第0-2話 紹介

━━━━━《美空みそら視点》━━━━━


「とりあえず、ウチに今いるメンバーと会ってみましょうか、いざ来てもらっても私や副課長が必ず居るとは限りませんから。それに、配属先の班のメンバーとの顔合わせも必要でしょうし」と課長が落ち着きのある声にやわらかな表情でおっしゃいました。


「まず私の右手側にお越しください、扉の前では不便だと思いますので」と課長が右手で五本の指を揃えて手のひらを上に向け、課長から見て右手前方の空間に向けながらおっしゃいました。


 課長の右手側をすすめられたのでまず、お父さまが向かってに左斜め前に移動して行きその先で入り口側へきを変えられました。


 私もそれに続いて課長のデスクの右前方ぜんぽう側へ移動し、お父さまの右どなりに並び向きをお父さまと同じ入り口方向に変えました。


 今のお父さまは黒地で厚手の防寒防水のバルマカーンコートは脱いで左手に掛けてある状態であり、他はこんの平服上下に冬服に合わせるワイシャツを温かみのあるベージュ系としウール百パーセントのワイドタイで紺地にベージュカラーでウィンドーペーンふうチェックのものをしておられました。


 髪はオールバックの綺麗きれい漆黒しっこく長髪ちょうはつで髪をロングウェーブサムライヘアのアレンジのようにした上で襟足えりあしのあたりでさらにくくって背後に流しておられました。


 髪一本一本が綺麗に黒いのです、まだめてはいないようでした。


 染物特有のにおいはただよってこないのです。


 ひげはほとんど生えておらず、綺麗にって丁寧ていねい肌艶はだつやをコントロールしておいででした。



 そして移動していった先のこの私の位置は、丁度ちょうどデスクに座る副課長の正面視界に入る位置でした。



 すると課長は後ろに下がってしまった椅子いすを右手で引き寄せると一旦座りなおし、天井から課長のデスクの右側にれている灰色のラインつながっているデスク上の送信端末と思わしきものを右手で持ち上げました。


 課長はさらに左手で机の上で中ほどに置いてあった、黒光する長細く平たいコントローラーのようなものを操作し左側の機材の山に向け淡い緑色の丸いボタンを押し込み何かを操作したようでした。


 その瞬間副課長の後ろにある通信器と思われる、スイッチの沢山並んだ機材の左上角にある比較的大きなLEDが、グリーンに点灯すると同時に“パチン”という少し大きめの音が返りLED直下の一番大きい黒いバースイッチが上向きに切り替わったのが見えました。


 そして課長は送信端末と思われるものの右側についている会話カイワと白字で書いてある赤いボタンを押し込み、その端末を口に近づけてきわめてやさしい口調に柔らかい表情で『第七班班長斯波しばさんと、事務方九十九つくもさんは課長室まで来て下さい』全館に響く放送で呼びかけられました。


 そしてほんのわずかに待ちました。


 一分もたずに、扉の前に駆けつける足音が、二人分かすかに響いて聞こえてきました。


 そして、


「斯波です。入ります」


「九十九です。同じく入ります」


とお二人が順におっしゃって、若い女性のつやのある声と男性の低い声が扉の向こうがわから聞こえました。



 そして二人そろって入って来て、女性は右手の平を左下に向け頭の少し前に右手の人差し指を置くように右ひじを少し張り自衛隊式の敬礼をしながら「お呼びでしょうか、課長」と生真面目な声に生真面目な表情でおっしゃいました。


 男性は入って来てその場で約三十度ほど背を傾ける一礼をする敬礼をしたあと「お呼びですか、課長」と生真面目な声ですが、少し柔らかめな表情でおっしゃいました。


 女性はダークグレー地のジャケットとミディアムグレーのパンツスーツ姿で細目の白いストライプが細かめに入ったライトグレーのシルク地であろうと思われるナロータイがバッチリと決まっており、前髪を斜め分けにして後ろ髪をクール系ショートにしてあり明るい色目の茶髪で、黒髪の私とは対照的にインパクトがありとても格好よく見えました。


