序三章 春休みの章

第0-33話 身辺警護延長:狙撃ポイント

━━━━━《由良ゆら視点》━━━━━


 私のほうを取り巻く環境は、着々と卒業に向けて動いていたのでした。


 中学最後の春休みなので、遊びに行くことも増えていたのです。


 美空さんが遊びに出る際は、必ず私もお呼ばれするまでになっていましたので一緒にいることそのものは、違和感がないとまでいわれるようになっていたのです。


 むしろ二人いるほうが、自然に見えるとまでいわれてしまっていました。


 身辺警護としてはこれ以上にない条件だったわけです。



 身辺警護のほうはそれでまかなっていけるのでした。


 兄の存在もあり、確実に存在するという状態になっていたのでした。


 兄のほうもマンションの一室を四ヵ月程借りており、そこにある電話機からは長良さんのスマホにかかる様に転送設定されており万全の態勢が敷かれてはいたのでした。



 しかし、世間せけんの目をくらますため高校には通っています。


 高校のほうには検非違使けびいしから手を回してもらって、特殊任務に就くということで出席日数の調整をしていただいていたのでした。


 高校側の机にも特に悪戯いたずらなどはされる余地よちもなく、高校のほうは落ち着いた時間が流れていたのでした。


 事実をいうなら、入学式の初日に番張っている奴らをしたからでもあったのですが、「私に絡まないなら番はそのまま張っているといい」といってのけたからでした。


 十数人をほぼ一撃で熨した姿から一部の者からは『赤髪の鬼姫』と呼ばれるようになっていったのでした。


 高校の話はさておき、身辺警護の話です。


 キマイラの陣営からだけ狙われていたのではないかとの報告もありましたが、未確定状態でした。


 灰色の翼を持つ魔物や、翼持つマンティコアが狙っていないとも限りませんでしたから入念に行っておりました。


 遊んでいるフリをしながら警戒はしていたわけではあります。


 その甲斐かいあってか、こちらを観察する様にうかがう集団を発見しました。


 組織的に監視されている状況を確認しておりました。


 そこまで警戒されているということではあります。



 順当にいけば私を警戒してのことだと思われますが、美空さんの察知能力もなかなかのもので、私の察知能力を凌駕りょうがすることもしばしばあったわけです。


 特に知覚能力は、私と互角ごかくか私より少し上で有ると思われたのでした。


 どこの手の者か分からないけれども、双眼鏡で監視している集団が居るということをメールで素早く打ち込み斯波しば班長に連絡しました。


 スマホを、チラ見しているようにしか見えない体勢で送ったため、監視している集団からは気付かれてはいないようです。


 まあ最も、一緒に遊んでいる、加奈子かなこさんたちからは気付かれていますので、「何かありましたか?」といわれてしまいます。


「兄から連絡が来ていないかと少し心配になって見てたんだけれども、まだ何も連絡は来てないみたい」と答えておきます。


「今日も送ってくれるみたいだから」と答えるのです。


 美空さんはまだ視線の主たちには気付いて無いようでした。今日はハーバーランドまで出て、お買い物です。


 帰りは夕食を食べて帰ることになるというのを告げて出て来てはいます。


 兄にも、そのようにメールで告げてあるのでした。


 ただ、今日に限ってメールの返事がなかった訳でした。


 なので、少しは心配しているのでした。



━━━━━《長良ながら視点》━━━━━


 実際のところ俺のほうは若干じゃっかん深刻しんこくでした。


 その遠巻きに見られているという連中から、追跡を受けていたのでした。


 それをくので手いっぱいで、メールでの返答が送れなかったのでした。


 彼らの車のナンバーは特徴的だったので、俺には直ぐどこの所属か分かったのですが、つけられる覚えが無いのでした。


 それもそのはず、自衛隊ナンバーだったのです。


 撒くのは、それなりに腕に覚えのある俺でしたから、すぐに撒けたのですが、つけられるいわれも無かったので、すぐに斯波班長に報告した訳でした。



「ヤツラ完全にヤル気だよな? 彼らの縄張りではないでしょうに」と報告を車載しゃさい電話で連絡しました。車載電話には暗号通信機能があるので、傍受ぼうじゅされても何を話しているか分からないようになっているのでした。


「こちらにも覚えが無いな、そういえば由良さんから連絡があったんだが。双眼鏡が必要になるくらいの距離から、のぞき見されているという報告があったぞ。


 今から確認しに行くところだから、ひょっとしたらそいつらも自衛隊かもな」と車載電話で受信した斯波班長がいったのでした。


 偽装バンにも、暗号通信機能付き車載電話が設置されているのです。



━━━━━《斯波視点》━━━━━


「まずい、もう完全に狙撃ポイントを押さえられてるな。課長にも緊急報告をあげておこう」といって課長に車載電話からかけたのでした。


「はい羽柴、何だ斯波か、少し急ぎの用事ができたんだが、急用か?」と課長からいわれたのでした。


「自衛隊がうろついていますよ、我々の縄張りと警護対象の狙撃監視を行っているようです。何か厄介やっかいごとでもいたんですか? 警護対象を狙撃監視して、ヤツラまとめてこちらを始末する気ですかね!」といったのです。


「どうやら、非合法異能者イリーガルタレントになったヤツのうち二人が自衛官なんだそうだ。多分、こちらがまだ狙われているという古い情報しか知らないんだろう、それか何か新たな情報をつかんでいるかだが? 一人では動くなよ。最低でも三人になってから動け、向こうは集団だ。こちらは折神さんと長良が合流をかけている最中だ」と課長から釘を刺されたのでした。


「斯波了承しました。長良、折神、両名とバディーを組みます」ということしかできなかったのでした。



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