22話 不意打ちは嫌いだ
『真面目な話、別に、あのしがらみから抜けるまで彼女作らないとか、そんな事は思ってないだろ?』
雄大の言葉がエコーとなって脳内にこだます。
「..っ..。」
不意打ちは嫌いだ。
「最近、根詰めて仕事しているって聞いてる。寝不足も続いているみたいだし。」
雄大が俺の目元をちらっと見た。
「あの約束を守れなくても、いざとなれば、俺ん家に逃げればいい。俺達が守る。だから、あんまし気負うなよ。」
「はぁ。分かってる。あいつのせいで青春を棒に振るのは本末転倒すぎて腹が立つ。」
「だろ?」
「ああ。」
「じゃぁ、彼女作りなよ。」
グッと親指を前に突き出された。
どーして、青春=恋愛に結び付けようとする。
「えー、だってさ、奏汰が本気出せば、すぐモテると思うしさ。一度きりしかない高校時代、雄大お兄さんが手伝ってあげよう。」
「いい。大きなお世話だ。」
俺は雄大の手を払いのけ、スタスタと昇降口へ急いだ。
「ちょ。ごめん。悪かったって。けど、家に籠ってばっかより、高校生らしく青春を謳歌してもバチは当たらないんじゃないかなーって思っただけ。」
後ろから焦って追いかけ平謝りをしてくる雄大。
言い訳がましく聞こえるが、雄大も俺の事情をおもんぱかっての言動だったのだろう。
悪気がない事は知っている。
だが、、、
んー。
俺は、曖昧な返事で誤魔化した。
1週間前にGWが明け、次に世間が楽しみにしているイベントは夏休みかもしれないが、俺の日常に光が差すわけもなく、学校に行かなくていい事以外何も変わらない日々を繰り返すと考えると、雄大みたいにウキウキした気分にはならなかった。
今年は、新作刊行も2作目のアニメ化も控えてるから怒涛の仕事ラッシュに襲われそうで怖い。
それに、高校を卒業するまでに、俺はやらなければいけない事がある。
だから、彼女を作って青春を謳歌なんてできっこない。
そう思いながら、下駄箱で靴を履き替え、教室へ続く階段を上った。
キーンコーンカーンコーン。
丁度、8時20分の予鈴が聞こえてきた。
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