第0-17話 身辺警護:不良
━━━━━《由良視点》━━━━━
その情報がもたらされたのは、メールからでした。
しかも明朝のことです。
まだ
国際電子犯罪シンジケートの構成員が、捕まっていないというものでした。
そのため身辺警護は、まだ続行ということでした。
美空嬢は、ヤツが最後に目を付けたターゲットだから、ということでした。
確かに、追い詰められた犯罪者が最後に取る手段は、大体分かっています。
――直接襲いに来る――その可能性は、否定できないのでした。
しかも構成員は素性不明な者まで含めると、十数人単位になります。
捕らえる必要が無く、射殺してしまっていいのなら、守るのは比較的簡単なのです。
敵対象が魔物の場合なら射殺は簡単なのです。
しかしヒトの場合極限状態においてのみ、許される判断だったのです。
そういう状況が継続している以上、合同捜査班もまだ解体できないようでした。
顔の分かっている者だけでも、送れと言うしか無かったのですが、こちらに着信させるわけにはいけませんでした。
あくまでも密集させて、顔がギリギリ分かる程度に、圧縮された写真なら、大丈夫なはずです。
こちらのスマホは、あくまでも表の身分擬装用のモノなのですから。
ここからの情報漏れは、最小限にしなくてはいけません。
緊急用のシグナル発信機を、SOS機能代わりに持ち歩くしか、手がありませんでした。
本当に怖いのは、素性がバレた場合です。
美空嬢はともかく、私の場合何がどうなってもおかしくありませんでした。
対人戦用の術が無い訳ではありませんが、数が少ない上に詠唱に時間を喰われるのです。
本来なら、隠形を張ってから行うような術式でした。
今回は、スタンガンのパワーアップ版で対応するしか無さそうでした。
しかし、相手に奪われた際は諸刃の刃になりかねません。
あとは最後の手段、五鈷鈴でした。得物と言えるのはそれ位です。
あとは独自で体得した、体術を中心に組み立てた古流武術でした。
他にも古流の剣術などを多少覚えてはいますが、付け焼刃にしかなりません。
他にはタイムラグゼロの大技などもありますが、火力が強すぎてヒト相手には使えないのが欠点です。
色々な事を、考えながら寝ました。
守り切れなかった時の、ことやその後のことなど様々でした。
おかげで、朝は睡眠不足になりそうでした。
「おはようございます!」と布団を跳ね上体を起こした、いつも元気な美空嬢でした。
近くに誰かが、居るのといないのでは、大違いの様です。
それが、これから仲間になる。
という者なら特にかも知れませんが。
「朝から元気がないようですが、いかがしましたか?」と護衛対象から、聞かれてしまうくらい朝の私はいつもより元気が無かったようです。
「んー、今朝ちょっとね」とメールの内容を少し話す事にしたのです。
「まだ捕まってない、構成員がいるみたいなんだ。だからいつもより密にね」ということにしたのでした。
朝食までにはテンションを上げていつもの私らしくしておかなければ、
しかし、朝になって見ると私の
お迎えが、来ていたのでした。
高級ワンボックスカーによる、送迎が着いたのです。
しかもドライバーは、変装により姿を大きく変えた長良さんでした。
白髪に変えしっかりとした変装にしてありますが、気配で大体分かるのです。
助手席には佐須雅さんが乗っていました。
しかもサードシートには、折神さんも乗っていたのです。
さらにはこの車両は、一度だけ課長に見せてもらったことのある。
防弾車両だったものでした。
窓ガラスはもちろん、タイヤまで防弾だという話を聞いておりました。
「この車両で、朝の登校時と、夕方の帰宅時は、しっかり護衛するからな
私の睡眠時間を返せーと、いいたくなりましたが、
セカンドシートの右奥になぜか私、左側に美空嬢が乗ります。
「
「それで頼むよ」とハンドルを切り返しながら、“義之兄”から簡潔な返事がきました。
