第0-5話 合同捜査開始

━━━━━《美空みそら視点》━━━━━


 その日の朝の内とても動ける状態にない私の代わりに、沙羅さら御婆様おばあさまが電話を検非違使けびいし神戸分署こうべぶんしょにかけたのでした。


 神戸分署ではその区域エリアの担当である八課の相談窓口そうだんまどぐちにまず話が入ったのですが、直ぐに重要案件じゅうようあんけんであると判断はんだんしていただき課長につながれたのでした。


 そして沙羅御婆様は八課課長とじかに話をして、まず名乗りそして今回起きたことや予知夢よちむのことなどもまえたうえではなされたのでした。



━━━━━《羽柴はしば視点》━━━━━


 そして私は八課の中で唯一ゆいいつ長期案件ちょうきあんけんを受けていなかった、第七班だいななはんに担当を任せることにしたのです。


 内容は身辺警護しんぺんけいご犯人逮捕はんにんたいほ念頭ねんとうに入れた完全かんぜん警護と呼ばれる難しい仕事です。



 これは班を二つに分けて対応する必要があるのと、公安の九課との連携も必要になると思われました。


 沙羅様の語った今回の話に上がった写真の人物、金髪の男の情報を警察の広域指名手配犯に当てはめたところ、国際電子犯罪組織こくさいでんしはんざいシンジケート構成員こうせいいんである事が分かったからでした。


 そして私が直接公安九課の神戸分署に電話をかけました。


「検非違使の神戸分署八課課長の羽柴淳之介じゅんのすけです。公安九課夜桜よざくら様でしょうか、合同捜査を申し入れたいのです」と穏やかな表情のまま冷静な口調でいいながら課長室のデスクの上でメモの準備をしました。


「訳は追って説明しますが、はい人を派遣はけんするとのことですね」と同じ表情の口調でいいメモに『公安九課、人を派遣』と書きだしました。


「分かりました我々われわれの方でもつかんでいる情報を開示かいじしましょう。狙われているのは、ウチの新人になる者なのです」と冷静な表情で静かな口調に変えいうと一旦ペンを止めました。


 その際電話先の向こう側で、少し硬くなったと思われるジッポライターを付ける“ジャリッ! シュボッ”という音がしました。


「その派遣される彼が現れた時には視線が無かった。とハッキリいっているので間違いないかと、明らかに彼は警戒けいかいされています」と表情と口調は変えずにいったんめたペンを再度持ち上げながらいいます。


 電話の向こう側で煙草を吸う音と、それを吹き出すような音が聞こえました。


「どのような捜査そうさをされているのかは分からないので口は出しませんが、我々でホシをげてしまってもいいのですか? そちらのメンツはつぶれると思いますが」と表情と口調はそのままにさらに追い打ちでいって、ペンを手でクルリと一回しします。


 電話の向こう側から、少し咳き込むような音が聞こえました。


「我々はたしかにふるい組織ですが、設備せつびまで旧い訳ではありませんよ、それに地に足の着いた証言情報しょうげんじょうほうも得ている」と表情も口調も変えずにいいながらペン回しの回数が増えていきます。


 加藤副課長が手元の仕事をめ、こちらを心配そうに見ていました。


「そうですか、それでも彼を派遣なさるのですね。分かりました第七班で、受け入れましょう」と表情はそのままでしっかりとした口調に変えいってペン回しをめ、メモに人名を書き始めました。


 そういって、左手で保持していた受話機をそっと電話におきます。


 電話をえてから今度は通信機の元に歩いて行き、通信機の送信端末たんまつを手に取ると、数十個並んだスイッチの中から七班班室と書かれたスイッチをONにしました。


 LEDランプが直ぐ、グリーンに点灯します。


 そしてヘッドフォンを左耳側に掛かるようにななめにセットし右側は耳に掛けませんでした。


 そして送信端末の通話ボタンを軽く押し込み、話し出しました。


「第七班に緊急きんきゅう指令しれい! 第七班はただちに対象、神無月かんなづき 美空じょう護衛ごえいに張り付いてくれ、依頼いらいぬしは神無月 沙羅様だ! 完全かんぜん警護けいごの体制で実施願う!」と少し大きめの冷静な声で冷静な表情のまま、左手で保持している送信端末の螺旋状らせんじょうのラインを右手で少しいじりながら指示します。


