第0-34話 身辺警護延長:待ち合せ

━━━━━《斯波しば視点》━━━━━


「こちら斯波、長良ながらさん合流地点を教えてくれ、どうぞ」と私はいいました。


「こちら長良、ポイントジュリエットで待ち合わせ中」と返答が来ます。


「ワン、ファイフ、ファイフ、ファイフまで待てるか? どうぞ」といいました。


「長良了承、ワン、ファイフ、ファイフ、ファイフまで待機します」と心地よい返答が来ます。


「こちら長良、折神おりがみさんと無事合流しました。まだチェイサーには見つかっていない模様」と合流コールが聞こえます。


「チェイサーは、陸自ナンバーのハーフトントラックと高機動車それぞれ一台。高機こうきのほうは、目立つからくのは比較的容易、幅の狭い道に誘い込めば容易に足止めができる。問題は、ハーフトントラックのほうだな。車幅しゃはばが千七百十六ミリしかないから、見つからない様に願いますよ。足回りも、向こうのほうが強いですし」と長良さんからささやかながら情報支援が飛びます。


「偽装バンだから大丈夫だとは思うが……、お互いに手の内は知れてるってところか。高機に貼り付かれた、細い道を選んで撒くことにする。ワン、シックスまで待てるか? どうぞ」といいます。


「ワン、シックス了承」と折神さんがいいました。


「こちら長良、インディア方面からハーフトントラックが接近中。まだこちらには、気付いていない模様。そのままやりすごせるか確認する。窪地くぼちに隠れているとはいえ、いつもながらにひやひやするぜ」と長良さんがつぶやきました。


「こちら長良、ハーフトントラックはこちらに気付かず。キロ方面に向けて、通過した模様。とりあえずクリアかな?」と長良さんがいいます。


「トゥー、ゼロには迎えに行かなければ行けないので……、しまったメールを返してないな。折神さん、周囲警戒頼んだ。メールを打たなきゃならん」と長良さんがいうとメールを打ち込んで由良ゆらさんに送ったのでした。



━━━━━《由良視点》━━━━━


 一方そのころ私は、みんなとクレープを食べているところに、暗号の混じったメールが飛んできたのを確認しました。


 要約すると、二十時までには迎えに行ける準備ができるとなるのです。


 暗号を繋げるとカンシシャハ監視者はリクジ陸自となるのでした。


 そのメールを見ながら、私は兄が二十時には迎えに来てもらえるということをみんなに話します。


 事情を知らないこちらとしては、なんで陸自がからむのかよく分りませんでした。


 向こうは、人数も力も多分ありますし距離も遠すぎます。


 友達を危険に、さらすわけにもいきません。


 近くには、こちらを監視する者たちはいなかったのでした。


 休日の、ショッピングモールです。


 親子連れや子供や中高生がそこそこいます。


 筋骨隆々きんこつりゅうりゅうとした者たちが集団でいたら、ものすごく目立つはずです。


 そういう人員は、出していないと思われたのでした。


 それに私の今日の服装はこの前買ったばかりではありますが、ビンテージスタイルの濃紺ネイビーのマキシたけゴシックドレスに上着として黒色のダウンコートを合わせてあるのでした。元より、戦闘向きではない服だったのです。


 それに、本日お買い物した分の荷物もありました。


 なので、監視している対象が居るビルの辺りをフォネティックコードのポイントで知らせます。


『監視者のポイントはゴルフ近傍きんぼうの高層ビル屋上』とメールを素早く打ち、最初に斯波班長に送ります。


 その後に兄役の長良さんに、『夕食は食べてから連絡するね、お兄ちゃんもお腹空かせたままでいない様に。香織かおり』とゆっくりとメールを打つのです。


 そういう間も、気配にだけは常に気を配って置きます。半魔や魔物が居たらかなりまずいことになるからでした。


 非合法異能者イリーガルタレントも、持っている能力次第でかなり危険ではあるのです。


 その代わり、まだ人型をしている分、こちらから仕掛けにくく厄介やっかいな相手なのでした。


 しかし、半魔は気配がまだつかめるからいいのです。


 非合法異能者は、気配そのものは人と変わりがないのでつかみようが無いのでした。


 怪しい動きをしている者が居ないか判断を付けようとしましたが、本日は春休みの上祝祭日であるため、人混みでそういう動きをしている者が居たとしても雑踏に紛れてしまい、ほとんど見えないのでした。


 さらには、私がキョロキョロするわけにもいかないのです。


 人ごみの中でも私は目立つ容姿を持つので、あまり変な動きができないのでした。


 視線は美空さんを主軸に据えて、身辺警護に傾倒けいとうすることにしたのです。


 これにより、周囲での怪しい動きをする者の行動をとらえることができるようになったのでした。


 怪しい動きと言っても、流れに逆らってこちらを見て立ち尽くす若者や、軟派なんぱな行為をたくらむ者の視線を、捉えることができるようになっただけでした。


 つまり、魔物や半魔などの妖魔あやかしは周囲にいなかったということになります。


 非合法異能者イリーガルタレントが居る可能性は捨てきれませんでしたが、現状ではいないといえるような視線しか捉えられなかったのです。



━━━━━《長良視点》━━━━━


 その頃、斯波班長と折神さんと俺は無事合流をして、ポイントゴルフ近辺にある高層ビル群の調査を行って居る所でした。


 高機動車が四台も止まっているので、すぐに目的のビルを見つけられたのです。


 しかし、三十人弱はいると思われる相手に対し、こちらはスペシャリストとはいえ三人と少々数が少ないのではないかという話が出たのでした。


「話し合いに行くだけだから、武器は最小限にしておけよ」と斯波班長が言います。


「とはいっても俺の場合は太刀一本だし、折神さんもM29一丁だけじゃあないですか、むしろ班長のほうが重装備ですよ」と俺がいいます。


「XM8は置いていくか、MP7だけ持っていこう」と斯波班長がいったのでした。


「軍用手甲は防具だからいいよな」とも続けられました。


「相手さんが、どう見るかだけですがね?」と折神さんがいいました。


「陸自の連中とは、話が通じるといいなぁ」と俺も呟きました。


「話し合いが通じなければ、拳で語り合うだけさ」と斯波班長がいったのでした。



第0-35話へ

--------------------《対応データ》--------------------

※この作品はフィクションです実在の人物や団体、

 ブランドなどとは関係ありません。


XM8:五.五六ミリNATO弾を撃てる、突撃銃アサルトライフルです。


 二〇三五年の現状は検非違使全体で二百丁程を採用しM8と呼称されています。


 班長が入手の際には、まだ開発ナンバーであるXが付いていたため班長はXM8と呼んでいます。



M29:S&W社製のフォーティーフォーマグナム弾を撃てる、回転式拳銃リボルバーです。


MP7:HK社製の短機関銃サブマシンガン、斯波班長が使用しているのはA型です。


NATO:北大西洋条約機構、二〇三五年現在でも存在し各国に影響力を持ちます。


NATO弾:NATOの元で正式採用された弾の種類を示す用語です。

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