(023)   Area 28 Save you あの子

 --あの子--#博士


 DA2内でミエと北田のいそうな場所は隈なく探したが、二人は見つからなかった。

 MCS社は相変わらずこっちの動きを探ってくるが、私の計画がうまくいけば、これ以上追いかけては来ることはないだろう。


 コートに小指の爪ほどの盗聴器が仕込まれていたことに、私はさっき気がついた。

 カイかリク、いいや、おそらくミエの仕業だろう。

 柏原に現状を伝えるメッセージを送ったが、『気を抜くな』と返事がきてからは、向こう側からは誰からも連絡はない。

 カイの居場所を確認しようとしたが、距離が離れすぎたのか、追跡することができなかった。

 いや、意図的に追跡できないようにしたのか?


 おそらく私は誰からも信用されていない。

 それでも目的を達成できるなら、裏切り裏切られることなど大したことではない。

 あの子がすべてをかけて開発した装置だ。私が責任を取らなければ。


 あの子があの装置を使って何をしようとしていたのか、結局わからなかった。

 私は自分自身が何を望んでいたのかも、もう忘れてしまった。

 私は誰も幸せにすることもできなかった。


 今日は私が終わる日だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る