「本作戦は公安九課との合同作戦となる。公安九課は佐須雅さすが・ウィルエルという人物を派遣する様だ」と同じ口調と表情で送信端末にいいながら、駐車場のカメラ〇七をONにして本日の長良さんの自車を確認しました。


捜査内容そうさないようを共有し、共に身辺警護を実施じっしし、犯罪を未然みぜんに防いでほしい」と同じ口調で表情も変えずに駐車場カメラをOFFにしてから、送信端末に向かっていったのです。


「今回は組織そしき垣根かきねを超えて任務に当たってもらいたい。我々は最悪護衛ごえい傾倒けいとうしてもいい」と私の少し大きい冷静な声が第七班班室にそなえ付けのスピーカーから流れました。


 第七班の班長と副班長しか今はいませんが、“パチン”と通話器のマイクをオンにする音が聞こえ、通信機のグリーンのLEDライトの横に、ブルーのLEDライトがともりました。


「分かりました。直ぐに張り付きます」という声の通りがいい男女二人ふたりの力強い、いい答えがヘッドフォン側に返ってきます。

 


 送信端末を引っ張りデスクのほうに移動しました。


 そのデスク上に置いてある検非違使専用のタブレット端末に依頼主の住所や依頼の種類、情報などを書き上げていき七班の班員すべてのタブレット端末に情報を一括送信しました。


 そして追加します。


長良ながらさんはここ、八課棟で佐須雅さんを待ってください」と送信端末にいいながら、その螺旋状のラインを少し手繰たぐばしました。


 天井に敷設ふせつしてある動滑車どうかっしゃがカールコードを保持し、デスクの上まで伸びてきました。



━━━━━《長良視点》━━━━━


のちに合流ということでお願いします。今日はこんのベンツでしたね、目立ちにくい車の時で良かったですね」と班室のスピーカーから課長の冷静な声が聞こえました。


「いつもはもっと派手なのに乗ってますからね」と俺は自分のデスクの上に座りながら班長席のマイクに向かって返答しました。



━━━━━《羽柴視点》━━━━━


由良ゆらさんにはメールを打っておいて直接合流してもらいましょう」私は送信端末の長くなったラインを、弄りながら表情と口調を変えずにいいました。


 第七班班長の斯波しばさんの声がヘッドフォンに入ります。



━━━━━《斯波視点》━━━━━


「では、これより完全警護に入ります。フル装備でことにあたりましょう。くれぐれも油断ゆだんの無いように」と冷静な表情にはっきりとした口調でいうと時計の針を確認します。


「時刻合わせ○九:四八、五、四、三、二、一、ゼロ!」と冷静な表情のまま力強くはっきりとした口調でいいました。



━━━━━《羽柴視点》━━━━━


 班室で斯波班長がいってから班室を出る“カチャリ! キィ――ッ! バタン!”という音がマイクに載りました。


 それから駐車場の方にフル装備で駆け下りていく、“ガンガンガンガン……”という少し重めでひびく音がしました。


……



━━━━━《斯波視点》━━━━━


 そして駐車場の国土警備に偽装してある上が深緑ふかみどり色で下が黄土おうど色のツートンカラーのハイエースに乗り込み、出発したのです。


 課長は正面玄関のカメラを操作して、出た車両を確認しました。


 そしてまず七班班室のスイッチをONのままにし、今度は第七班車両一一と書かれているスイッチもONにします。


 その下のLEDもグリーンになりました。


「お手柔てやわらかに、おねがいしますよ」と課長の冷静な声が車内に響きます。


「どうやら犯人は街路がいろカメラを使用する手口らしいのですが、できればそのうらをかいてください」と課長のいう難しい注文ちゅうもんが、冷静な声で車両〇七-一一の通信器に流れ出しました。



