81話 勉強会メンバー決定

「うっ....。そ、それは....」

宮前は、たじろいだ雄大に間髪入れずに鞭を打つ。

「それに、この前、私にテスト週間っていうこと黙ってデートに誘ったでしょ。知ってたら私、一緒に勉強付き合ったのに....。」

「だ、だって、和花奈、せっかくの部活休みの日だったじゃん。なのに、俺と家で勉強とか……。」

冷ややかな視線が注がれるのをなんとか回避するための言い訳が、悉くあだになっていく。


「だってもなにもないでしょ!前々から言われてたじゃん!夏前の期末テストで5教科のうち一つでも赤点取ったら夏休み没収されるって。なら、今のうちに頑張っとかないと夏、一緒に遊べなくなちゃうじゃんっ!私、そっちのほうがもっと嫌だもんっ!」

「そ、それは、そう....だけど、」

宮前に言いくるめられる雄大。


これじゃ、カレカノ以前に親と子だな。

これは、これで、彼らの日常なのだろうが....。

ったく。こんな朝っぱらから路上で熟年夫婦のようなイチャつきを見せられているこっちの身にもなってもらいたい。


「で、勉強会、西野の家でやるんだよね?私もそれ行きたい。」

やっぱり、俺達の話を聴いていたのか。


「いいじゃん。なんだか楽しそうだし」

宮前のグイグイ来る性格は、まだ変わってないようだ。

「別に、お前が来ても得られるものは何もないと思うが....?高校でもそれなりの順位にいるんだろう?」

宮前は中学でも普通に頭が良かった。成績も上位に入っていたし、スポーツ推薦を受けたいと言って、進学校受験を勧めていた中学の担任を泣かせていたくらいにだ。

「まぁ、そーだけどー。私も最近、部活ばっかでちゃんと勉強してなかったし。」

いい機会かなーって。

「宮前はチア頑張ってるんだろ?なら勉強がおろそかになるのは仕方ない。」


「そりゃ、ね。チアで好成績を収めないと特待生の資格は剥奪されちゃうから。」

「スポーツ特待なら学業のほうはあまり重要視されていないんじゃないのか?」

インハイ行くならなおさら練習とかで忙しいだろうし、俺達の勉強会なんて参加しなくとも、今のままで充分だろう。

「ほら、スポーツ選手って活躍できる期間が短いでしょ?スポーツ女子の全盛期は平均で20代前半、だから、あんまり勉強もおろそかにできないなーって。いつ、自分の選手生命が絶たれるかわからないから。引退してから勉強しても遅いじゃん?馬鹿で働き口無いとか最悪だし」

なんとなく、宮前の表情が暗い。

雄大が何か事情を知っているんじゃ?と思って奴の顔色を伺ったが、普段と変わらず呑気な顔をしていた。

「お前、もしかして....」


今朝から思い当たる節を探し、一つ宮前に尋ねようと口を開くと宮前が遮るように俺に被せてきた。

「もしも、の話だよ!ほら、勉強できるにこしたことはないでしょ?」

「....まぁ、そう、だな。」


「ってことで、私も勉強会参加希望!いとちゃんとも、もっと仲良くなりたいしっ!ね?いいでしょ?」

「はぁ。」

こいつは、一度言い始めたら自分の意志を曲げない。

「まぁ、他が良ければ....」

俺はチラッと櫻崎さんの顔色を窺う。

「わ、私も和花奈さんと勉強が出来たら嬉しいですっ!」

意外にも即答だった。

「俺もー大賛成!」

「言っとくけど、この中じゃ雄大が一番バカだから、その辺は覚悟しときなさいよね?」

「うっ」

調子に乗った雄大に追い打ちをかけるように放たれた彼女の言葉が、強烈に突き刺さったようで、ズンと一気に萎えていた。

流石、宮前。彼氏にも厳しい彼女だ。

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