「番号はいつものでいいの?」と私がさらに聞くと「そこらはいつものままだな、特に変えて無いよ。フリーの時の連絡先はそのままだ」という答えが返ってきました。
「この仕事が終わったら、スマホのキャリア変えるしね、丁度よい時に重なったもんだ」と運転を
「にしても良く化けたものだな、女の子は
「
「今朝方の、急なメールの件もあるしな、学校で少し休むといい」と華麗に左ターンをキメながらいったのでした。
「寝れる時間を、考えたつもりだが」と――続けたのです。
「あのメールのおかげでいい睡眠不足よ」と脚を組み替えながら、答える事にしたのでした。
「もうちょっと時間考えて、メール飛ばしてよね」ということにしました。
「こっちも眠い中、強制捜査だったんだぜ、まだこっちは寝てねぇ」という返答が帰ったのでした。
「フッ。本当に兄妹の会話みたいだぞ」と折神さんも大きな
「ひょっとして、男性陣はみんな、昨日の夜は強制捜査だった、ってわけ?」と聞くことにしたのです。
「昨日は、大捕り物だったんだよ。斯波班長さんは、今頃は仮眠室のはずなんだが」
と折神さんが、いったのでした。
「六課の風祭主任は疲労で倒れた、二・三日要安静って事らしいぞ。最もそれを見たのは、佐須雅さんだったとは思うが。最もあの大技じゃな」と長良さんが学校前に着けるとそのようにいったのです。
「ってことは、昼間は私と斯波班長位しか、起きている人はいない。ってところなのかな」と答えることにしました。
「そうなるな、いや例外は佐須雅さんくらいか。佐須雅さんなら起きていられると思うが」と折神さんはまたもや、欠伸をしながらいったのでした。
「照れますね」と左手で頭をかきながら佐須雅さんが、いってのけたのでした。
「送ってくださいまして、ありがとうございます」と美空さんがいって、高級ワンボックスカーから降りたのでした。
「送ってくれてありがとう、お兄ちゃん」と私も笑顔でいって、車両から降りることにします。
まだ風紀委員も、半分程しか揃って無いような状況でした、先生はもちろんいますので管理はなされていますが。
そこに歩いて行くのでした。
「おはようございます!」と美空さんが元気にいって通過して行きます。
「おはようございます」と少し控えめにいって私も通過することにします。
「おはよう」と先生が答えました。
「おはようございます」と、不揃いの風紀委員が答えました。
初日と違って、絡んでくる風紀委員はいませんでした。
そのまま特に問題なく、教室までには到着しました。
がそこには数人の、いってみれば不良が待ち構えていたのです。
この眠いのに……少し
「アンタかい
「死にたくなかったら、席を開けな、こちらとらガキに付き合ってるほど暇じゃねえんだ。私に静かな睡眠をよこすか? 静かなる死をもらうかどっちだい?」と反論したのでした、すでにイライラが八十パーセントを超えていたのでした。
そこに美空嬢も口を
「アンタもガキじゃないのか? ウケるー」と馬鹿にしたやつが一人、一番外側わらい転げてくれたので、腹を
「グホッ……ゴホッ」といって転げまわります。
そのまま、足を捕まえようとしてきたのでそのまま
「これで一人、まだやるのかい? 今の私に
「ウオォォォォォッ」と二人同時に、前から突っ込んできます。
瞬間に空気投げを二人同時に打ちました。
そのまま、どう投げられたのかも、わからずに二人が背中から後ろに飛ばされたのでした。
しこたま背中を強く打ち付け動けなくなっていました。
「あと三人、まだくるのかい?」と体を微動もさせずその場でいいました。
「
「これでも古流武術の
隣に美空さんが並びました、「これで二対三まだやるのかな? 少しくらいなら。大切な人を守る位なら、力の解放は許して下さると思うんですよね」とそして静かにいったのです。
「やめとけってアイツは底が知れないんだ、分が悪いって」と内紛が始まった様でした。
「今なら倒れている仲間を、ほおって逃げたって言わないでやるよ」と私が言葉で止めを刺しました。
