15話 手作りの雑炊を食べる
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待っていてくれと言い残し、俺は台所へ急いだ。
熱いから、それに、完食出来ないかもしれない。
こまめによそう為の器とレンゲも用意しておこう....。食べるのは、箸、、、いや、木製のスプーンだな。
あと、麦茶もついでいくか。食後に薬があるしな。
俺は、雑炊が入った熱い土鍋と茶碗やレンゲ、グラスを1つのトレーに乗せ、部屋へ向った。
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「これ、作ってみた。卵とじ雑炊。カニカマも入ってる。味の保証はないが、まぁ、腹は壊れない程度には美味いと思う。」
俺好みに味付けしたから、櫻崎さんの舌に合うのか不安で、つい、保険をかけてしまう。
「少しでもいいから、食べてくれ。身体も温まるはずだ。」
俺は、ベッドの横に出してあった折り畳み式のテーブルの上にトレーを置くと、櫻崎さんは、もぞもぞと布団から出てきてカーディガンを羽織りながら机の前に座った。
俺も彼女の向かいになんとなく腰を下ろした。
頬杖を突きながら彼女の仕草を見ていた。
櫻崎さんは、添えてあった布巾でゆっくりと、小さな土鍋の蓋を開けた。
蓋を開けた瞬間、蒸気が立ち上がる。
俺の仕事用にかけていたブルーライトカットのメガネが一瞬で曇った。
「ふわぁっ!」
櫻崎さんの驚いた声だけが聞こえてきた。
レンズの曇りが解消されると、櫻崎さんは、嬉しそうにこちらを見ていた。
「これ、西野君が作ったんですか?」
キラキラした瞳で、俺と雑炊を交互に見比べられる。
「ああ。口に合うか分からないが....」
そんなに見つめられると思っていなかったので、少し緊張してきて目を逸らしてしまった。
「ふふっ。全然。西野君が作ってくれた事が嬉しいです。ありがとうございます。」
「や、まぁ....」
「いただきます。」
櫻崎さんは手を合わせると、丁寧に食材に敬意を払っていた。
「どーぞ」
櫻崎さんは、レンゲで茶碗によそった雑炊を木製のスプーンで口元へ運ぶ。
はふはふ。ふー。
はむっ。
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「おいしいです。」
熱に侵されながらもにっこりとほほ笑む彼女の顔をみていると、なんだか俺の心までもが温かな気持ちになった。
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どうして俺が櫻崎さんを介抱しているのか。
それは色々な事情が絡みまくった結果である。
時は、2ヶ月前に遡る。
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その日も俺は、徹夜で執筆活動を続けていた。
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