第0-6話 ブラフ

━━━━━《佐須雅さすが視点》━━━━━


 まず、分かりやすい様にタブレットにデータを転送しそこからナビに共通規格のコネクターをつなげると、ナビ上に分かりやすいマーカーを設置します。


 そしてナビの表示モードを縮小していき、そのマーカーが画面に入るように調整しました。


 すると長良ながらさんが交差点で停車中に、GPSナビのマーカーを右手でゆびさしながら「ここの廃屋はいおくに行けばいいんだな」と片手間にするようにしかししっかりとした口調でいいました。


「はいそこに隔離かくりしています、今なら間に合うと思います」と私は冷静な表情静かな口調のままでタブレットをワンショルダーの中にしまい込み、P-100を再度取り出しセッティングを終えながらいいます。



……廃屋前


「ここの廃屋か」と廃屋をにらみつけ力強い口調でいうと濃紺のうこんの戦闘用テイラードスーツを着込んだ長良さんが、羽二重はぶたえの白い地に金糸キンシ花菱家紋はなびしかもんの入った太刀袋たちぶくろを持ってこんのベンツから降ります。


 私もアイアンブルーのタクティカルスーツでP-100を持ってあとに続きます「荷が勝ちすぎて支援しえんにならないかもしれませんが、牽制けんせいくらいには」と極めて冷静な表情で静かにはっきりといいながらその廃屋の前まで行きました。


「化物は現在ヒト型に戻っています、玄関付近げんかんふきんに居ますので気を付けてください」と静かな口調で極めて冷静に分析しながら、玄関の監視カメラの映像を視界内の端に出して表示させ、他のカメラの映像も同時に視界の端に寄せて表示確認しながらいいました。


 廃屋といっても近代きんだいのモノなので電気さえつなげれば、コントロール可能なのです。


 それに監視カメラも多数ついています。


 幸いながら一階も二階もまど鎧戸よろいどがシャッター式の電子ロックであったためこの廃屋にしたのですが、当たりだったようです。


 セキュリティーシステムまでたどり着ければ、そして相手の能力が私のハッキング能力よりも低ければ隔離かくり可能なのです。


「分った」と一言力強くいって長良さんが太刀袋の金と黒の本絹ほんけん組房紐くみふさひもを解き袋の折り返しを戻し、金色きんいろかしらと白い皮巻かわまきづかと金色にかがやつばまで出して太刀を抜ききり右手で構えて突入準備をします。


「支援します、玄関のかぎ開錠かいじょうしますので突入して下さい」と表情は変えずに静かな口調でP-100を構え、各カメラの現在を確認しながらいいました。


「玄関から入りしだい、玄関の鍵を施錠せじょうします」と私が冷徹に分析しながら静かな口調で続けます。


「分った、任せる」と冷静な表情の静かな口調に戻した長良さんが鞘を左手で保持しながらいいました。



 そして白い扉の玄関から二人で突入しました。


 直ぐに玄関部分は制圧せいあつできました。


 何故ならば、画面を確認しているとそいつが応接間に移動する姿があったからでした。


 その直後、玄関の鍵を施錠ロックします。


 一階の電気を全点灯すると、緑色のソファー裏側に人影がありました。



「今ならまだ間に合う、大人しく投降とうこうして出てこい」と私が力強くされど冷静な表情を崩さずにいいました。


「うるせえ! 逮捕たいほできるんなら逮捕してみやがれ」と逆に大声で強くいいかえされました。


 私はP-100を制圧フルオート射撃しゃげきのモードに切り替えると、一斉射いっせいしゃしました。


 緑色のソファーの中心近くに“ボスボスボスボスボス”っと穴が集弾し貫通はしたようでした。


「そんなもんくかよ! 痛くもかゆくもねえぜ!!」と怒鳴り声でいい返されました。


「長良さんお願いします」と冷静な表情で静かにいうと「じゃぁこれたのむわ」と冷静な表情で静かに先の太刀袋と金梨子地きんなしじ青龍文せいりゅうもん蒔絵まきえ螺鈿らでん衛府えふ太刀拵たちこしらえ豪奢ごうしゃさやが鞘袋から四分の一ほど見えており、それを渡されました。