「覚えてやがれー」というと倒れている仲間を抱えて逃げ出していきました。
「覚えているものか……こちらとら眠いのに」といって自席に座りタオルで枕を創ると静かに休み始めたのでした。
「十五分くらいしたら、勝手に起きると思う。大丈夫」と私はいうと静かに寝息を立てだしたのでした。
十五分もすると教室内が静かに
これも秘術のうちの一つなのですが、何食わぬ顔で起きると「長かった?」と美空さんに聞きました。
「丁度言われた通り、ピッタリ十五分ですよ」と答えを返されたのでした。
「その間に特に何事も起きなかった?」と聞く事にしました。
「えぇ特に何事も、さっきのが女子グループの、仕切りをやってるのですが、アレに関わってない生徒が、半数はいるようで締めきって無い、のが実情ですね。私も関わって無いので……」といわれたのでした。
「男子も似たようなものだと思いますよ」とも続けられたのでした。
━━━━━《佐須雅視点》━━━━━
その頃男性陣は学校から少し離れた、ファーストフード店で涼みながら休憩を取っていました。
「由良さん
「物静かな学生さんに見えましたが?」と私が感じた事実を口にします。
「佐須雅さんはまだ女子の見分け方が甘いようですね、あの子はやるとなったら力の出し惜しみはしないでしょうね」と折神さんも頷きながらいいました。
「特に警護対象が居る場面で、手を抜いたのは見たことが無い」と長良さんがハンバーガーをモッシャモシャ食べながらいいました。
「あの子も強そうですけどもね。私の勘ですが」と付け加えました。
「かわいい子は、陰でそれなりの努力を、しているものさ」と折神さんも静かにコーヒーを飲みながらいったのでした。
「ヒト相手なら敵は少ないだろうな」とアイスコーヒーを頼んだ長良さんが氷をカラカラいわせながら答えました。
「我が妹ながら末恐ろしい……」とも付け加えます。
今は温羅義之さんなのでした。
「しかし最近の変装技術は、すげぇもんがあるな、特殊効果で一発だぜ」といわれたのです。
「それには同意です、まさかここまで変わるとは」と折神さんもびっくりの様です。
「保護者が必須と言う事でありますし、親は二親とも海外って事になっているからな、温羅家は……だから俺しか居ないわけだ。歳の離れた妹を持つと苦労するぜ」といわれたのでした。
「まぁ手帳創るのは直ぐだし、免許も直ぐにできるわけだが、所属はバレるけどな」
「とはいうモノの二時間で、できる方が凄いと思いますが」と私は返したのです。
「特殊な術があってこそ、の温羅兄妹だからな。俺も陰陽の方に適性はあるんだが、体動かしてる方が楽でいいから、取って無い訳だが」といわれるのでした。
「見鬼位なら術無しでもこなせるぜ……ハンドウェポン位ならどれでも扱えるしな」ともいわれました。
「さてみんな休憩は済んだか? 学校周囲の護衛に回ろうか! 裏から入ろうとしている馬鹿が居ないか、探すのが今日のお仕事その二だ。ウィルは各位置のモニタの画像を引っ張って確認してくれ」と言うと、食べ終わったトレーをゴミ箱に突っ込んで、トレーだけ引っ張り出しながら、いったのでした。
折神さんも無口でそれに続きます。
私も、タッパに残りを詰め込むと、ドリンクも空になったボトルに入れました。
ゴミだけをトレーに載せて、ワンショルダーにタッパとドリンクを詰めるとそのまま背負い、ゴミ箱に綺麗に入れるとトレーをゴミ箱の上において、車の方に向かいました。
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※この作品はフィクションです実在の人物や団体、
ブランドなどとは関係ありません。
兵法(ひょうほう):格闘術のこと、兵法(へいほう)ではありません。
なので生
あります。
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