第9-02話 鬼

2035/10/01 16:12 熊内三丁目二番道祖神の朽ちた祠 みこと、ウィルエル


━━━━━《みこと視点》━━━━━


 わらわ柏手かしわでを打ち、大祓おおはらえを行いました。


 それを見た餓鬼が四方に逃げ出していきます。


「オマエナンカキライダ!」といいながらですので完璧に嫌われた様でした。


 その背中目掛けて、霊弓れいきゅうを射ました。


 そして一匹の餓鬼が霧散しました。


 ウィルエル殿ももう片側の餓鬼に狙いを定めP100A2をフルオートで撃ったようでした。


 妾の後ろで“ドドドドドドドドドドドドッ”というSMGサブマシンガン特有の連射音がしたからに他ならなかったのです。


「あと、二匹かの」と妾がいいました。


「そうですね、今見た数が正しければ後二匹ですが。隠れて出て来なかったやつが、いるかもしれませんね」とウィルエル殿は推論を入れたのです。


「それにまだ被害者が見つかっていません。速く見つけなければ」とも続けられたのでした。


「二手に別れようかの?」といった時でした。


 背後の朽ちかけた祠から、班長と副長それにラウ隊員が姿を現したのでした。


「遅かったのう、二匹は片付けた所じゃ」と妾がいいます。


「後何匹いるんだ?」と斯波しば班長がいいました。


「二匹以上と推測できます」とウィルエル殿がいいます。


「分かった。西側は何とかしよう、東側を頼んだ。ラウ隊員はここで祠をガードしてくれ、出入り口が無くなると困る」と斯波班長がいいました。


 ラウ隊員は、大振りの青龍刀を引き抜きそこをガードするようでした。


 長良ながら副長と斯波班長が、西側へ回り込んでいきます。


 その反対側、東側に私たちも回り込むのでした。



2035/10/01 16:18 道祖神の朽ちた祠・東側 みこと、ウィルエル


 東側のほうが近かったからでしょうか、即一匹目の餓鬼と交戦に入ります。


 白塗りの大きな屋敷と思われるへいの角に隠れていたらしいのですが、速攻で見つかり逃げる間もなく妾の霊弓で散りました。


 西側ではそれなりに餓鬼が多いのか、散発的に斯波班長のXM-8の発射音が聞こえてきます。


 東側ではほとんど餓鬼がおらず、シーンと静まり返っていました。


 その代わりに、大きな鬼が見えてきます。


 その鬼は体躯が三メートルほどあり、厄介ことに金棒まで持っているではありませんか。


 ウィルエル殿が、P100A2を構えました。


 レーザーポインタが、鬼に当たります。


 ですが鬼は、ひるむ様子もなくこちらを見ています。


 その鬼は北側と西側の境界線に居ました、どちらかといえば北側といえる場所に仁王立ちしています。


 ふと気が付きました、鬼の足元に餓鬼が踏み潰され息絶えているのを見たのです。


「ウィルエル殿、あの鬼は味方の様じゃ」とウィルエル殿に妾が注意を飛ばしました。


「どうやらその様ですね、足元に餓鬼が転がっていますし」といいながらレーザーポインタを外し、P100A2にセーフティーを入れたようでした。



2035/10/01 16:20 道祖神の朽ちた祠・東側 みこと、ウィルエル


「会話可能ですか?」とウィルエル殿に聞かれます。


「やってみよう、じゃが話が通じるかわ分らぬ」ということにします。


 妾が知っているのは、神代文字と現代文と古典の一部だけなのです。


 美空みそらが居ないので、こういう交渉ごとは苦手なのでした。



「お主は人間を守ってくれたのか?」と鬼に古典の一部を使って聞きます。


 流石に神代文字を念じたところで、相手が分かってくれる保証がなかったから仕方がないのでした。


「朱雀の小さき巫女よ、我が届かぬ領域での餓鬼退治ご苦労であった。我は、この北側から動けぬゆえにな。女は守れている、我が領地にいる。こっちに来い、引き渡そう」とウィルエル殿にも分かるように、現代文に近い古文で会話が成立したのでした。



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