしまった本人はやや、困惑気味に熱意溢れる群衆の対応をしている。

そして、俺は、隣人であるが、遠い存在である彼女を、異国から来た転校生を見るような気持ちで流し見した。


■■■■■

放課後。


「奏汰、今日はいつものバイト先?」

雄大が気を使って隠語を示した。バイト先とは、出版社の事だ。

「ああ。8月刊行の詰め作業が待ってる。」

考えるだけでげんなりする。

「全然想像つかないけど、エグそー。ファイト。」

「サンキュ。雄大も部活頑張れ。」

「おー。夏の全国予選がもうそろ始まるから死に物狂いで頑張るわ。」

「じゃ、な。」

「また、明日―。」


雄大と分かれ、学校を出る。

そして、俺はそのまま、駅へ向かった。



高校から駅まで約1km、歩いて15分。

学校帰りの制服を着た学生がちらほら見える。


俺はいつものように駅前の歩道橋を上り、改札でICカードをかざし、電光掲示板で次の電車の時刻を確認しながら、2番ホームへ降りた。


ほどなくして、2番ホームに有楽町線の電車が入ってくる。

東京メトロで3駅先が、行き先だ。




今日は17時から、出版社で、担当編集者の山本さんと、打ち合わせの日である。



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