 男性は角刈りの用務員さんを思わせる風体ふうていのお人で、茶色のベストに白いワイシャツにえんじ色のシルク地と思わしきレギュラータイと冬服の生地の厚い茶色いズボンと、その腕回りの黒い生地の腕巻きなどの装備と課長の呼びかけから察するに事務員さんかなと思われました。



 私は腰まである漆黒の艶のある黒髪のストレートヘアをメインにお尻が隠れる程度に伸ばしてあり前髪は眉にかかる位で伸ばしっぱなしであり、耳にかかる髪の所だけ三つ編みにして最終段を黒いリングゴムで留めそれを隠すように短い赤いリボンで結び前側に垂らし腰上辺りまで伸ばしてありました。


 また今の私の服装は白基調に統一してあり、ホワイトの冬用マキシ丈ワンピースを綺麗きれい目で着こんであり同じく白いふわふわの暖かそうなフリースジャケットに厚手の白いダウンロングコートを左腕に折りたたんでかけていました、右手には黒単色で生地の厚く丈夫な三十リットルクラスの少し縦長のミリタリーリュックもサイドハンドルで持っていますが床の上には何も垂らしてはいませんでした。


 私はそれなりに美人であるという自惚うぬぼれがありましたが、自分はまだ普通な方に入るのではないかと思わされました。



「紹介しよう、新しく第七班に加わってもらうことになる神無月かんなづき 美空みそらさんだ」と課長がしっかりとした口調に柔らかな表情を加えておっしゃいました。


「お初にお目にかかります、神無月 美空と申します。よろしくお願いいたします」としっかりいいながらお二人に向かって、深々とお辞儀じぎをしました。


「まあ実際に加わってもらうのは高校入学後だが、何かの折にまた来られるかもしれないので、顔を覚えてもらっておこうと思ってね。我々も常にここに居られる身では無いからなぁ」と後ろ頭をかきながら課長が優しい口調をそのままに柔らかな表情を維持しておっしゃいました。


「向かって左側が斯波しば 麻美あさみさんで、一般局員いっぱんきょくいんをやってもらっています。配属したら第七班の班長である彼女が上司になります」と課長はしっかりとした口調に変え柔らかな表情のままおっしゃいました。


「斯波 麻美ですよろしくお願いします」と彼女ははっきりとした口調で柔らか目の表情をしておっしゃいました。


「向かって右側は九十九つくも まことさんで、事務員をやってもらっている。九十九さんは普段からここに居るので覚えてもらっていたほうがいい」と課長はしっかりとした口調ですが、柔らかな表情は崩さずにおっしゃいました。


「九十九 誠ですよろしくお願いします」としっかりとした口調に柔らかな表情に変えて男性もおっしゃいました。


 私はよろしくお願いしますといわれるたびに返礼を行っていました。


 こういうのは最初が肝心かんじんと思われるからです。



 玄関内の駐車場のほうからツーストと思われるバイクの甲高かんだかい音と、車にしては太く高いエンジン音の車が入って来て停車したと思われる音が響いてきました。


 さっきは気が付きませんでしたが、左右両側の窓は一枚づつ開いており空気を取り入れるようになっていたのでした。


「新たに二人帰ってきましたね、その二人も紹介しましょう。同じ第七班ですし」と課長はいうと送信端末の会話ボタンを押して、優しめの口調に変え柔らかな表情のまま『今帰ったばかりで申し訳ないですが、課長室へ上って来てもらえますか。由良ゆらさん、長良ながらさん』と全館に響く放送でおっしゃった後にお二方に指示を出されたのでした。


「斯波さん、九十九さん、ご苦労様でした。挨拶だけでしたから」と課長は柔らかな口調に変え柔らかな表情は崩さずにおっしゃいました。


「分りました。元の席に戻ります」と二人はハモっていうと、二人は新たに帰って来た二人と交代して課長室から向かって右側の扉を引いて開けると出て行かれました。


 後から課長室を出た男性が右側の扉を、静かに引いて閉めました。


 交代こうたいして向かって左側の扉から入って来たのは、黒地に赤い稲妻模様のストライプの入った艶のある革素材と思われるライダースーツに身を包んで黒光するヘルメットを左手で抱えた女性が私に近い側に、向かって右側に来て「お呼びでしょうか課長」と右手で敬礼をしながらはっきりとした口調にキリリとした表情でおっしゃいました。