 交差点でウィンカーを切り替えながら、右手でバイザーを下げます。


「バイザーでも降ろしておきます。それなら顔は分からないでしょう」と斯波麻美が車両〇七-一一の中から、ONになっている通信器のマイクが拾えるようにそこそこの声を出し提言ていげんします。


……


 そしてタブレットのナビ情報通りに、目的地に着きました。


 偽装ハイエースを左の縁石えんせききわまで寄せて停車させ、ハンドルを左に切り込みました。


 そして検非違使専用のタブレットを、ひだり小脇こわきかかえます。


 そして降りてからフルロックにしたうえで、防犯装置をONにしました。


 すると防犯装置が作動しアームが現れ、ハンドルを上下から物理ロックしに行きました。


 さらに後方側窓ガラスにスモークが張ってあるので視線はさえぎられるので防犯上は大丈夫そうですが、防犯装置のほうは今時分では一般的になったものです。


 見えるところに物理的な仕掛けがしてあると、犯罪者も手を出しにくいという声から二〇二五年に生まれ、二〇三五年では一般的になったものです。


「現着、これより行動に移ります。では、まずは聞込みから」と冷静な表情にしっかりとした口調でいうとレシーバーを下げました。


 通信はOFFモードでも車両が拾って、八課に飛ばすのです。


 車両備え付けの通信器は、簡易基地局の様な仕様になっているのでした。


 そして神無月と書かれた門扉もんぴのブザーを鳴らしてインターホンで対処に出てきた、上諸かみむろ 綾香あやかさんと話しました。


「おはようございます、神無月 沙羅様のお宅はこちらで合っていますか?」と私は念のための確認を行うのでいいます。


「はい、神無月はこちらで合っています。沙羅様も在宅ざいたくです、わたくしは神無月家ハウスキーパーの上諸綾香です」と綾香さんがはっきりとした口調で丁寧にスッと答えました。


「私、検非違使からまいりました八課第七班の班長の斯波と申します。本日はよろしくお願いします。神無月 沙羅様にお取次ぎお願いします」と私も冷静な表情のまましっかりとした口調で丁寧にいいました。



「直ぐに小門をお開け致します。今しばらくお待ちくださいませ」と綾香さんの声がはっきりと聞こえました。


 門扉が開くまでの間、門に背を向け周囲状況確認を行いました。


 すぐ北側には東側から、動物病院や少し門構えの小さいレストランなどの商店そして邸宅が並んでいました。


 道路も幅の広い、対向二車線のものです。


 道路そのものは比較的広いので、ハイエースをとめてもまだ道路幅に余裕がありました。


 歩道も幅二メートルほどで縁石もあり、わりとしっかりとした作りの道です。


 ガードレールは設置されていませんが、駐車スペースから車が出て来るようなところは歩道に段差があり低めの縁石が斜めに配置されておりました。


 街路カメラも、複数台設置されていました。


 ものの三分程で大扉ではなく門扉に向かって右側の武家ぶけづくりの小門こもんが開き、青い冬の洋装の綾香さんが現れました。


 そして「斯波様、こちらからどうぞ」とはっきりとした口調で丁寧に迎えられました。


 それから私が小門の中に入ると綾香さんが小門を閉めて、そこから三分少々家の庭の道を「こちらです」と笑顔にはっきりとした口調で案内され歩いて行きます。


 小門から入ると直ぐに道幅の大きい、大きな外車が二台は余裕で通れそうな堅めに敷かれた砂利道じゃりみちが現れました両端には側溝そっこうまで付いています。


 ジャリジャリと音がするような道では無く、しっかりと何かで固めてある砂利道と表現した方が良いのかもしれません。


 その外側は背の高い植え込みで目張めばりがしてあるため見えませんが、かなり広い邸宅ていたくであることがうかがえました。


 少し前方を見ると開けていましたが、その先の先を見ると緑色の植え込みと思われるものがしげっておりました。


 正面から母屋おもやや重要なものが見えない様な造りに、なっているようでした。


 ここ門扉からでは母屋と思われる邸宅の二階の屋根と思われる部分が、太陽の光を反射して鈍い光を放っており少し見える程度でした。


 そして入口から直ぐ十秒も歩かない内に複数台、およそ十台ほどはとめられそうな広い駐車場が左右に二つありました。


 そこも植え込みで目張りはしてありますが、植栽しょくさいがかなり綺麗きれいに作られており造園ぞうえん業者の腕なのか、建築施工せこうしたものの腕なのかわからないくらい立派なものでした。


