21話 友人はどうやら俺とWデートがしたいらしい

ぞろぞろと登校する生徒たちに連なって俺達も校門をくぐる。

「おはよー。」

「はよー。今日、古文当たるんだけど、なんも単語調べてねー。やべー。」

「最悪、俺も今日、当たる日だ!頼む!ノート見せてくれ!!」

行き交う生徒の会話を聞きくと、急に現実に引き戻された気がしてくる。

校門をくぐるともう、ラノベ作家、虹乃彼方の話題は封印される。


雄大も分かっているのか、虹乃彼方そっちの話は振ってこなくなった。


「はぁー。学校、めんどいな。」

叶うならば、家で引きこもっていたい。

「そんな事言うなよー。ほら、もうすぐ夏休みじゃん?」

「まだ、2か月もあるけど?」

気が早くないか?

「あー、すぐじゃね?」

2カ月なんてあっとゆーまだ!!楽しみだなー。

「その前に期末もあるけど?」

一応、確認すると苦々しく顔をゆがませた。

「うげっ。朝っぱらから最悪なこと思い出させるなよなー。」

「ちゃんと備えていれば問題ないだろ。」

「無理無理。期末、試験科目も多いから。この前の中間も赤点ばっかなのにさー。」

雄大は、GW明けの中間テストの苦い記憶を思い出したのか、眉を顰め嫌そうにする。


「赤点だったこと親に言ったのか?」

「バカバカ、言うわけないだろ! 赤点取ったって知ったら、母さんが鬼の形相で怒鳴り散らすわ。そーなったら、当分、勉強しろって監禁してくるに決まってる!」

まだ中間テストの順位表はもらってないけど、俺、この間のテストは過去1成績悪いと思う。

萎えるわー。


「模試はともかく、学校のテストなら、授業真面目に聞けば8割は余裕だろ。」

先生達が作るんだし。傾向とか分かりやすいから対策しやすいだろ?

「それは、奏汰だから通用する事。俺は凡人。分る?」

別に凡人とか天才とかの話をしている訳じゃ....。

「まーいーや。奏汰!今年の夏休みは海、行こうぜ!去年は色々仕事が忙しいって行けなかったし。」

今までの会話を全て無かったことにしたいのか、明後日の方向に話が飛んだ。

「海の家で焼きそば食べたりとか!美人のお姉さん眺めたりとかさ!」

お前、彼女いるだろ。その発言は頂けないな。


「やー、それとこれとは別、みたいな?」

「なにが別だ。付き合うなら、彼女、大切にしろよ。」

「へいへい。けど、和花奈はそのへん大丈夫だと思うけどなー。」

「言わないだけで、心に秘めているのかもしれないだろ。我慢の限界きて、別れるってなってから俺に泣きついてきても知らないぞ。」

「はいはーい。」


返事が軽い。分ってんのか?

「それに、男2人で海、はむさ苦しいだけだに決まってる。」

陰キャ男と海、何が楽しいんだ。

「えー。いいじゃん!海、楽しいぞ!!」

「彼女と行け。」

「そりゃもちろん和花奈とも行く。けど、奏汰とも行きたい。」

「....。」

「あ!じゃ、いっそ、奏汰も彼女作れよ。」

「はぁ?」

「そしたらWデートできるじゃん?女子が2人。全然むさ苦しくなくなるだろ?」

「....。」

「ほら、奏汰たまに、『ここの女子の心情分かんねー。』って言ってるじゃん?それ、女の子と付き合ったら何かつかめるかもじゃん?」

「そんな都合よく解釈したくない。」

「奏汰って無駄に頑固なとこあるよなー。」

「頑固っていうか、そんな都合よく物語みたいな話が現実になるとは思っていないだけだ。」

「そーか?奏汰、普通にしとけば彼女の一人くらいすぐにできると思うけどな。スペック高いし。」

「悪いがお前みたく女たらしじゃないから。大切にしたい人は、これからゆっくりと見つけていくんだ。」

「人聞き悪いこと言うなよぉ。俺は中学の時から和花奈一筋だし。女たらしじゃないぞ!!」

「けど、付き合ってるって知っていながらよく女子から告白されてるって聞くけど?」

「あ、あれはー、あわよくば、和花奈と別れて自分と付き合ってください!みたいな非常識な女子がやってるやつに巻き込まれてるだけだから。それに、毎回、丁重に断ってる。」

けど、俺、そんな女をとっかえひっかえしそうな奴に見えるかなー?これでも、和花奈と付き合い始めて3年目になるんだけどなぁ。

「まぁ、軽そうな男には見える。」

「えー。マジかー。ちょっとショックかも。」

「じゃ、その茶色い頭を黒染めするところから始めるんだな。」

「えっ、それは嫌すぎる。いいじゃん、これ、俺の個性だろ?」

「そのノリがもうアウト」

「うぇぇ」


「てか、奏汰。」

おちゃらけていた雄大が急に真剣な表情で口を開いた。

「真面目な話、別に、あのしがらみから抜けるまで彼女作らないとか、そんな事は思ってないだろ?」

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