第三章 貝の妖魔

第3-01話 強襲者たち

━━━━━《美空みそら視点》━━━━━


 その日は珍しく、高校の校門前で、折神おりがみさんが捜査一課のお仕事の聞き込みをしていたのでした。


 聞き込みの対象を、女子高生に絞っておられるようでした。


 何の聞き込みかと思い、数人しか並んでいない列の後方に、私と加奈子ちゃんと温羅うらさんと高木たかぎさんで並んでみる事にしたのでした。


 さらにその後ろになぜかその場に現れた、周防さんまで並びましたが対象外だったので、聞き込みは行われず、不発に終わったのでした。


 何かと思えば高校周囲に現れるという、不審者の聞き込みでした。


 捜査一課が関わっているのですから、殺人事件ではあるのですが、結構地味な聞き込みだったのでした。


 私たちが列の最期ということもあり、折神さんや他の刑事さんたちと軽く談笑し始めたその時でした。


 私の勘が飛び起きたような警戒を出したところに、


“ガラガラゴロガラツ”


 ッと足元に、大量の催涙・スモーク・スタン・催眠など多種の手榴弾ハンドグレネイドが一瞬のうちにまき散らされ、同時に爆発したのです。


 さすがにこれだけ多種のものを撒かれては、対応のしようもありません。


 加奈子ちゃんをかばうだけで、精一杯でしたが、加奈子ちゃんは催眠弾の影響か眠ってしまっていました。


 そういう私や、温羅さん、高木さん、周防さんも一種だけなら何とかなるかもしれませんでしたが私はスタン弾の影響で体の自由が利かなくなっておりました。


 あの頑丈な高木紅葉もみじさんもこれにはこたえたらしく片膝かたひざをついていて動けなくなっておりました。


 私の視界内ではそこまででした。


 しかも、この襲撃には更なる追加が待っていたのです。


“ダダッダダダッ”


 と複数人の重装備をしている襲撃者が居てさらに煙幕弾の追加投射を行い視界が完全に真っ白く見えなくなったところへ、電磁警棒スタンバトンの追加襲撃と共に完全に動けるものが無くなるくらいだったのでした。


 私が見た最後の光景は、『真っ白い闇の中から現れた赤い一つ目のセンサーと思われるゴーグルをかけた者』だけだったのです。


 残りは重装装備で固められており、かなりの重装集団だということが解かるくらいでした。それを最後に私の視界も暗転しました。


 これは後から、偶々遠くにいた友達から聞いた話なのです。


 どうやら、ハーフウィングトレーラーで乗り付けて、弾幕を張り私たち集団を誰彼構わず、攫っていったようでした。


 白い靄が晴れたら、刑事さん一人を残して他のみんなは、消えていて大騒動に成ったらしかったのでした。


 次に気付いた時にはすでに、後ろ手で縛られ、足も一緒に縛られた状態で転がされていたのでした。


 しかも、薄暗い小さな部屋の中に、ただ一人だけでです。


 周囲にも特に誰もおりません。よく感覚を働かせると、太ももタイッシュホルスターごと得物が無く、近くにはかばんもありませんでした。


 まずは両手足と思いましたが、くつわまでご丁寧ていねいにされているではありませんか、そこからほどくところから作業が始まったのでした。


 幸いこうなったときも、あせらず対処すれば、なんとかなると教わっていましたので、まずはとがったものが無いか探しました。


 偶々壁になっているパーティションにするどい部分を見つけたのでそこにくくられている。腕部の細引きの様なものをこすり付け始めました。


 かなり時間はかかりましたが、手と腕は自由になりました。


 そこからはさらに時間をかけて、足を自由にしました。


 轡も上手く切れるように仕向けて、何度もいどみ外しました。


 そこまでで大分だいぶかかったのです。


 しかし周囲は静かで、音が聞こえてきませんでした。


 められていたのか、私の細引きには針金が入った鋼線ではありませんでした。


 それはともかく、部屋から出なければなりませんでした。


 鍵は掛けられていますが、厳重げんじゅうなカギではないようでした。


 とはいえ、パーティションを仕切っている鋼製の扉です。


 まともな方法で開けるのは難しいような気がしました。


 しかし術を使って開けるのも危険ではありました、何故ならば私の持っている術の多くは全体攻撃系という範囲系に該当がいとうする術しかないのです。


 術で開けて、周囲のパーティションをなぎ倒した結果誰かが巻き込まれて重傷を負うなんてことも考えられるのでした。


 まずは聞き耳からです。


 扉の外の音を聞き取るべく、鋼製扉の蝶番ちょうつがい側の隙間すきまに耳を近づけて集中したのでした。



第3-02話へ

--------------------《対応データ》--------------------

※この作品はフィクションです実在の人物や団体、

 ブランドなどとは関係ありません。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る