 そして長良さんがソファーに向かって突撃しました。


「これでも喰らえ!!」と力強い口調でされど冷静な表情のまま太刀を振り下ろしました。


 その瞬間緑色の三人掛けのソファーが真っ二つに切れて左右に飛び、ポケットコイルを巻き散らしました。


“グワァァァァァァッ”


 と同時に構成員の左腕が肘の先から一緒に斬れ飛び、構成員が叫びました。


「てめぇ! 何もんだ!」と若干おびえた表情で怒鳴りながら斬られた左腕部分を抑え構成員があとずさります。


検非違使けびいしものだ」と長良さんが力強い口調で冷静な表情のまま正眼せいがんかまなおしていいます。


俺らの組織シンジケートを、敵に回すとどーなるか教えてやる」とそいつは少し冷静になっていうと、不気味な妖魔アヤカシ変貌へんぼうしていきました。


「ほう、ますます不細工ぶさいくになったな」と長良さんが表情は変えず静かに挑発ちょうはつします。



「言わせておけば! その口塞くちふさいでやる!!」と怒鳴ると妖魔と化した構成員がおそいかかってきました。


おそいな」と長良さんは冷静な表情で静かにいいながら軽々身かるがるみをかわしていきます。


 追い込まれている様子はまったくなく、むしろかろやかなステップで相手の位置をしぼんでゆきます。


「ハエが止まって見えるぜ、襲うってのはこうするんだ!」と力強くされど冷静な表情でいうと長良さんが、一歩み込んで逆袈裟さかげさり上げると振り下ろしてきた相手の右腕の二の腕にのうでから先を斬り飛ばしました。


“グワァァァァァァッ”


と構成員はもう一度、叫びました。


 しかし血が飛び散るでもなく、何も出て来ないのです。


 体液すらも出ないのでした。


が出ないのか、なかなか便利べんりな体だな」と長良さんが皮肉って静かにいいました。


「ウィルエル、捕縛ほばくまかせる」というと正眼の構えのまま、若干じゃっかん引きました。


 まだ襲ってくるかもしれないと踏んで、構えたままなのが分ります。


 しかしもう相手は抵抗する気力が無かった様で、そのままりょうひざをつきました。


 長良さんの鞘と鞘袋を、長良さんの近くのソファーの上に置いて対象の捕縛ほばくに行きました。


 対象は私の捕縛を、大人しく受けていました。


 両手が無いので手錠ワッパが効かないので胴体に直に鋼製こうせいのワイヤーを巻きつけて、完全捕縛とするしかないようです。


 長良さんはその間に懐から出した和紙で刃をぬぐい、体液が付いているかどうかを確認したようでした。


 そして何も付いて無いことを確認すると、鞘に納めるべく鞘を手に取ったのでした。


 やいばがLED電灯の光を反射し小乱こみだと思われる刃文はもんが見えている刀身とうしんを鞘に刃を下にして納めていきました。


“ス――ッ、キィン”


といういい音の鍔鳴つばなりがしました。


 そして長良さんが「こうした方がげられないぜ」穏やかな顔で真面目にいいながら、江戸時代えどじだい罪人ざいにんを結んだ方法で対象のくびにもワイヤーをかけてくれました。


 私は更に専用のワイヤーメッシュで完全におおうことで、電子的でんしてきけられないようにすることにしたのです。


 犯人の左腕と右腕も一緒に別のワイヤーメッシュの中へ、くくりつけて入れることにしました。



「犯人が妖魔じゃ、九課のろうに入れる訳には行かないな」と長良さんが考えながら表情を硬くし静かな口調でいいながら太刀を鞘袋にしまい直し、鞘袋の先を折って金色こんじき漆黒しっこくの本絹組房紐で鱗結うろこむすびにします。


「確かに、九課の牢には妖魔を捕らえて置く設備がありません、事情聴取じじょうちょうしゅにはこちらからうかがいますので検非違使の牢で捕えておいていただけませんか?」と私は表情は冷静なままでしたが仕方しかたなくいうことにしました。


