第7-13話 休暇①出発

2035/09/11 07:28 神無月かんなづき家小門前~


━━━━━《美空みそら視点》━━━━━


 その日はいつも通りに朝トレを行い、通常通りの日常が始まるわけではありませんでした。


 今日は旅行の初日なのです。


 昨日遅くまで選んだ水着や着替えやその他の物やお菓子などを詰めたバッグをもって列車に乗るべく、白を基調にした服で揃えてありました。


 帽子も青いラインは入ってますが白が基調です。


 風の有無を考えあご紐を掛けられるようになっているタイプの物を選んでありました。


 持ち物は専用の少し大きめの白いポシェットとドラムバックです。


 全てを白で揃えたため、青い線が少々浮いていましたが仕方ありませんでした。


 また検非違使けびいしでいわれた装備と御神刀を格納しているためポシェットが少し膨れていますが許容範囲内でした。


 一緒に駅舎まで行く予定の温羅うらさんを待っているところでした。


 黒一式で揃えた私と対照的な温羅さんが同じような装備で現れました。


 ドラムバックは検非違使で調達したものなのです。


 カラーバリエーションがあり半透明を含む十二色とカモフラージュ柄十三色を揃えてあるもので、何かあれば折りたたみ式のARアサルトライフル辺りは出てきそうなつくりにはなっているのです。


 それだけ大きいものであるという事でした。


 私が白で温羅さんが黒と対照的でしたが装備は似たような作りの物でした。


 各個人向けにさらなる調整が施されているので見た目は似ていますが違うものに見えるというところまで工夫されているものです。


 温羅さんの装備には、黒い飾り薔薇が装備に添えられており一層華やかさがあるものになっていました。


 一見シンプルに見える私とは対照的でした。



2035/09/11 07:29 神無月家小門前~


「おはようございます、待たせてしまいましたか?」と温羅さんがおっしゃいました。


「いえ、つい先ほど出て来たばかりですので大丈夫です。今日は朝トレはしてません、大丈夫ですよ」と休暇であることを強調していいました。


 そして二人そろって歩き始めました。


 ここからですと一番近い駅、三ノ宮まで十分はかかるのです。


 二人そろって靴はコンバットブーツに見えない編み上げブーツでした。


 色こそ違いますが、考えていることまでわかってしまいます。


「荒事を想定しましたね?」と温羅さんがおっしゃいました。


「えぇ、何があっても対処できなくてはなりませんし」といいました。



 三ノ宮駅の中央北側出入口で三人、温羅さんと高木たかぎさんと私で会おう、という事になってはいます。


 今から歩けば余裕で着けるでしょう、方向の少し違う高木さんが遅れなければ特に問題はないと思われました。


 後はみんなとは垂水駅前のロータリーで待ち合わすことになっています。


 時間はかなり余裕をもってあります。



2035/09/11 07:40 三ノ宮駅の中央北側出入口~


 視界に大柄な人物の背中が見えました、高木さんです。


 流石に今日はADSの制服は着てはいませんでした。


 しかしどことなく決まっています。


 普段の服とは異なりますが、ジーンズにスニーカーでラフな格好をしてミリタリージャケットを着てドラムバックの大きいのを持っています。


 どうやら少しかがんで、誰かに道を教えているようでした。


 少しお年を召したお婆さんに道を教えているところらしかったので、少し待つことにしました。


 待つこと十四分そこそこかかりましたが、教え終わったようでお婆様が何度もお礼をおっしゃいながら離れていく姿が確認できたので接近することにしました。


「いいとこありますね」という私に、「あたしを誰だと思ってんだいこれでもADSの広告塔やってんだ変な真似は出来ねえよ」と少し照れながらおっしゃいました。


「そうやって二人並ぶと、姉妹かと思っちまうぜ、よく似合ってるよ二人ともまるであつらえたみたいだ」と、こっずかしそうにこちらをチラチラ見ながらそうおっしゃったのでした。


2035/09/11 07:55 三ノ宮駅の中央北側出口側


「確かに人だかりができ始めていますね、移動しましょうか」と温羅さんがおっしゃいました。


 私と温羅さんの黒と白の合わせ技に目を奪われた男どもが遠巻きながら眺めており少し人だかりを作り始めていたのでした。



2035/09/11 07:56 三ノ宮駅の中央改札前


「二人ともIKOKAかい? ちょっと待っててくれ切符買ってこないと」と高木さんが離れた隙を狙って優男やさおとこがモーションを掛けてきました。


 黒髪に白基調の私ではなく、銀髪に黒一式基調の温羅さんを狙うとはいい度胸です。


 私が出ようかと思いましたが、その前を軽く笑みを作った温羅さんが左手でさえぎって大丈夫とウィンクで合図をくれました。


五月蠅うるさい!」と一言、いい放つと相手のその手をひねり上げたのです。


 これには優男もタジタジで逃げていきました。


 周囲から少し人が減りました。


 減少傾向にあるのは良いことですが、こちらにも優男は来ていました。


 私が円筒形の柱を背にしてるのをいいことに、柱に手をついて「どこかに行かないかいお嬢さん?」と圧迫体勢を作ってきたので容赦ようしゃせず、相手の利き足を踏んづけた後、反対側の足で問答無用の金的を蹴り上げました。