 そしてもう一人は上下ともあい色のスーツ姿の男性でネクタイはしておらずワイシャツは淡い青い色でした、そして白い羽二重はぶたえと思われる白地に金糸きんし花菱はなびし家紋かもん刺繍ししゅうの入った太刀袋を左手にお持ちでした。


 その男性は入って来て右手でそっとドアを閉めてから、その女性と同じラインに並び「お呼びでしょうか、課長」と右手で敬礼をしながらしっかりとした口調に柔らかめな表情でおっしゃいました。


 女性は前髪をMの字に分けて、左サイドポニーテールを高めの位置で結んでおり髪の長さは私と同じかそれより少し短いくらいであろうと思われましたが、髪の色が物凄ものすご特徴とくちょうてき薄桜うすざくら色の長い髪だったのです、さらにマスクも印象的で美人な方でした。


 男性のほうもかなり特徴がありました。


 真っ赤な髪に柔らかなミディアムヘアで、修練を積んでいるのであろうと思われる身体もスーツ越しではありますが肉体的で強い印象があり、マスクも美男子というに相応ふさわしかったのです。


「紹介しよう、新しく第七班に加わってもらうことになる神無月 美空さんだ」と再び、課長に紹介されました。


「お初にお目にかかります、神無月 美空と申します。よろしくお願いいたします」としっかりとした口調になるように気を付け少し柔らかめになる表情でいいながら、お二人に向かって深々とお辞儀をしました。


「まあ実際に加わってもらうのは高校入学後だが、何かの折にまた来られるかもしれないので、顔を覚えてもらっておこうと思ってね。我々も常にここに居られる身では無いからね。それと二人とも、第七班の班員をやってもらっていることだし」と課長が右手で右側の側面の髪をでつけながらおっしゃいました。


「向かって右側は第七班の調査員ちょうさいんをやってもらっている由良ゆら 香織かおりさんで、向かって左側は同じく調査員ですが第七班の副長をしてもらっている長良ながら 義之よしゆきさんです」と課長はかなり丁寧な説明を静かな口調に切り替え柔らかな表情を維持しておっしゃいました。


「私は由良 香織、調査員よ。荒事専門だけど、よろしくね」と最初に紹介された女性がキリリとした表情のまましっかりとした口調でおっしゃいました。


「俺は長良 義之、俺も一応調査員なんだ。それと課長に言われた通り第七班の副長もしてるんだ、よろしくなお嬢さん」と次に紹介された男性も笑顔に変えしっかりとした口調でおっしゃいました。


 私はよろしくといわれるたびに返礼を行っていました。


 こういうのはやはり最初が肝心だと思うからです。


「今日はご挨拶にうかがった次第です」と私は静かにですが、しっかりいいながら表情は変えませんでした。


「ありがとう長良さん、由良さん自席に戻ってもいいですよ」と課長が柔らかな口調に柔らかな表情のまま、おっしゃいました。


 すると二人が再び同じように敬礼し、課長室を順に退室して行きました。


 そしてまた、課長と副課長とお父さまと私だけになりました。


 すると課長は「今日他の皆は生憎あいにく長期ちょうき案件あんけんの仕事で出ていて今は先の四人しか居ませんが、実際じっさいには四十五名以上のおお所帯じょたいです。七班に分かれていて一班当たりの構成こうせい人数は約六名で構成されています。出向しゅっこう組もいますから実際にはもう少し増えるのですが、又その都度つど紹介していくとしましょう」と柔らかな表情のまま口調はしっかり目で少し長めにおっしゃいました。


 すると今度は、お父さまが動きました。


「美空、麒麟きりん御神刀ごしんとうを出しなさい、登録だけ先に済ませてもらおう」とお父さまが静かに生真面目な表情でおっしゃいました。


 ミリタリーリュックを右手から左手で持ち替える際に縦に戻し天蓋てんがいを外しメインコンパートメントのドローコードを緩め、ミリタリーリュックの中から金糸で麒麟の刺繍が入った濡れ羽二重の紫紺しこんの鞘袋を右手で出し、左腕にかけたコートを落とさないように気を付けながらミリタリーリュックを右手に持ち替えいったんミリタリーリュックを足元に立てるように自らの右脚に立てかけるように降ろします。