 駐車場を通り過ぎると今度は両側にある一定の間隔でさくらかえで紅葉もみじ銀杏いちょう等の木々が左右に同じ数並かずならぶのです。


 その後ろは駐車場部分より一段高い植え込みの目張りこそされていますが、四季折々の木々が並んでいるという凄い贅沢ぜいたくなものがありました。


 それが過ぎるとまた道幅車二台分くらいの道に側溝と植え込みというパターンに戻りました。


 そして西側に向けてクランクになっている部分を、通り過ぎました。


 車止めと思われました。


 それから少しして母屋にたどり着いたのでした。


 歩いた距離は合計で三百メートルと、ちょっといったところでしょう。


 三分と数十秒ほどかけて、母屋まで行ったのです。


 母屋そのものは純日本風建築に洋風の素材を足して作られたような重厚じゅうこうなつくりでした。


 土壁つちかべ黄土こうど色のザラ付きのある壁面へきめん木目調もくめちょうの色で誤魔化ごまかされるところでしたが、外壁は高強度の鋼板と思わしきサイディング素材でした。


 多分、芯材は強度の高い建材を使っているのでしょう。


 そして純日本風家屋特徴のかわらが、少々特殊とくしゅなタイルのような鈍い白銀プラチナ色をしており非常に特殊な建材であることがうかがいれました。


 そしてようやくポーチにたどり着きましたが、そのポーチもまた広かったのです。


 玄関と合わせて約六坪はあろうかという広大なものでした。


 そして長めで一間いっけん(畳の長いほうの辺、百八十二センチメートル)ほどの幅の広いの廊下を案内されて歩いて行きました。


 その廊下も素晴らしく左側もおもむきのある本漆喰ほんしっくいの白い壁で、右側は縁側がありその外側は中庭となっておりました。


 そして三十秒ほどかけて歩き、応接間に通されたのでした。


 全部を見たわけではありませんが新旧しんきゅうが和洋が折衷せっちゅうしたような家の間取りではないかと思われました、洋室と思わしき部分には案内されていないので玄関のポーチからの判断です。


 応接間は、本間で十二畳でした。


 応接間には蒼の強い花紺青はなこんじょうの着物姿の沙羅刀自さらとじのみが座卓の向こう側に座しており、美空嬢みそらじょうはおりませんでした。


 そして応接の沙羅刀自の向かいに白いカバーの来客用と思われる座布団が置いてあり、そこに案内されました。


 そうして綾香さんが、いったん下がりました。


「はじめまして、検非違使神戸分署八課第七班班長の斯波と申します。身辺警護と犯人逮捕のために参りました。我々にお任せください」と私が冷静な表情にしっかりとした口調で丁寧にいいました。


「そこまでしてもらえれば、少しは安心なのだが、どうかお願いしたい。孫娘を守って下さらんか」と沙羅刀自が少し安心したような表情に変わりしっかりとした口調でいいます。


「もう少ししたら良人おっとも戻りますので」とも同じ表情の同じ口調でいいました。


「美空はまだ湯浴ゆあみをしているので。もうしばらくお待ち願えないだろうか、湯浴みを終えたら応接間まで来るように言ってあるので」と沙羅刀自は表情は崩さずに静かにしっかりとした口調でお茶の入った有田焼の燿変辰砂ようへんしんしゃと思われる赤の強い筒型の湯飲み茶碗の口造りを人差し指の指頭しとうで静かに触りながらいわれました。



「お茶をお持ちしました。入ります」とはっきりとした声がして、綾香さんが丁寧ていねいな所作で入って来ました。


 そしてまず沙羅刀自のお茶を足すと、私の前に御客用と思われる有田焼の油滴天目ゆてきてんもくと思われる蒼の強い端反はたぞり型の湯飲み茶碗を置くと、程よい温度と思われるお茶を入れました。


