第0-37話 身辺警護延長:無理

━━━━━《美空みそら視点》━━━━━


 流石さすがに無理をしぎた、と思ったのは立ち上がれないくらいの体力しか無かったからでした。


 今は、香織かおりさんの膝枕ひざまくらでベンチで横になっている状態です。


 休んでいるところへ先程のカップルが、救急隊員を一人連れて戻って来てくださいました。


「ただごとじゃなさそうなので、専門家を連れてきました」とおっしゃったのです。


「脈拍は落ち着いています。ただの疲労と言うには少々無理を、し過ぎた結果とも取れる状態です。外傷は無いというのと疲労の重いものだからエネルギーをしっかりとってゆっくり休めば治ると思います」と香織さんが自信をもっておっしゃっていたので、救急隊の方も脈拍と熱を測ってくださって「状況は疲労だけのようですね」とおっしゃったのです。



「なんとなれば、市民病院の加藤先生が、私の経過を診に来てくださいますので、その時に一緒に診てもらうことが可能です」と香織さんがおっしゃいます。


 それを聞いた救急隊の方は、加藤先生を知っておられるようで「それならば安心ですね。では何かありましたらすぐに駆け付けますので、いつでも呼びだしてください」とおっしゃって元に戻っていったのでした。


「あまり無理はしないでくださいね、沙羅さら御婆様おばあさまが心配しますよ」と香織さんにとどめを刺された形となりました。



━━━━━《長良ながら視点》━━━━━


 そのころ、「治療はこんなもんでしょう」と手早い治療で止血帯とバンテージを巻き巻きしていた、俺がいいました。


「俺が、斬って無くてよかったですね。俺が斬ってたら、間違いなくあの世行きでしたよ。折神おりがみさんのM29で、まだ助かったほうですよ。弾は抜けてますから。後はコイツの回復力次第でしょう。ブースト系ってことはその辺の回復力が早いというのは教えておいたほうが良さそうですね」と血が止まっていることを確認すると、突いて起こしたのでした。


「ほれ起きろ、狸寝入たぬきねいりはそこまでだ」と俺が速攻で突き起こしたのでした。


「アレ? 俺死んでねえ」と言いながら起きたのでした。手錠は後ろ手で三重掛けになっています。


 いかな非合法異能者イリーガルタレントといえど彼の能力では外れない様になっているのでした。


「お前は自衛隊に引き渡す、それまではウチ預かりだ」といったのでした。


「逃げ出せば容赦ようしゃなく、背後からバッサリ真っ二つにしてやるぜ」と俺がおどしました。


「どっちに行っても扱いが同じなら、まともな飯を食える方がいい」と開き直ったようでした。


「捜査専従班は、非合法異能者を引き取りに来てくれ。私も一緒について行こう」と斯波しば班長がいわれました。


「それと、回収班は非合法異能者の遺体を、しっかりと集めて回収してくれ。ここから魔物が出ても困る」と追加で言われました。



━━━━━《折神視点》━━━━━


「こちら特捜の折神、検非違使けびいしのメンバーが引き揚げ次第、鑑識を入れてくれ、状況の解析はこちらでも行う必要がある」といいました。


 事実として言えば、どんなものが非合法異能者のやることでどれが、半魔のやることか等の違いがまだはっきりと区別できないからでした。


 魔物はまだなんとなくわかりますが、そのあたりは専門家が来る前に状況把握ができるようになれば引継ぎも楽になるはず、だったからでした。


 つまり警察としては魔物事件の多くに、経験が足りていないということでした。



━━━━━《由良視点》━━━━━


 そしてそのころ広域避難所のベンチでは、ある種密になって作戦会議が行われていました。


美空みそらちゃんのこの様子では、おいしいものは次回ですね」と加奈子かなこさんがいいました。


「迎えに来てくれる時間までまだ間があるから、いいけれども」と私が答えます。


「JR神戸駅近辺のファーストフードはまだ空いてるよね、何か買ってきた方がいい? 多少は食べたほうがいいのでしょう?」と彩名あやなさんがいいます。


「それなら私も一緒に行きますよ」と静香しずかさんもいいました。


「それなら私も行くー」とあかねさんもいいます。


「香織ちゃんと加奈子ちゃんと美空ちゃんの分は手分けして持ってくるから何がいい?」と彩名さんが言ってくれたのでした。


「栄養価の高いものと言えば、お肉系でしょうか?」と加奈子さんが言いました。


「香織ちゃんと加奈子ちゃんは何にする?」と問われたので「私もお肉系かな? お肉二枚のダブル系で、ドリンクは炭酸系のセットで」ということにします。


「私はいつも通りお魚系で、ドリンクはアイスティーがいいな」と加奈子さんが言われたのでした。


「美空さんはどうします?」と私が聞くと、「香織さんと同じセットを一つ」と答えられたのでした。


 と言う会話がなされているころでした。



━━━━━《長良視点》━━━━━


「この時間からでは特殊メイクが間に合わんな、あれはソコソコ掛かるからな。今日は例の白いボックスで来てるから、温羅うらの代わりに頼まれたということで俺が送りに行っても良いでしょうか班長?」と俺がいいました。


「間に合わんなら仕方がないな、くれぐれもバレるなよ」と斯波班長が言いました。


「ところで班長、温羅の仕事先の件なんですが、検非違使の事務方内勤てことではどうでしょう。それならつながりがあってもおかしくはない。そろそろ聞かれそうな気がするんですよね。俺の勘ですが」と聞きました。


「課長に話して通ったら許可する」と返答がありました。


「分かりました、課長に話を通してみます」と言うしかありませんでした。


 そのまま課長の電話につなぎ変えました。


「どうした長良、急ぎか?」と問われたので「急ぎと言えば急ぎですね」と答えます。


「温羅の仕事先の件なんですが、検非違使の内勤の事務方って線でどうでしょう。それなら、今日みたいな代走が、利きやすくなりますし、いかがでしょう?」と提案をしてみたところ。


「席を一つくらいならいつでも確保できるが、ウチの内勤てことでいいんだな? 直ぐにカードと身分証を作らせよう。こういう話は早い方がいい」とあっさり快諾されたのでした。


「温羅の写真はこの前の特殊メイクの時のヤツでいいな? 今まで話せてなかった件は温羅の時に話しておけ、長良の時は話すなよ」ともいわれたのでした。


 無理を通したつもりが、あっさりと通ってしまい、拍子抜けした感がありましたがとりあえず班長につなぎます。


「班長、例の件通りましたよ、あっさりと」と報告します。


「ならいいんじゃないか?」とこちらもあっさりと返されたのでした。


「忙しいから切るぞ、さっきの彼の調書を今取っているところなんだが、記憶が一部改竄かいざんされた節が、ある事が分かったんでな。突き詰めているところなんだ」といわれたのでした。


「改竄とはおだやかではないですね」と答え電話を切ったのでした。


「さて温羅のスマホを変えておかないとな。俺のやつに。と、折神さんはどうする? 今日は少しやかましいが乗っていくか? 助手席は空いているぜ」と聞きました。


「温羅とは繋がりは分かるが、長良と繋がるのは線が混乱せんか? まだ残っている八課のバンに便乗するよ。佐須雅と佐須雅の部下に、差し入れを持って行ってやった方が、いいと思うからな。確か生身が一人で残る二人は佐須雅ほどではないが、擬体化されているらしいからな」といわれたのでした。



第0-38話へ

--------------------《対応データ》--------------------

※この作品はフィクションです実在の人物や団体、

 ブランドなどとは関係ありません。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る