第3-04話 救出と脱出

━━━━━《美空みそら視点》━━━━━


「流石に堅かったぜ、力が入っている間の貝の口は――」と紅葉もみじさんはおっしゃってメリメリ音を立てながら貝の殻を剥がしていきます。


 もう一枚殻がありました。つまり二枚貝だったわけです。


「おりゃぁっ!!」と、もう一枚の殻も剥がしました。



加奈子かなこちゃん!!」といって寝ているような状態の加奈子ちゃんの近くに寄ります。


 症状を見ると、極度の精神疲労と思われる状態になっていたのでした。


「急ぎ救急だ!」と折神さんがスマホを取り出しますが、アンテナが居ません。


「くっ、通じない」と悔しさ一杯の表情です。



「これなら!」と温羅さんが専用発信機をレッドシグナルに切り替えました。


「貝から剥がそう」と高木さんが加奈子ちゃんを抱きかかえて貝から引き剥がしました。


 何かまだ細い管が付いていたので、御神刀で斬り払いました。


 そして私が二弾倉目の銀弾を全部、貝自体の口の中に叩き込みました。


 完全に、貝は沈黙したようでした。


 銃をしまい込み、御神刀を鞘に納めると。


 御神刀自体が少し輝き始めました。


 御神刀を持ったまま、加奈子ちゃんまで近付くとそっと加奈子ちゃんの手に触れました。


 そうするといいような、気がしたのです。


 加奈子ちゃんの顔に若干、朱が戻ってきたような感じになりました。


 唇の青さはとれかけていて、普段の肌色に戻って来ていました。



美空みそら、疲れないのか?」と不思議そうに周防さんがおっしゃいました。


「不思議と疲れないの――」と答えます。


 それから小一時間程、その状態を続けました。


 麒麟きりん御力おちからなのでしょう。


 大分、加奈子ちゃんの肌に朱が戻っており。


 もう無事だと思われたのでした。


 折神さんが戻って来て「上り階段もエレベーターも全滅している。ここから上がる術はないようだ。多分上に上がれば、すぐに出口だと思うんだが」とおっしゃったのでした。


 シグナルの中に無線が混じり始めました。


斯波しばだ聞こえているなら、信号弾かそれに類するものを打ち上げてくれ位置を特定したい。今大型ヘリを持ち出した、地上部隊も近くには居るがビルのブロックには寄っていない。ビルのブロックは一階の部分のみがあるが屋根は無い。シグナルは通っているが。はっきりとした場所がわからん」



「こちら地上班、風祭かざまつりだ。どこか分かればそこ以外に穴はあけられるどこを避ければいい?」と専用発信機では通信ができない為、徹甲弾をSIG226に温羅さんが詰めました。


みんな少し中央から外して。真上に穴をあけるわ」とおっしゃって一発目を撃ちました。


「分かった、そういうことなら俺のM29でも役に立つぞ」と折神さんも同一箇所をピンポイントで打ち込んでいきます。


 流石、銃の名手です四十四マグナム弾を撃ってもブレがありません。


 六発撃ち切ると、スピードローダーで再装填しました。


 そして同じ個所に穴を穿うがっていきます。


 流石に十八発も打ち終わる頃には、その場所には大穴が開いていました。あと一息と言ったところです。


 温羅さんも残りの徹甲弾を、全弾撃ち切り穴をあけたのでした。


「こちら風祭だ、真ん中に穴が開いたのは確認した! これより端に大穴をあける。各自は真中に退避! 爆風に備えてくれ。救急も二台は確保させてある。突貫で穴をあけるぞグレネイドで目星を付けるから、地上班は鶴嘴つるはし用意そなえっ」とおっしゃったのでした。


 そして四十ミリグレネイド弾が数射、投射されました。


 丁度亀裂きれつが入り地上から光が入って来ていました。


 こちらから見ると、丁度北西側の天井部分に亀裂きれつが入って夕日が差し込んできたと言った感じになるのでしょう。


 このフロアは、天井部分が少し高いらしく、三メートルほど沈んでいるのでした。


「よしこちら風祭、地上部隊側だ。穴はあけたが梯子が届かんな。ヘリに要請する。もう少し穴を拡張するから、担架と要員を降ろしてやってくれ、地上への風圧は気にしなくていいぞ。急を要する怪我人が第一優先だ」とおっしゃると。


「各位爆風と落下物に注意せよ! 穴を拡張する」とおっしゃられ、四十ミリグレネイドを数発ずつ投射していってかなり乱暴ですが穴が拡張されていったのでした。


「こちら折神今アンテナが立って正常に電話できるようになった。要救助者二名一人は民間人、もう一人は美空嬢だ精神力を使い切っていて危ない。民間人から救助を優先してくれ、状態は気絶状態でかなり容体ようだいが怪しい、何が有るか分からんから厳戒態勢で格納を急いでくれ」と折神さんが風祭さんに電話をかけていました。


 ヘリから救助隊員と専用担架が一緒に降ろされてきました。


「早くこちらへ、天井がグズグズなんだ。いつ崩落してもおかしくない」とおっしゃるので、高木さんが加奈子ちゃんを連れて走って担架まで行きました。


「我々も向こうの安全な場所へ行こう」と折神さんが他の下にいるメンバーに声を掛けました。


 私も温羅さんの肩を借りて、少しづつ移動していきました。


 一階に相当する部分までヘリで釣り上げると、救急車のストレッチャーの近くまでヘリを水平移動させ、吹きおろしの風の中で加奈子ちゃんを救急車のストレッチャーに乗せ換えると一台目は直ぐにストレッチャーを中に格納しサイレンを鳴らして運んでいきました。


 次は、どうやら私の番のようです。


 ヘリが、上から担架を同じ様に降ろしてくれています。


 そこに私もぐったりと寝かされると、加奈子ちゃん同様に一階部分で救急車側のストレッチャーに乗せ換えられ、救急搬送されたのでした。


━━━━━《折神視点》━━━━━


「他の皆もホイストで救助を開始してくれ。残りは何人だ?」と私に風祭さんが聞きました。


「俺と、温羅さんと、周防さんだけだ、味方は……、犯人の残りが下の区画に居るが幽鬼のいる層を抜けていかなきゃならんので難しいと思われるが捕らえられるならそれに越したことは無い。完全拘束で三人居る全員擬体だがまともに動けるものは少ないようだ。美空嬢が吹き飛ばして壁に叩きつけたみたいだからな。周防さん先に上がってくれ、その次は温羅さん、後で、借りていたものは返すもう少し待ってくれ。どうやらお客さんの様だ。周防さんをホイスト」三名人間でなくなった者が、上がって来ていたのでした。


 すでに幽鬼に憑りつかれていて変貌しており、会話話通じ無さそうだったのです。


 温羅さんと俺で先頭の一人を撃ち倒し、それぞれ残った一人ずつを撃ち倒したのであります。


 真ん中に来るまでに撃ち倒したので、崩落する天井に巻き込まれそいつらの生死は不明となったのでした。


 完全に天井が抜け落ちたフロアで「こちら一班と四班だ。その三人を回収しに行く、七班は二人を吊り上げたら、撤収されたし。ヘリは残ってくれ重量物を引き剥がさにゃならん」と一班の四月朔日わたぬき班長はそういったのです。



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