第8-02話 警戒線上

2035/09/25 17:30 検非違使けびいし神戸分署仮八課棟第七班班室 班長除


━━━━━《美空みそら視点》━━━━━


 副課長は「斯波しばの代わりに指示を出そう。班を二つに分けて待機班と機動捜査班とする。待機班には風祭かざまつり隊員、折神おりがみ隊員、周防すおう隊員、高木たかぎ隊員。機動捜査班に長良ながら副長、神無月かんなづき隊員、温羅うら隊員。車は各自使用を認めたいところだが、あえて検非違使仕様のバン二台とする。既に斯波が一台使って行ってしまっているので、待機班は出動の際に予備車両の使用を認める」とおっしゃいました。


 さらに追加で「待機班はAED(自動体外式除細動器)や各種治療キットを一通り揃えていつでも出撃できるように待機する事」ともおっしゃいました。


「機動捜査班は、フル装備で事に臨んでくれ、出て来るあやかしはすべて駆除、結界の張り直しが必要なところは、斯波が踏み込んでないか確認してから結界を張りなおしてくれ。もし斯波が踏み込んでいるようなら、連絡をその場からよこしてくれ待機班を急行させる、くれぐれも連絡を怠らないように! 以上」とおっしゃったのでした。


「フル装備だそうだが、大丈夫か二人とも」と長良副長がおっしゃいました。


「一分ほど時間をください」と私と温羅さんの声がハモリました。


 短刀を懐に入れ、右手で重いほうのHK33SG1を持ち、左手で軽いほうのVFC VR16 SABER SD AEGを持ちHMD-弐型と全てリンクさせました。


 また右側タイッシュホルスターにG55-Gen7、左側のタイッシュホルスターにHK45を持ちます。


 また背中にM-25IAWSを背負った状態にします。そして「オッケーです」といいます。



 隣でも似たような作業が行われていました。


 いつもの装備の上からM-8A2のフル装備にHMD-弐型と全てリンクさせ、その予備弾倉のベルトマガジンホルダーを肩掛けに背負しょった温羅さんが「オッケー!」とおっしゃったのが私とほぼ同時でした。



2035/09/25 17:34 検非違使神戸分署仮八課棟隣接車両庫 神無月・他二人


「二人とも乗り込んだら合図をくれ!」と副長の長良さんがおっしゃいました。


「いつものルートなら表ルートのはずだ。裏ルートとは考えにくい!」ともおっしゃいます。


 私と温羅さんは、車両に乗り込み「ロックお任せします」というと扉をオートで閉めてドアをフルロックして「こちら副長、出ます」と長良さんがおっしゃいました。


 珍しくサイレントを鳴らしながら赤色せきしょく回転灯を付け疾走する検非違使仕様のバンに乗っているなと思いました。


 しかし感慨にふけっている暇はないのです。


 温羅さんと班長が通ったと思われるところの割り出しを後席に乗りながら、警戒線の引いてある専用の地図を見ながら割り出していきます。


 十五時三十分以降の足取りが分からなくなっているので中腹と答えは出せますが、完全ではないので一から調べなおさねばならないのでした。



2035/09/25 17:56 表六甲ドライブウェイ真ん中辺り


「こちら長良、班長の乗っていたバンを発見! 周囲の山道を確認する!」とおっしゃいました。赤色灯はそのままにし、サイレンだけは消したようでした。


 私たちもすぐに降り、地図と照らし合わせながら山道のチェックに入りました。


 そこからは順調に結界が張られていました。


 しかしそこから数本行った先の山道に、人が通ったと思われる足跡の痕跡を確認しました。


 ただし、その先からただならぬ気配を察した私が「何かいますよ」といってセーフティーを解除しました。


 そして大型の狼としか表現できないものが、現れたのです。


 妖であろうとは思われました。


「牽制します」というと発砲を開始しました。


 数発をヒットさせますが相手のほうが速く、茂みの中に入られて射線を遮られてしまいます。


 空薬莢は、ベルトの上に締めてあるダンプマガジンに流れ込んでいきます。


「副長白兵戦のほうが有利です。銃では射界に制限があります!」といいます。


「広ければライフルでもいいのですが……」といっている間に距離を詰められてしまいます。


 下がるに下がれないので、温羅さんと並行で二人並んでなみなみと銀の銃弾を叩き込むのです。


「分かった斬り込む」と長良副長が丁度こちらの正面に飛び出してきてあわやという所に斬りつけに行きました。

 上段から振りかぶって一撃目がまともに妖の頭に入り、一撃で妖の姿がき消えました。


「幻影か!」と長良副長が叫びました。


「幻影でも対象に殺意があればこちらは喰われてしまいます。その判断がかなり微妙になりますが」と追加でいいました。


「よしシグナルをここに設置しよう、温羅さん頼む」と長良副長がおっしゃいました。


「こちら長良! 待機班通信どうぞ、シグナルを設置して置いた班長はどうやらこの先らしい。こちらも進入する。後は任せる風祭隊員」とおっしゃると「さて我々は班長を追おう」とさらにおっしゃって山道を進んで行くのでした。





2035/09/25 時間不明 六甲山のとある山道


━━━━━《斯波しば視点》━━━━━


「流石に腹ごしらえをしたまでは良かったが、少し日が暮れてきたような気がするな若干日が落ちたような気が……」と一人ごこちに独り言を呟くと立ち上がったのでした。


 崖は戻るなという事なのか、それともただの幻影か……。


 石を投げると“カンコンカラコロコロコロ……”と落ちていく音がしました。


 あーこりゃ穴だわ……。と思い進む決心をしました。


 進む以外に方法が無いからともいいますが、待つという選択肢は無かったのでした。


 一人出てきてしまったから、行方不明になって、今頃は副課長の怒りが炸裂してるころだろうなとも思われました。


 それか皆に心配かけてるかもしれんな。


 という事だけは一瞬考えがぎりましたが、今はそれどころでは無かったのです。


 進むたびに山道の勾配こうばいがきつくなっていき、こんなに勾配きつかったっけ? と思うほどにきつくなりましたが不思議と歩けています。


 幻覚か事実か分からなくなりながら登っていきました。


 すでに六甲山であれば山頂に届いてもいいくらいの距離を上がってきています。


 それは汗となり疲れとなり。


 オカシイことはわかっていますが、登らないと転げ落ちそうな坂が背後にあるのです。


 登らなければ、とそう本能がささやくのです。



第8-03話へ

--------------------《対応データ》--------------------

※この作品はフィクションです実在の人物や団体、

 ブランドなどとは関係ありません。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る