 そして鞘袋の上から四分の一ほどに結んである正絹しょうけん房紐ふさひもを左腕の高さを変えずに左手で簡易的に解きそのまま正絹房紐を八つ折りにして左手に持つと今度は鞘袋の中ほどを左手で持ち鞘袋を固定し中から黄金おうごんに輝く短刀こしらえを右手で出しお父さまに渡しました。


 そのあと再びミリタリーリュックを縦長のまま持ち上げ、ショルダーハーネスとウェストベルトをひとまとめにしてサイドハンドルに持ち替えました。


 お父さまはその黄金の短刀拵をそっと両手で預かると、課長のほうに持っていきました。


「これを登録して使用できる様にしていただきたいのですが」とお父さまが低い声生真面目な表情でおっしゃいました。



「こ、これは!」と驚く課長がおりました。


 副課長も興味津々きょうみしんしんといったふうで、見ておりました。



「これは先祖代々伝わる麒麟の御神刀でございます、今日こちらへ来る前に教育委員会にて届け出ましたので」とお父さまは静かに低い声で話し表情は変えずにおっしゃいました。


「承知しました。では現場ですぐに使えるようにいたします。一旦お預かりします」と課長はおっしゃられ、両手に品質管理用の白手袋をしてから受け取ったのでした。


 そして課長は、一旦課長室から出て行かれたのでした。


……五分後……


 “コンコン”


 と二回ノック音がして少しすると、課長が静かにドアを開け戻って来られました。


 そして私の方に向いて近くに来られ「ご返却いたします。これで現場で使用できますよ」と課長が柔らかな口調で白手袋のまま両手で御神刀を差し出されました。


「登録ありがとうございます」と私がしっかりとした口調で答え笑顔で、御神刀を両手で受け取ると左手で紫紺の金糸の刺繍が入った鞘袋を持ち御神刀を右手で持って鞘袋の中に深くに入れ、鞘袋の口を折り畳み左手で持っていた正絹房紐を右手でうろこむすびに結び直しそしてそれを右手で持っていたミリタリーリュックを左手に渡す際に縦型に持ち替えその中に右手でたてにしまい込みベルトで軽く固定しました。


 そしてミリタリーリュックのメインコンパートメントを閉じて天蓋部分を固定すると右手でミリタリーリュックのサイドハンドルを持ち直しました。



「急な訪問ほうもんにもかかわらず、お付き合いありがとうがございました」とお父さまが真剣な表情で口調は生真面目なまま深々とお辞儀をしたので、私もそれにならいます。


「ありがとうございました、これからよろしくお願いします」と私も深々と頭を下げながらしっかりとした口調で表情は敢えてそのままでいったのでした。


「では、美空のことを改めてよろしくお願いします」と静かな口調に表情は柔らかめでおっしゃるとお父さまは課長室を右側の扉を引いて退出しました。


 私もそれに続き退出し、課長室の扉をそっと閉めていったのでした。



 帰りに車に乗る前に車とバイクを見かけたお父様が、これはいいものだなと説明をしてくださいました。


 ツーストと思われるエンジン音がしていたバイクが黒に赤い稲妻のストライプカラーで綺麗に磨き上げられておりそれはホンダ NS50F-Hというバイクで、太く高いエンジン音を響かせていたのは艶っぽいオレンジ色で強みのあるメタリックカラーのランボルギーニ・ガヤルドLP570-4 スーパーレジェーラとのことでした。


 元々あまり車やバイクに興味きょうみのない私ですが、車やバイク好きのお父さまとお話したくて、知識だけが後付けで付いて行ったのでした。

 

 車に乗る前に八課の場所を、スマートフォンに登録しました。


 これでいつでも八課には行けるようになるはずです。



第0-3話へ

--------------------《対応データ》--------------------

※この作品はフィクションです実在の人物や団体、

 ブランドなどとは関係ありません。


NS50F-H:型番の-Hは水素エンジンを示すHです。

     50ccの水素動力エンジンであることを示しています。

     実はかなりチューニングしてあるが、外側からは分からないのです。

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