第7-06話 祓魔師と隔離者と帰還者

2035/09/09 23:00 |祓魔第二班詰所

 電話が鳴った、夜番なんてするもんじゃない。面倒事しか掛かって来ないんだから、と思いつつ渋々鳴り響く電話を取りました。



「はい、祓魔ふつま第二班詰所……。 ! 何ですって!! 死者の書が出た!」ここ最近は、姿を見かけてないから、平和だと思っていたのに……と思いましたが出てしまったのです。



「はい、隔離者が二名、重症隔離者が一名、隔離者用のフルコンテナがツーセット、はい……五日分、ロッジですか? どちらのロッジで……はい神戸ロッジ村B棟六号ロッジですね、強化法円陣も使うんですか? ……わかりました。フル装備で一班と共に出撃します」“カチャ”と電話を下しました。

 屋内通信器の切り替えを全班室から第一班と第二班と第三班にのみ接続しました。


“ジリリリリリリリリ……”と出動のベルを鳴らしました。さらに放送もかけなければなりませんでした。


「祓魔第一班と第二班は大至急出動用意、パッケージコンテナ五つツーセットも準備せよ! 第一班は大至急フル装備にて出動、祓魔場所は神戸ロッジ村B棟六号ロッジ、祓魔できないときに備え第三班は強化法円陣の準備を急げ! 繰り返す…………」と二度繰り返すと、専用のHUDヘッドアップディスプレイ-二型の付いたフル装備仕様の防魔フルヘルメットをかぶり、専用ジャケットと装備を引っ掴んで、緊急出動用のシュートで一階まで滑り降りました。


「副長! 準備完了です、一班は先に出ました我々の荷物にパッケージコンテナ五つツーセットが入っています」と部下から声がかかりました。


「分かった、先行する一班に連絡、重症者一名と隔離対象者二名、判断は死者の書を持っているかどうかだ!」といいます。追加で「重症者は擬体化適応手術済みの模様」と極めて冷静にいいました。


「一班了解」と通信器から了解の報告が入りました。


「二班は隔離対象者への説明と、その場で祓魔できるかどうかの確認を行ってくれ。重症者の対応を全て済ませたら、そちらの応援に行く」という返答が得られました。



2035/09/09 23:05 |ロッジ村B棟六号ロッジ一階応接室

 その頃、私は長良ながら副長に説明のために応接室にいました。

「で、一メートル以内に近寄っちゃあダメなんですね。しかし五日ですか、隔離で仕事扱いっていうのは助かりますが、風呂五日厳禁はきっついですな」と正直に長良副長はいいます。


「そう言うな、私も同条件なんだぞ。祓魔班からの説明があるがそれによるとさらに伸びるかもしれんがな。飯類は三食・昼寝付きだそうだ。無人島で簡易休暇だと思え!」ときっぱりいった私に、長良副長が突っ込んできました。


「で、隊長格不在の七班の指揮はだれが見るんで? 開店休業ってわけにもいきますまい」と長良副長がいいます。


「副課長の話からすれば、係長と主任に一時、隊長権限と副隊長権限が与えられるんじゃないか、協力班の風祭係長と同じく協力班の折神主任辺りが適任だと思うんだが?」と私が補正しました。


「具体的な話はなしですかい」とさらに突っ込む長良副長でした。


「そこまで討議する時間がなかったからな。緊急の電話だったしなぁ」と私がぼやきました。


「まあ、副課長の采配なら俺は文句の出しようがないですからいいですけどね」と長良副長が引っ込んだ。


「で、死者の書を持ってしまった、佐須雅は一番で対処せにゃならんのは確かなんですが、我々の呪いは厄介かもしれませんなあ、それまでレトルトの食事ですか、栄養が偏らないのがいいのは認めますが、ガッツリ肉が食いたいですなあ仕事の後はキンキンに冷えたビールか冷酒と生魚か焼き肉がいいですな」といいだしました。


「それには同意する。まあコンテナハウスでの隔離でないだけマシなんだからそれ以上の愚痴ぐちは置いておけ」というに留めました。


「二階に二部屋あってよかったですな、少々狭めですがコンテナハウスよりは環境が格段に違う。俺が北側の部屋に入りますんで、班長は南側の部屋でどうぞ、そちらの部屋のほうが少し広かったはずですし、俺は先に入っておきますね」と長良副長がいって二階へ上がっていきました。



2035/09/09 23:45 |ロッジ村B棟六号ロッジ入口前

 包囲班の四人はすでに集まっていました。副課長からロッジの入口前で集合しておくように指示があったからでした。


「検非違使第八班班長の吾郷あずま とおるです。風祭係長はおいででしょうか」と検非違使のBDUバトルドレスユニットを着こなした角刈りで武骨そうなイメージの男性が、車両から降りてきておっしゃったのでした。左腕に班長のシグナルコードを巻いているのですぐにわかりました。


 風祭係長が動きます「私が風祭だが、何かあったのか? 副課長指示でここに集まって回収班を待てと言われているのだが、君たちが回収班か?」と一気に話を持っていきます。


「はい、我々八班が自信をもって、全ての車両と包囲班の貴方がたを仮八課棟までお連れします。どうぞ、ご乗車ください」といって検非違使のバンの左扉を開けたのでした。


「装備はあれば二号車に積みます。大型装備は今回はお持ちでないですか?」とおっしゃいました。


「今回は大型装備は持ってきていません。死者の書が出てくるようなら持って来ていたかもしれないのですが」と私が最後に乗車するときに返答しました。


「皆様、シートベルトの着用をお願いします」と吾郷班長はおっしゃいました。

 確認が終わり一路、神戸分署仮八課棟に戻るのでした。


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