第0-25話 身辺警護:香織、モデルになる

━━━━━《由良ゆら視点》━━━━━


 普段撮られることの少ない私は、あまり写真自体を撮ってもらうことがありませんでした。


 ただ今日、これからの時間は違います。


 数百枚からの写真を、撮られなければいけないのです。


 メイクアップアーティストさんからメイクをされ、少々わかりにくくなるようにメイクを施してもらいます。


 そしてヘアアレンジです、今日の主役はドレスたちなのです。


 なのでロングヘアからアップスタイルへ変更してもらいます。


 編み込みカチューシャアップスタイルへ変更していただけました。


 髪量が多いので、カチューシャの様にするアップスタイルでした。


 小道具も、たくさん用意していただけました。


 カラフルな扇やデザインの良いフェイクブック、仮面、カラフルなーレースのベール等でした。


 日傘などもありましたが、ドレスが写らなくなってしまうということで、パスさせていただきました。


 一番最初はローブ・デコルテ型のドレスであったため、首元を彩るアクセサリーも併用し、あくまでもアクセサリーはサブメインがドレスであるため、ドレスが引き立つようなアクセサリーを着けます。



 写真を撮られる際は、あくまでもドレスが主になる様にでも顔はしっかり隠してカメラマンさんに身をゆだねます。


 四方位から写し、斜めからや、あおりでも数枚撮られました。その際も顔を写さないように、気を使っていただけてはいますが、自身でもしっかりとガードします。


 ただし、不自然にならない程度に隠すのです。


 照明さんも、演出光を巧みに使っていただけていました。


 撮影は室内でしたが、しっかりとした撮影用の機材や、着替える場所を備えており、私が今までに見た事の無いような機材も、たくさんありました。


 そうして着替えては、髪型やアクセサリーなどを変え、撮られ着替えただけでも、二十数着は着替えたことは覚えています。


 小物もコロコロと変え、デザインやドレスが引き立つような小物も使い様々な角度から写真を撮られていったのでした。


 本当はタフな私ですので、この程度では疲れた内には入らないのです。


 しかし、温羅うら香織かおりとしては未経験の出来事で、初めてモデルをするということがあります。


 なので少し疲れたふうを、演出させていただきます。


 すると、少し休憩がいただけました。


 目まぐるしく撮影が進んでいくので、みんなと話す機会もあまりないわけでした。


「大丈夫ですか?」と彩名あやなさんから聞かれました。


「少し疲れただけですから、大丈夫です」と答えておきます。


 実際のところこの前とメンバーは変わらないのですが、事情のすべてを知っているのは美空みそらさんだけでありました。


 今のところ異常は無い様子でした。身辺警護をしているはずなのですが、逆に身辺警護をされているような感じもあります。


 魔物の気配も近くには感じられず、半魔は魔物ほど強い気配を出しませんから見つけるのが厄介なわけですが致し方ありませんでした。


 そして休憩の時間が過ぎてゆきました。


 写真撮影の再開です。


 また目まぐるしい時間が始まりました。


 とはいっても、その目まぐるしい時間に少しづつ体が順応じゅんのうしてきているようでした。


 そして、もう十数着のドレスの撮影が終わり、着替え終わると、「代役のお仕事お疲れ様でした。お疲れになりませんでしたか?」と店長さんがやって来られました。


「少し疲れてはいますが、大丈夫です」と答えます。


 メイクも普通のものに変え、着替え終わった後でした。


「ここまでやってくださいましたので、五パーセントと言わずお持ち帰りください」と、すでにパッケージに詰めてあるドレスを渡されました。


「お付き合いくださいました、皆さまにも、粗品ではございますが、ちょっとしたアクセサリーをお渡ししております。本日は本当にありがとうございました」といわれ、「皆様の貴重なお時間をいただきましたこと、深くおび申し上げます」と深く一礼されたのでした。



「たいしたことができているかどうか分りません。カメラマンの方やメイクの方、ヘアスタイルを整えてくださった方や、照明やそのほか機材の方の力あってできたことですから」と答えました。


「後はホームページの編集をされる方のお仕事ですし」と続けたのです。



 そしてお店を後にしたときに、みんなで話し合いました。


 この後の時間の過ごし方でした。みんなそれなりに、荷物の大小はあれども持っています。


 そんな中で私が、一番大荷物を抱えてもいました。


「今日はみんなを巻き込んじゃったわね、ごめんね」といいました。


「流石にこの時間からですとお夕食の時間に被ってしまいますわ」と加奈子かなこさんがいいます。


 時間は確かに午後六半時を指していました。


「今日は、社会見学ができたと思って諦めますか」とあかねさんがいわれました。


「そうですね、プロの方々の貴重な動きを見せていただけましたし」と静香しずかさんもいわれたのでした。


「アクセサリーもいただけましたし」と美空さんがつなげました。


「今日はJR元町の駅で解散しましょうか?」と彩名さんが言われます。


 その時、一瞬だけ半魔の気配がしたのです。


 一瞬、立ち止まると気配がしたその方向へ視線を向けましたが、すでに雑踏ざっとうの中でした。


「どうしました? 何かありましたか?」と彩名さんに聞かれてしまいました。


「一瞬誰かに似た人を、見かけたような気がしたの」と答えごまかします。


「よくあることですわ」と加奈子さんがいわれ事無きを得ました。


 しっかりと美空さんを、身辺警護して守らねばならないと改めて思ったのでした。


 明らかに半魔の気配だったのです。


 視線こそつかめませんでしたが、多分私たちの中の誰かを狙ったとしか、思えないタイミングでした。


 この件を即、伝えるべくメールを打とうと思ったのですが、まだ別れてない一緒に歩いているみんなを巻き込むわけにはいきませんでした。


 さっきよりもより意識を集中し、周囲を探ります。


 でもみんなとの会話には、しっかりとついて行きます。


 ほとんど人と区別が付きませんが、半魔に追跡されていることがわかります。


 どこにいるかまでは分からない、隠形おんぎょうのうまい半魔のようです。


 しかもこの人ごみの中、付かず離れず付いてきます。


 明らかに手練れと思われます。


 仕方ないので由良専用発信機のシグナルを起こすことにしました。


 シグナルはイエローで起こします。


 音が鳴るわけではなく信号が発信されるだけなのですが、警戒信号であることは確かです。


 三段階に分かれておりグリーンが通常、イエローは警戒ライン、レッドは危険! 助けを呼ぶ際のシグナルです。


 普段はグリーンであるので、イエローは緊急性を要し尚且なおかつ信号でしか危険を発信できない状況であるということでした。


 つまり、まだ周囲に一般人が居て事情を知らない人が多く居るという状況の際によく使われるモノでした。


 結局JR元町まで来てしまいました。


 まだ半魔の気配はあります。


 人ごみにうまく隠れこちらからの察知を、気配を断つことでうまく隠れようとしていることがうかがえました。


 電車に乗ってしまえば、多分気づくのは容易なはずです。


 えて袋小路ふくろこうじに誘い込むことにします。


 電車という狭い空間におびき寄せてみるのです。



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※この作品はフィクションです実在の人物や団体、

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