第0-32話 身辺警護延長:それから

━━━━━《由良ゆら視点》━━━━━


 普段の生活は、あまり変わりありませんでした。


 兄に送迎してもらい、美空みそらさんも一緒に学校へ行って、帰りも送って貰うのでした。


 途中まで欠席されていた、藍姫あいひめさんも無事学校に出て来れるようになり、一応の解決を見たのでした。


 のろったほうは、改善の見込み無しとして少年鑑別所かんべつしょに送られても、まだ呪うことをめなかった為、医療いりょう少年院に送られることが決定したということでした。



 二月の下旬から春休みが始まり、三月上旬の卒業式に向けて準備が行われました。準備もとどこおりなく進みました。


 半魔のほうは空振からぶりが多く、実際にはそこまで数が居ないとみなされるくらいでした。


 又は徹底的てっていてきに隠されているかですが、どちらかは分かりませんでした。


 結果的に居ないわけではなく、数が少ないだけでした。少なからず魔物との接触せっしょくこころみた者たちが居て異能いのうを得られたりその場で死亡したりしたらしいのでした。


 死亡した者の遺体はどうしたのか尋ねると、魔物が食したと答えることがほとんどで、魔物の形状についても、三種で他の形の魔物はいなかったのでした。


 異能を得られた者は、魔物と行動を共にしたそうでどこに行ったかは不明と答える例が多かったのです。


 今回分かっているだけでも、魔物と接触し連れていかれた者が十数名は確認できたのですが、今回の騒動そうどうかかわったキマイラについて行った者はわずか五名のみで、他の十数名は片側の翼が灰色の魔物に連れていかれた者が八名、背に翼があるマンティコアとおぼしき者に連れられて行った者たちが七名居ることが分かったのでした。


 われた被害者は、それぞれ五名ずつ十五名で被害もそこそこ大きいことが分かったのでした。


 殆どの者は見ていただけで、偶々気を失っていなかった者であり、逃げなかったことから魔物から気に入られたが、異能を会得えとくする勇気のないものは連れていく価値は無い、といわれた者たちだったのです。


 異能の得方えかたも単純で、魔物が差し出す白い球を食べるだけで良いというものでしたが、半数にあたる者が死亡したことから、足がすくんでしまいそこから先に進むことができなかった者ということが分かったのでした。


 合同捜査班の地道な捜査とディープダイブを駆使くしした捜査であり、イリーガルダイブも使ったらしいということが後の話からうかがえたのでした。 


 どの魔物も白い球を出して居ることから、白い球の供給元きょうきゅうもとは同一と思われました。


 逆に言えば、魔物二体と十五人の半魔か非合法イリーガル異能者がまだ居るということが分かったのでした。


 異能そのものは、過酷かこくきわめる様な修行からでも得ることは可能なのですが、それには時間がかかります。


 簡単に異能を得るには異能を持つ魔物自体を食するか、魔物の出す球や液体などを食べるか飲むかの二拓になるのです。


 前者は無理だと思われるので、通常は後者になるということが多いのですが、球や液体を創り出せる魔物は数が少なく、上位種であるため滅多めったに人前に出ることは無いのです。


 なので下位の魔物に渡して吟味ぎんみするのです。


 このことから、最悪でも上位種が一匹居るということが分かります。


 上位種はかなり強敵ですし滅多に姿を現しません。


 それか人工的に魔物の球や液体を作る技術が無いとも断言できませんでした。


 仮に後者だとしたら、その情報を見つけて、早く破棄しなければ被害者は増える一方だと、仮定できるのでした。


 この広大なネットから、ディープダイブやイリーガルダイブを駆使して、佐須雅さすがさんが探してはいますが、サハラ砂漠の中から一粒のダイヤを探す気の遠くなるような作業だと思われたのでした。


 電子犯罪シンジケートですから、広大なネットの中に隠しデーターを持っていると思われたのでした。


 このため、ネットワークの監視者たる公安九課の佐須雅さんがこの作業に最も最適と思われたのでした。


 その間は長良ながらさんが、こちらのガードを兄として行っており、折神おりがみさんも、地道に足で捜査を行っていたのです。


 動いていない者はいなかったのでした。


 班長はガード役の周囲警戒を行っていたのでした。



 要は人員不足だったのです。


 それぞれが、その道のスペシャリストではあるのですが、いかんせんネットの海は広大過ぎて一人で探すには問題が山済みであり、現場百遍ひゃっぺんとはいえ、現場が多すぎて人が足りていないのが丸分かりなのでした。


 かく言う私も身辺警護役ですから警護対象から離れるわけにはいきませんし、七班だけで受けるには範囲が広すぎるという状況だったのでした。


 今の現状では、取れる情報も逃してしまうのではないかと、班長に問うたのでした。


「確かに今の現状では、人員不足の感は否めないな」と班長からは「課長に話は通して置くよ」といわれたのでした。


 課長の判断もまた同じで「九課と県警に応援を出して貰うしかないな」というものでした。


「それか、今手隙てすきの三班と四班にも現場調査を指示するかだな」という答えがあったのです。


 そのあと課長は手隙だった三班と四班と解析第一班と第二班に現場の特種調査を実行する様に指示を回し、九課へつないだのでした。


 九課からの返答は手は足りないので、人員を回すというむね快諾かいだくとなったのでした。


 九課からの応援は、ほぼ生身で情報電脳化のみの荒木あらき康則やすのり隊員と一部擬体ぎたい化処理が行われている三枝さえぐさあかり隊員と宗倉むねくら和彦かずひこ隊員の三名があらたに派遣されてきたのでした。


 佐須雅さんと情報交換した後、早速さっそく作業に入ったようでした。斯波しば班長は顔合わせのため一旦いったん警戒から外れて顔合わせに行ったのです。


 課長との顔合わせは、すでに済んでいるようでした。


 佐須雅さんの居る七班の部屋に、机が二セット運び込まれ作業が可能になったようでした。


 ネットワーク内捜索班は拡充かくじゅうされ、現地調査班も三班と四班と解析第一班と第二班が加わり規模が充実し、万全ばんぜんとは言えないものの捜査態勢たいせいが整っていったのでした。


 検非違使の使命は、魔物の討伐とうばつというのが正しいのです。


 あとは、魔物が増えない環境の整備も含まれていました。


 当然、市民を魔物から守る事も含まれています。



 ですので、発生した魔物や半魔などの追跡調査も含まれているのです。


 年々社会構造が複雑化するにつれて、魔物の発生件数も増えてきているのでした。


 必ずしも、社会のやみから発生するわけではないのです。


 自然と生まれる妖魔あやかしも存在します。


 それに海外から渡ってくる渡来とらい種も居るのでした。


 なので検非違使の重要性も増すというわけでした。



第0-33話へ

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※この作品はフィクションです実在の人物や団体、

 ブランドなどとは関係ありません。


渡来種:海外から日本へ様々な手段を経て入ってくる妖魔あやかしのことです。本人が望まなくても連れて来られたり、持って来られたりするケースもあるため必ずしも妖魔の意思は関係ないことが多いのです。だからといって故意こいに入ってくる妖魔が居ないわけでもないのが悩みの種なのでした。本件に出て来ているキマイラと翼持つマンティコアは明らかに渡来種です。灰色の翼は渡来種かどうか、まだわかりませんでした。


闇:社会の暗部から発生してくる妖魔も居るのです。闇が産み落とすとはこれを指します。


自然と生まれる:人々の思いを受けて生まれてしまう妖魔も居ます。

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