「夜桜にもいっておきますので」と私が静かな口調で追加します。


 そしてそのまま取り押さえるまでに至った過程とデータを速攻で電子データに落とし込み、夜桜副長に送信しました。


 もちろん妖魔である件もです。


「長良より班長へ、廃屋から出た犯人は逮捕拘束してある、ウチの牢に入れないと行けなさそうだ」と長良さんが穏やかな表情ですが冷静に通信器に向っていわれました。



……


━━━━━《斯波しば視点》━━━━━


「班長から長良へ、そっちは一旦犯人いったんはんにんを牢に突っ込んでから合流してくれ、こっちは一寸厄介ちょっとやっかいなことになっている。どうぞ」と冷静な表情で分析しながら静かな口調で、長良に近況を通達つうたつします。


「こっちは解析班と合流できた、今検分してもらっているところだ。どうぞ」と私は解析班の作業を見ながら表情は変えず口調もそのままで続けていいました。



……


━━━━━《長良ながら視点》━━━━━


「こちら長良、今犯人を牢に叩き込んだところだが、今一つ拍子抜ひょうしぬけしてしまう程大人ほどおとなしくなっている。本体かどうかあやしいな。今、ウィルエルが調書ちょうしょを取ってるが無駄むだっぽそうだな、何も答えないし何も反応がねぇ」と現状を見ながら俺が冷静な口調と表情でいいます。


「ウィルエル、ここはいったん切り上げて班長と合流しよう」と俺は右手で髪をかき上げながらウィルエルに冷静かつ静かにいいました。


「それが良さそうですね、こいつは牢で隔離確保お願いします」とウィルエルが牢の担当官に冷静な表情で静かにいいました。


「班長へそちらに一旦ウィルエルと一緒に合流する。ウィルエルがお嬢さんとまともに、顔を合わせてないんじゃしゃあねぇ」と仕方なさげにいって仕方なさげに表情を作ると八課を出てウィルエルを右側から車に乗せ、俺も左側から乗り込み紺のベンツを発進させました。



━━━━━《斯波視点》━━━━━


破壊はかいされたところは応急おうきゅうのブルーシートをった、ところだが、緑色の化物は倒すと溶けてしまったらしい。由良ゆらからの報告だ。どうぞ」と私は由良さんの撃った、先端の潰れて変形した銀弾を見ながら冷静な表情で静かにいいました。


「班長、それ陽動ブラフじゃねえのか?」と運転する長良から質問が飛びました。


「そうかもしれないな、まだどこかで街路カメラの主がいそうな気配がビンビンするそうだ。美空嬢みそらじょうの話では、緑色の怪物の視線は街路カメラの主とは違うらしい。どうぞ」と私が沙羅さら様から聞いた内容をそのまま静かな口調と表情で七班の通信に乗せました。



「こちら副課長の加藤かとうだ、公安九課の夜桜よざくら氏から緊急で一本電話が入った。まだ構成員マルタイが活動しているらしい、現状捕げんじょうつかまったヤツが本物ほんものとは思えない。まだ合同捜査ごうどうそうさは続けてくれなにが何にんでいるか分からん」と副課長が七班の通信回線に向かって、送信端末からいったのです。


「こちら斯波、了承しました」と私は冷静な表情ではっきりとした口調で答えました。


「解析班が一旦撤収するようです。八課で解析をするとの事です」と私が表情と口調を変えずに、八課にいる副課長に向かっていいます。



━━━━━《長良視点》━━━━━


「班長へ、門扉前に現着した。車を中にとめさしてもらった方が、バレにくくないか?」と国土警備のツートンカラーのバンと解析班の車両の後ろに付けた、俺はそう思ったので冷静な表情のまま静かに聞きました。


 班長から「神無月かんなづき家は、北側の大門だいもんを開かないと車が入れないんだ。開け閉めするだけで、街路カメラに写ってしまう。だから外なんだが、どうぞ」という静かな口調で答えが、通信機に返りました。


「それは仕方ねえな、俺らも一旦合流する」と表情はそのままで静かにいうと太刀を持ちウィルエルを先に降ろしてから左側縁石にキリキリまで寄せて止めハンドルを左に切り込み、俺も降りてからフルロックののち、防犯装置を効かせました。


 それから門扉もんぴのブザーを押したのでした。



第0-7話へ

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