 そして席から離れ、応接側に一礼すると下がりました。


……



━━━━━《羽柴視点》━━━━━


「佐須雅さんが到着されましたので、長良さんとともに現場に行ってもらいます」という私からの冷静な口調で七班の通信に連絡がのったところでした。


「由良さんは十四時ころの合流になるようです。あとは班長の現場の判断でよろしくお願いします。現場で判断ができなければ即連絡をください」と私は冷静にかつ穏やかな表情でいいました。


……



━━━━━《佐須雅視点》━━━━━


「長良です。第七班の副長をしています。よろしくお願いします、佐須雅さん」と長良さんが冷静な表情にはっきりとした口調で挨拶をしました。


「ウィルエルでいいですよ。こちらこそよろしくお願いします。一度彼女には聞き込みの時に会ったことがありましたが、まさか狙われていたとは気が付きませんでした。対応を変えなくてはいけませんね。これから相手を追い込みますので、シバキ挙げてください」と私は冷静な表情で静かにいいました。


「どうやら人間ではないようですね、魔物の様です」といって即対応を変えたのですがギリギリ間に合った様でした。


「回路を一次的に切断して追い込みます。流石の魔物まものも道が無ければただのけものです。専門的なことは検非違使の方にお任せするしかなさそうですが、私の鉛弾では力不足の様です。次回があれば銀の弾でも支給してもらえるように申請はしておきましょう」と私は極めて冷静な表情に静かな口調で、ハッキングでラインを切断しながら自身の限界をいったのです。


 そして私はハッキングを仕掛けながら、P-100をワンショルダーから取り出しセッティングをチェックしました。


「P-100ですかそいつの弾は持って無いですね、七班の誰もが持って無いと思います」と長良さんは冷静ですが表情はしそうにはっきりとした口調でいったのでした。


「私は銃を使いませんし」とも同じ表情に同じ口調で付け加えました。


「班長でも持って無いかと思います」とさら追加して表情と口調を変えずにいわれました。



「由良です、門扉前に現着しました。ウィルエルさん、よろしくお願いしますね。美味おいしいところへ誘導願います」と由良さんははっきりとした口調でいいました。


 私のデジタル時計の時間は十四時〇〇分を表示していました。



━━━━━《美空視点》━━━━━


 そのころ私は少し遅い湯浴みをえ、着替えているところでした。


 ウチが旧い作りの家だからなのかもしれませんが、なぜか視線を感じたのです。


 その刹那、


“バキバキメキメキ”


 と音がしました。


 その直後壁を壊して何かが、っていたのです。


「誰っ!」と私が振り向きながら牽制けんせいの一言を放ちました。


 そこには訳の分からない半透明で緑色のヒト型をした化物が、そこにいたのです。


 きょを突かれた私は、


「キャァァァァァァァァー!!」


 と大声で叫ぶ事しかできませんでした。


 しかしこちらは御神刀を近くに用意していましたから、御神刀を引っこ抜き下着姿のまま化物を迎え撃つことにしました。



━━━━━《長良視点》━━━━━


 その時班長のマイクが、美空嬢の悲鳴を拾ったのでした。


「おい! ウィルエルどこに追い落としたんだ!」と俺はあせって少し冷静さが緩み叫びました。


「別件の様ですね、私はここから少し離れた廃屋になっている家に追い落としましたし、現にそこのカメラにはヒト型になったそいつが写ってるんですが」とウィルエルは極めて冷静な口調に冷静な表情でいいました。


