第9-03話 隠仁

2035/10/01 16:22 道祖神の朽ちた祠の北側 みこと、ウィルエル


━━━━━《みこと視点》━━━━━


 わらわは、その鬼に着いて行きました。


 そうする他に、手が無かったからでした。


 北側のお屋敷と思われる、白い本漆喰と思われる塗り壁の丁度途切れるところまでやってきました。


 北側では丁度、真ん中に該当すると思われました。


「起きよ娘子むすめご」と、優しく鬼が被害者と思われる高校生くらいの制服を着た女の子を起こします。


「迎えが来たぞ」といって、妾たちのほうを指さします。


「本当に大丈夫なのですか?」とその子は、鬼に聞きました。


「大丈夫じゃ妾に任せるのじゃ」と無い胸を叩き、自信があるようにいいます。


 その後ろでウィルエル殿が「大丈夫ですよ」といわれたので安心したようでした。


「一つ話を聞いてくれぬか、朱雀の巫女よ」と鬼がいいます。


「妾で受けられる話なら聞くのじゃ」と答えを返します。


「我は鬼ではない、隠仁オニなのだ。その昔とある陰陽師にここに配置され屋敷を守るように言われたオニなのだ。そのオニも昔は四体いたが今や私一人だ。そして守るべき屋敷ももうない。どうかここから解き放ってもらえぬか? 無理な、相談なのは分かっている。だがここから解き放たれなければ私は悠久の時の流れをまたひとりで守るモノのないこの場を守らねばならぬのだ」といわれたのでした。


「解き放つ方法……。副課長か課長に聞けばわかるかもしれぬが、妾には分からぬのじゃ」と残念そうにいいます。



2035/10/01 16:25 道祖神の朽ちた祠の北側 みこと、他


 反対側で戦闘を終えた、斯波しば班長と長良ながら副長がやってきました。


「何かあったのか? 敵ではなさそうな雰囲気だから近づいては見たが……」と班長と副長がいいます。


 さっきの長い話を要約して「この隠仁殿が、被害者の守り方じゃ。それとこの場所から解き放ってほしいという歎願を受けたのじゃ」とスパッと簡潔にいいました。


「解き放つ方法ねえ? 風祭隊員か、神無月隊員なら何か分かりそうだが」と斯波班長も首をひねりました。


「どの道十七時半を迎えなければ、来ることもままならないしな。どれくらい、待ってくれそうなんだ?」と重要なことを聞きます。


 隠仁が「我の時間は悠久、いつまでも待てるが。解き放ってもらわないと、またここの東西南に餓鬼や小鬼が集まってしまう」と重要なことをいいます。


「つまり北側だけは、隠仁さんがいるから問題が無いのか」といわれました。


「そういうことだ、我がいる限り北の側は餓鬼どもの自由にはさせん」と力強い答えを得られたのでした。


 斯波班長が「もう少し待ってくれ、今まだ学生待ちをしている隊員がいる。彼女か彼女らならば、何か手があるかもしれない。長良副長とウィルは被害者を外に連れ出してくれ、ここの空間が一般人にどういう影響を与えるか分からん」といったのでした。


「副長了解」と長良副長が班長に敬礼し、「了解しました」とウィルエル殿も班長に敬礼して被害者の元に行きました。



2035/10/01 17:35 道祖神の朽ちた祠の北側 みこと、他


「班長、風祭以下三名到着しました」と風祭隊員と神無月隊員、温羅隊員、高木隊員が現着しました。


「で何か問題があると聞きましたが?」と風祭隊員が代表して斯波班長に聞きました。


「ちょっと厄介な話でな、みこと嬢も我々も手が出せなかったんだ……そこにいる隠仁をここから解き放たなければ、また厄介な問題が起きるかもしれないと言うんだ」といわれたのでした。


「倒す方法は幾つかあるんですが、解き放つとなると厄介な問題ですな」と風祭隊員がいいます。


「いくら善良であるとはいえ力のある隠仁なのですよね? 御法童子として誰かに付かせるというなら手はありますが、解き放つのは無理ですね」と温羅隊員がいいます。



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