83話 嘘も方便

一度、なにも知らないフリをしてやり過ごそうかと思ったが、俺達の話に反応した奴らがジリジリと距離を詰めてくる。

「おい、西野!!いつの間に櫻崎さんと仲良くなってんだよ!」

「一人だけ抜け駆けとか卑怯だぞ!!」

「席が隣同士になったからって、調子に乗んなよな!!」

普段静観しているクラスの男子までもが騒ぎ立てる。今までなんの接点もなかった俺達が、急に親しげに放課後、集まる約束をしていたら気にならない訳にはいかないのだろう。



あぁーったく、雄大が黙っとけば大事にならずに済んだのに。

ふと振り返ると、櫻崎さんのほうも女子達で大騒ぎになっていた。

「え?櫻崎さん、今日、岡野君達と遊ぶの?」

「いつからそんなに仲良くなったの?」

「櫻崎さんと岡野君達って仲良かったっけ?」

「席替えして仲良くなったとか?席も近いもんね。」

「え?これから遊ぶの?何して?」

「岡野君がいるってことは、西野君も?さっき、それっぽい会話してたよね?」

「いったい、なんの集団?」

「3人に共通の趣味があるとは思えないんだけど....。」

「もしかして、一方的に誘われた感じ?岡野君って、ちょっと強引なところがあるから。」

「そー言えば、今、岡野君は誰か呼びに行ったよね?他にも誰か参加するの?」

クラスメイトや廊下で盗み聞いた他クラスの人達が我先に情報を聞き出そうと櫻崎さんに群がっていく。


「あ、えっと....。」

大勢に囲まれアタフタしている櫻崎さんが、助けを求めるようにこちらに視線を投げた。


はぁ。仕方ない。

心の中で大きなため息をついてから、俺は目の前の暑苦しい群衆を掻き分け櫻崎さんの群れの中へ割って入り、アタフタしていた櫻崎さんを背中でかばうように前に立って、使う予定の無かったシナリオを口にした。

「別に、雄大は櫻崎さんを無理やり遊びに連れだそうとか考えていない。ほら、夏休み明けの情報の授業で『〇〇の紹介動画を作り発表する』ってやつがあるだろ?〇〇の部分のテーマを自分たちで決めて何かしらの紹介動画を3~5分くらいの尺で作るやつ。それで俺と櫻崎さんと雄大が一緒のグループになったから。そのやつの相談会をやるんだ。提出期限は夏休み明けだし、夏休み期間中にやる人達が多いのかもしれないが、俺達、夏休みだと、部活とか、、、習い事とか、、、色々予定が入っていて、なかなか予定合いそうにないから....それで、俺が提案して早めにやろうって事になったわけ。今日はその記念すべき1回目の集まり。雄大が呼びに行ったのは、動画制作とかに強い助っ人。ちょうど知り合いにパソコン系強い人がいてさ。これ以上、なんか説明いる?」

俺は、周囲を見渡し意見を募った。

雄大が彼女の存在を隠している訳ではないが、まぁ、俺の口から雄大の彼女の名前を出すのも違うなと思って、あえて触れずにぼかした。



「そっかぁー、そいやーそんな夏休み課題出てたなー。」

「忘れてた。私達もやらなきゃー」

「そういうことね。」

「確かに、グループ決めの時、衝撃的すぎて忘れてたわ。」

「だなー。あわよくば、自分が櫻崎さんと、、、、とか思ってたのにさ...」

「ねー。公平にくじ引きで決めたのに、くじ運悪くて自分を恨んだよ。」

「なーんだ。そっか、そーだよな。櫻崎さんが男子と遊ぶなんてありえないもんな。」

一つの方向へ話が向かっていくのをみて、後ろで櫻崎さんがほっと肩の力を抜いた。


「納得、納得。」

「急に責め立てて悪かった」

「櫻崎さんもごめんねー」

「じゃ、解散」

そういって、俺達に群がっていた人達がチリジリに散ってゆく。


はぁ。。。

どっと疲れが押し寄せてくる。

小説家やっててよかった。嘘がほいほいと浮かんでくる。まぁ、半分は事実を含めているから疑問に思う人もいないだろう。これで、当分怪しまれずに済む。



後ろを振り向くと俺の熱弁と、嵐の去った静けさに櫻崎さんが驚いた表情をしていたが、俺と目が合うと「クスリ」と肩を揺らした。

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ラノベ作家をやっていたら、なぜか美少女神絵師と暮らすことになった。〜今、俺の部屋で神絵を描いているんだが?〜 月島日向 @038408891160

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