 俺は通信機に向かって叫びました。


「別件発生! 部隊を二つに分ける。俺とウィルエルは写真の男を追う! 女性陣はお嬢さんのガードに回ってくれ!」といいました。



━━━━━《斯波視点》━━━━━


 ちょうど私が海松みる色と鉄紺てつこん色のあわせの男着物を着た頼王らいおう御爺様と沙羅御婆様から事情を聴いているところでした。


 レシーバーを上げ「由良さん! こっちへ増援ぞうえんに来てくれ!!」と、私は叫びました。


「風呂場の位置は西側じゃ!」と御婆様がいいます。


「由良さん! 西側へ急行してくれ!!」といった直後、バイクの音が無線にり少し響きました。


 そしてほんのちょっとの時間で、西側に回ったらしいのでした。



━━━━━《由良視点》━━━━━


「こちら西側、へいが壊されているわ、かなり大胆な化物ね!」と冷静な表情にはっきりとした口調でいいながらバイクをとめ、塀の中に侵入しました。


「一直線上にある物は全て壊して行っているわ。スナイピングします。今のうちに斯波班長は、お風呂場へ急行してください」と私は冷静に状況判断しながらはっきりとした口調でオープンにした通信器に向って話を入れながら背中に手を回し、セーフティーを外しホルスターのストッパーを外しました。


「こっちからなら背中が丸見えよ!」と冷静な表情にはっきりとした口調でいいながらカスタムしてある黒光りするベレッタM8357クーガーを背中から引っこ抜くと、スナイピングを始めたのです。


 四インチほどのロングバレル化やリアサイトの調節等と、改造してあるソイツで銀の弾丸を初弾から化物の後頭部に命中させたのです。


 塀からの距離は、およそで三十メートル以上ありました。



 その初弾で化物が私の方へ振り向きました、貫通こそしてないモノのかなり痛かった様で、化物が、


“キシャァァァァァァッ!”


と、口とおぼしき部分を開け警戒けいかいと思われる鳴き方をしたのです。



━━━━━《美空視点》━━━━━


 私にとっては逃げるチャンスが生まれました。


 化物が私のほうを見て無いのです。


 そして直ぐ後退しながら逃げ出したのでした。



━━━━━《由良視点》━━━━━


 支援しているこちら側からすると、護衛対象が離れたので撃ち放題でした。


 次々と命中弾をびせていきます。


 もちろん外すのは無しです、相手が動けないくらいの弾を撃ち込みました。


 三秒ほどで、十発は打ち込んだでしょうか。


 ちょうどワンマガジンを、撃ち切る前でした。


 十一発目を撃ち込んだその直後


“グギャァァァァァッ!!”


という叫び声を残して、その緑色をしていた化物は仰向あおむけに倒れていったのです。


 植え込みと池を迂回うかいし風呂場に急いできました。



 そしてその倒れたあとに行くとすでに緑色の液体と、当たって先端が潰れ変形した銀弾十一発が残っていました。


 どうやらその化物は、倒すと緑色の液体に変化するようです。


「これじゃぁ、倒しきるまでに捕まえないとダメなのかなぁ?」と私がどうしようかという表情にはっきりとした口調のまま右手で銃を保持して、左手で後ろ頭をかきながらいいました。


「でも人間の言葉は話してなかったしなー、護衛対象は守れたからまぁよしとするか」と同じ表情と口調で続けました。



「化物は!?」と斯波班長たちが急いで駆けつけてきました。


「溶けてしまいました、そこの緑色の池がそうです」と表情も口調もそのままでいうしかなかったのです。



━━━━━《斯波視点》━━━━━


「解析班に回しましょう」と由良さんが困惑こんわく気味ぎみの表情にはっきりとした口調でいいました。


 私は課長に電話することにしました。


 現場で手に負えないと判断したからです。


「課長おられますか?」と冷静な表情のまましっかりとした口調でいうと、副課長に「課長は霊鎮たましずめのに急ぎ出ていかれたよ。急に入った案件でね……、何かあったのかな?」と冷静な声でいわれました。


「副課長、解析班を回してください。手に負えない化物が出ました。倒したのはいいんですが溶けてしまって緑色の池をつくっています」と私が冷静な表情のまま現場の状況を電話に向かってしっかりとした口調でいいました。


「分った、直ぐに出そう。『解析班は直ちに一種装備の上、第七班と合流の上直ぐ解析に当れ!』と、これで良かったかな?」と副課長は冷静な声でいうと送信端末を置いて、電話口にいいました。



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