第14章 国立第四脳科学研究所と国立農場

(021)   Area 29 Treasure コード38R

 --コード38R--#カイ


 国立第四脳科学研究所にはあっけないほど簡単にたどり着いた。


 車の中から見える門には『第四脳科学研究所 西門』と刻まれた札がかかっている。


「行こう、カイ」

「あの、この施設って簡単に入れるんですか?」

「そうだね、普通は難しい。この施設をダウンさせると最優先で警察が押し寄せてくるから、今日の計画でも、ここは電気もセキュリティもダウンさせず、通常通りだ。でも、自分のセキュリティーカードがあれば職員の通用口から入れるよ。私はここの職員だから、問題ない」

「じゃあ、僕はどうやって入るんですか?」


 北田さんは、いたずらっ子のような表情をしている。


「あっ、もしかして。僕がここで働いていたんなら……もしかして、まだ」

「カイくんのセキュリティカードは持ってないよ」


 北田さんはあっさり否定した。


「僕のセキュリティカードは、やっぱりもう無効になっているんですか?」

「いいや。君が戻ってくるかのしれないと、ミエが施設長を説得して有効なままになっている。行方不明になった日にも、君が家に持って帰ったはずだ。君が持っていないなら、僕には見つけられない」


「じゃあ、どうやって入るんですか?」

「即席のセキュリティーカードを作るんだよ」


 研究所の門まで来ると、北田さんはリラックスした様子で守衛に話しかけた。


「町田さん。カイために入構許可よろしく!」


 北田の言葉に無言で反応した守衛がニュキッと手を伸ばし、小型のカードリーダーを差し出してきた。北田さんはカードリーダーに自分のセキュリティーカードをかざすと、こう言った。


「音声申請:コード38R 入構許可申請」

『音声申請:承認。入構を許可します』


 カードリーダーから許可の音声が流れると同時に、門の脇にある小さなスライドドアが開いた。


「ありがと、町田さん」


 守衛に渡されたカードを北田さんが受け取る。

 あれって、リクが言ってた無敵カード⁉︎


「北ちゃん、もうみんな帰ったよ。カイくん、久しぶりだね。今日は頼むよ」


 北田さんが振り向き僕にカードを渡す。僕は守衛の人に軽くお辞儀をして、開いたドアから施設内に入った。


 僕は呆気ないほど簡単に、発行されたカードを使って施設内に入ることができた。


「町田さんも僕らの協力者だ。この国の制度やMCUに不満や不振感を抱いている人間は、この施設内にも多くいるんだよ」

「あの、コード38Rって何なんですか?」

「深い意味はないよ。38はミエ、RはリクエストのR。つまり、ミエのリクエストってこと。この申請をすれば、問答無用でミエの入れるエリアと同じエリアに入れる権限を持ったカードを即時発行できる」

「ミエってそんな権力があるんですか?」

「まあ、そうだね。この施設は彼女を逃したくないから、うまく説得すれば、少々の無理は通る。その上、ミエはここの施設の女王みたいな者だから……」


 北田さんは一瞬苦笑いしたが、至って真面目な表情に戻って話を続けた。


「だけど、ミエのきつい性格は半分演技で半分本気ってとこかな? でも、コード38Rは長年かけて、今日この日のために準備を重ねてきた中で手に入れたものだよ。ミエはMCUを破壊するために必要なことなら、他人の目なんて気にせず何でも実行してきた。きつい性格を演じることでたくさんの人に避けられてきたかもしれないけれど、それでも割り切って過ごしていた。私がそのことを知ったのは、リクと同じ研究室に移動してから、数年後のことだったけどね。

 とにかく、私が施設長に直訴して数年前にコード38Rを作ってもらったんだ」


 まかりなりにも国内有数の研究施設だ。その研究所への入構許可のカードを明確な理由なしに作成できるなんて、ミエは相当必要とされている人間なのだろう。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る