第7-04話 死者の書

2035/09/09 21:45 |ロッジ村B棟六号ロッジ一階階段前フロア

「この流れで二階も捜索するぞ」と斯波しば班長がおっしゃいました。

「これより突入班は、ロッジ二階の捜索にあたる、包囲班は変化ないか? どうぞ」と斯波班長がおっしゃいました。


「こちら風祭かざまつり変化なし」、「こちら温羅うら変化なし」、「こちら高木たかぎ変化なし」、「こちら神無月かんなづき悪寒のパターンが変化しました、まるで不気味な心音の様です。不気味な感じだけが、酷くなっていきます。皆様お気お付けください」と私のみが刻銘に変わる悪寒の変化を伝えました。


「悪寒を感じているのは神無月隊員だけか? どうぞ」と斯波班長がおっしゃいました。


「こちら風祭この程度では私には悪寒は湧かないだろうな」と風祭隊員は意味深なことを通信に乗せておっしゃいました。


「こちら温羅、嫌な予感はするけど、寒気がするほど酷くは無いわ」と温羅隊員も嫌な予感がする旨を通信でおっしゃいました。


「こちら高木、あたしが鈍感なのかもしれないが、これっぽっちも感じねぇ、殺気とかならわかるんだけどな」と高木隊員は至って普通といった感じの答えをおっしゃいました。


「私の感覚が鋭敏なだけかもしれませんが、まだ悪寒は途切れてはいません」と私は答えるにとどめました。



2035/09/09 21:55 |ロッジ村B棟六号ロッジ一階階段前フロア

「ふむ思い過ごしではなさそうだな、さらなる警戒をしながら一部屋ずつ調査していくぞ」と斯波班長が突入班全員にいいました。


「心音とはただ事ではなさそうですな、気い引き締めてかかりますか」と副長が言いました。


「私もさらに警戒をしましょう」と僕はいいました。



 そして階段、二階の廊下、手前の二部屋、そして奥の書斎にまでたどり着いたのでした。

 流石書斎だけあり、様々な本が並んでいます。


「何が何やらわからんな、私は正面の本棚を調べる。副長は左側を、佐須雅隊員は右側を調査にあたってくれ どうぞ」と私は通信に乗せました。


 この書斎は本棚が中央の机に向かってコの字型に並んでいる特異な部屋だったのです。しかも並んでいる本が普通の本ではないのが一発で分かりました。英文の本などはまだおとなしい部類ですが、未訳のラテン語の原本など一目で見て貴重かつ迂闊に触れないような本が並んでいるのでした。さら私では文字のわからない多分貴重な部類の本であろうことがわかる分厚い本が並んでおり色とりどりの背表紙がまるで威圧するかのような気迫を持っているのでした。


 とりあえず突入班には声をかけておきます「何か発見しても、迂闊うかつには触るなよ、特殊解析班を呼ぼう」と言ったときでした。


 右側の本棚の中盤あたりから佐須雅隊員の声がしたのです「珍しい本があります。持っていきますね」と……。


「だから触るなって今言わなかったっけか?」と怒りを通り越して焦りを感じました。


「触るなといわれる前に発見して、本に触れたのです。不可抗力です」と佐須雅隊員はいいました。


 通信は切った状態でした、部屋がそんなに大きくはなかったので「とりあえず書斎机まで戻ろう、副長も中央の書斎机まで戻ってきてくれ。どうぞ」と今度は私が焦りながら通信を発信する番でした。


「神無月隊員、悪寒はどのレベルにまで達している? どうぞ」と私は一番今聞きたくないことを聞いてみました。


「ものすごいレベルです、もう何が凄いのかよく分かりません。心音もドクンドクンと明瞭に聞こえますし、何かが発動しましたといった感じです。幸いながら私には悪寒がするだけですが、何かあったんですか?」と聞き返されてしまいました。


「佐須雅隊員が怪しげな本に触ったんだ……まだその本を見てないから何とも言えないが、最悪……佐須雅隊員ごと隔離祓魔をするしかなさそうだな。どうぞ」と通信で答えながら、書斎机の方に歩いていきました。



2035/09/09 22:20 |ロッジ村B棟六号ロッジ二階書斎の中央机前

「でどんな本……、ゲッ、明らかに怪しい本じゃねえか本の体裁になってないぞ……。タイトルも文字の一文もない、表も裏も血で汚れたような……いや血が動いているのか、それ。」と私は絶句するしかありませんでした。


「明らかに怪しい本でしょう?」と得意顔で満面の笑みを浮かべた佐須雅隊員がそこにいたのでした。


「そりゃ、本じゃねえんじゃないか? 明らかに怪しいモノであって、本にすら該当しねえだろう、確かにハードカバーの様ななりをしているが。普通引っこ抜いて持ってくるか?」と副長が通信でおっしゃいました。


「それページめくれるのか?」とさらに副長がおっしゃいました。


「さすがにまだそこまではしてないですね」、といって佐須雅隊員はハードカバーらしき部分に手をかけましたがめくれるようすどころかピクリとも動きません。


「やっぱり本じゃねえ、何かが本に擬態してやがるんだ。それかカモフラージュかもしれない、本の形をした悪魔か何かの……」と副長が通信でおっしゃいました。


「それは生者が開くことができない、死者の書ではないでしょうか? 現物を見てないですのでよくわかりませんが?」と私は知識の底からそういうものがあることを知っているので引き上げて仮に検証立てて、推察してみました。


「私の知っている死者の書の外観は、血の色をしており本の形をしております、体裁は本ですが無理やり開くと本の中に引き込まれて現世に二度と帰ってこれないという風に聞いております。つたない記憶で申し訳ありませんが、それが死者の書である場合、すでに佐須雅隊員は呪われていると思われます。ですが本自体は生者には開けませんので、いくら呪われても本が開くことはまずありません。その本の装丁は液体のような紅色のマーブルビロードのような感じで不気味にマーブルの模様が動いておりませんか?」と私は知りうる限りの知識を動員して昔本で読んだことのある知識を引っ張り出して聞いてみた。


「正にそれだな、この時点で佐須雅隊員を隔離する。佐須雅隊員に触れることの無い様に厳命する。まずは祓魔班を呼んで佐須雅隊員を祓魔処理してもらわねばならん」と斯波班長がおっしゃいました。


「まずは副課長に連絡か、頭の重い話だ。佐須雅隊員はこの部屋から出ないように、そして他者との接触は禁止する」と通信で斯波班長はおっしゃいました。


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