40話 まったり雑談

「えっ!?」

突然、話を振られ、櫻崎さんが戸惑う。



「普通、授業聞いただけで、テスト8割なんて取れませんよね?」




「あ、えっと....。」

その圧高めの質問に櫻崎さんが、

困ったように目をキョロキョロさせた。


多分、山本さんの質問に、

櫻崎さんはピンときていない。




長考の末に、話の腰を折らない為には、肯定するのが得策と読んだみたいだ。



「そ、そうですね?」

語尾に疑問符を付けながら、櫻崎さんが頷く。


この反応、やはり絶対にピンときてないやつだ。

小説書き始めて、人の心情を読み取るのが得意になった。だから分かる。

櫻崎さんは、『授業を聞くだけでテスト8割は難しい』という意味が分かっていないと。


困惑している櫻崎さんの代わりに俺が口を挟んだ。

「山本さん。残念だけど、

櫻崎さんも授業聞けば、

8割くらい余裕だと思うよ。」



「と、いうと??」



「櫻崎さんは、学年2位。

女子の中じゃ成績トップだから。」




「だよな?」

俺は、櫻崎さんに確認をとる。



「そ、そうですね。

ちゃんと授業を聞いて理解していれば、

テストで8割は誰でも取れる、と思い、ます。すみません。」

俺の助言で、ホッとしたように、本音を吐き出す。



「えぇぇぇ!!!!!!そんなぁ~。

馬鹿は私だけじゃないですかぁ~。」



そんな山本さんの嘆きが、会議室にこだました。

「ちなみに、言っておくが、入学試験の主席は櫻崎さんだぞ。」

「ふぇぇぇ!!!じゃ、新入生代表挨拶をされた....?」

「は、はい。僭越ながら務めさせて頂きました....。」

「す、すごいお二人に囲まれていたなんて、山本、大変光栄です。」

山本さんが参りましたと首を垂れた。


少しだけ部屋の空気が暖かくなった気がした。


■■■■■




「けど、やっぱり先生も高校生だったんですね?」

疑問文のような肯定文を俺に投げられ思わず山本さんに突っ込んだ。



「それは、どういう意味ですか。

俺は至って真面目な高校2年生ですけど?」



「いや~。虹乃先生は、どこか大人じみたとこがあるから、本当に高校生やっているのかなと.....。

心配になるじゃないですかぁ?」

意味が分からん。



「俺は、普通の高校2年生です。」

「クスクスっ」

正しい返答をしたと思うのに、

小さく肩を揺らした櫻崎さんに笑われた。



「先生?普通の高校生は、

2年で本を20冊も出版しませんよ?

それに、アニメ化できるくらい大物の作家にはなりませんっ!

もう、先生は、既に、規格外なんですっ!」

胸を張って、大船に乗ったつもりでいてくださいっ!!と、なぜか、山本さんが胸を張る。



「....なんか、山本さんに言われたら、『規格外』って言葉、悪口にしか聞こえないんだけど」



「な、なんでですかぁ〜!!!

褒めてます!!褒めてるんですよ!!!」

にじのぉ先生ぃ~!!


「クスクス」

「はいはい。お褒めいただき、光栄です。」





ポカポカと叩いてくる幼児化した山本さんに、

俺が冷静に返答した時、タイミングよく、

会議室の内線が鳴った。

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