 そして追加します「ナンパ男は嫌いなの!」と、蹴られた男はさすがに真面に入ったこともあって飛び跳ねながら逃げていきます。


 さらに輪から人が減りましたが、まだ眺めているだけのイヤらしい視線を感じます。


 そこに高木さんが帰ってきたこともあり、高木さんの容赦ない視線の恫喝どうかつでさらに人は減りほとんどいなくなりました。



2035/09/11 07:58 三ノ宮駅の中央改札前


「またせてすまない二人とも」と高木さんが謝ったので「いつもの事ですよ」、と二人で受け流しました。



2035/09/11 08:00 三ノ宮駅の西行き駅、南側のホームアイランド上


「いつもあれだと気疲れしないか?」と不思議そうに高木さんがおっしゃいました。


「私はだいぶん慣れましたけど」といい、温羅さんもそれに同意してうなづきました。


 ホームに上がって直ぐ最初の列車はすぐに来たのですが普通(各駅停車)だったので、一本後の三番線に入る快速に乗ることにして到着時刻を早めることにしました。


 列車が来る駅構内のアナウンスが流れました。


 列車が音もなく三番線に入ってきます。


 普段から乗りなれてはいますが、電車という一部世代の方と違い音がしないので本来はリニア列車と呼称すべきではあるのになーと思いました。


 そしてドアも音がせずスーッと開きます。


 お爺様とお婆様によると昔はかなり音がしたらしいのですが、いまはほとんど音がしないのです。


 そして乗り込んで椅子に腰かけました、四人座席のボックス席ではありますが、三人と荷物で埋まってしまいました。


 快速が扉を閉めっスーっと加速して行きます。


 遮音性が高く車内まで、音が響かないような作りでもありました。


 そしていつも通りレールが無いためきしみ音はしていませんし、加速減速もかなりスムーズで引っかかりがありませんでした。


 これで一部世代の方々は電車というのですから不思議でたまりませんでした。


 私たちの世代ではすでに列車という呼称が定着しています。


 お父さま世代以上のお年を召した方は、なぜか電車といわれるのです。


 とそんなことを考えている間に、垂水駅のホームに列車が滑り込みました。


 待ち合わせ時刻は九時だったのですが八時十五分と大分早くに着きました。


 時間に余裕を持たせ過ぎた様でした。


 ターミナルにまだそれらしきバスは居なかったので、三人でお手洗いに行き、三人でコンビニで何か必要なものや忘れ物を購入して時間を潰し八時五十五分に合わせてバスターミナル側に向かって北に歩いていきました。



第7-14話へ

--------------------《対応データ》--------------------

※この作品はフィクションです実在の人物や団体、

 ブランドなどとは関係ありません。


普通:リニア各駅停車列車であります。


 関西圏では、時速百五十キロメートルの緩い速度で営業運転をしています。



快速:いわゆる、通常線で急行クラスにあたるのです。


 リニア列車で時速二百キロメートルの速度で営業運転をしています。


 急行と違い県を十数個またぐような距離を移動しません。


 又、三ノ宮駅では三番線の快速と四番線に到着する快速では停車駅が違うのです。



新快速:通常線で急行以上特級以下に該当します。


 急行や特急と違い営業運転は二百七十キロメートルに抑えられています。


 実際には二百七十キロメートルを出すのは一部の無停車駅がある長い区間のみで、快速と同様の距離の運行です。



二〇三五年列車豆知識(関西圏版):


 各列車とも最大運航速度は三百キロメートルといわれていますが、実際営業運転時速で綺麗に運航していて、全駅ホームボックスドアの設置などもあって通常時はほとんど遅れが無いといわれています。


 特急や寝台特急、急行や深夜急行なども復活しています。


 新幹線もリニア化されており現在千三百系となり営業運転で時速五百五十キロメートルでの営業運転をしています。


 また新リニア新幹線は北は北海道―南は九州までの長い路線区を走っており時速七百五十キロメートルという世界初の営業運転を行っています。


 また、最高速度は八百二十四キロメートルを記録しています。



 第4-x02話登場のサンライズ出雲もリニア化されています。


 因みに架線とレールはありませんが、まだ一部の世代に電車という呼称が定着したままなのです。


 なので本来はリニア列車又は列車という表現が正しいのですが、それが定着するのにはまだ時間がかかるというのが現状のようです。

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