第5-07話 光と闇

2035/08/29 17:50

「一班、四月一日わたぬき隊長へ目標の作戦高度とリンクした。狙撃位置に着けるまで作戦開始を遅らせてくれ」と斯波しば班長がおっしゃいました。


「今回の突入時刻は十八時五十九分だ。一秒でも遅れれば人が死ぬ。目標は半屋外になっている庭園で十九時からサバトをやるらしい。我々も遅れない様に現場入りせねばならん」と一班の四月一日隊長が、おっしゃいました。


「それに国税局査察部大阪支部の車両も、現場に案内せねばならん」とも、おっしゃいます。


「こちら七班長良ながら、大丈夫なんですかい? 国税局査察部大阪支部の面々は? こういう現場には慣れて無いでしょうに」と副長がヘリを操縦しながらおっしゃいました。


「案内し、護衛するのが我々の任務だ、それ以外は仕方なかろう」と四月一日隊長がおっしゃいました。


「それよりも、狙撃手は調整がついているか? 命を預けにゃならんからな、任したぞ。今回はS級スナイパーとA+級スナイパーらしいじゃないか、二人だけとはいえ心強い限りだ、いつもの六班にもそれほどの腕を持つスナイパーは居ないからなB+級やA級クラスだからな」とおっしゃいました。


 私は確かに、訓練ではA+級と判定されましたがそれはあくまで訓練での記録です。実戦での実践は別なもののように思えました。

 風祭かざまつり隊員の腕のほうがはるかに貴重なのです。実戦での経験もあり尚且なおかつS級ということもあります。


2035/08/29 18:55

「こちら長良、作戦位置に着けた。後部ハッチ開放する。狙撃手の二人は緊張せずにな、体を硬くしたら真面に撃てなくなるぜ。」と副長がおっしゃいました。


「左ドアガン用意よし、右ドアガン括りつけ急げ!」と斯波班長が温羅うらさんに叫びました。


「こちら長良、機体のブレは想定範囲内だ今日は無風に近い条件だな」とおっしゃいました。


「全員、命綱は付けたな?」と斯波班長がおっしゃいました。


「なんとなればヘリでも航空支援ができるぜ!」と副長がおっしゃいました。


「さすがに振り回すのは勘弁しろよ?」と斯波班長がおっしゃいました。


2035/08/29 18:57

「こちら四月一日現場到着、各員突入準備急げ!」と無線から、おっしゃる声が聞こえました。


2035/08/29 18:58

やっこさんはまだ気付いて無いようだ。迅速に動け! 音はたてるなよ気付かれたら逃げられちまう!」と無線に囁いているようでした。


「私兵を飼ってるって噂だが大丈夫なのか?」と斯波班長がおっしゃいました。


「空自E-767-フォーゼロフォーゼロより検非違使けびいしゼロワンへ、周辺空域にエネミーフォーセズなし」と空自の早期警戒管制機そうきけいかいかんせいきより入電がありました。


「検非違使ゼロワンより空自E-767-フォーゼロフォーゼロへ、サンクス、これより作戦に入る」と副長がおっしゃいました。


2035/08/29 18:59

「突入!!」という、四月一日班長がおっしゃいました。


 作戦が開始されたのです。

 私も、スコープを覗き込みます。

 庭に盛大な宴会場が設置してあり、その中心部に祭壇らしきピラミッド形の椅子が設置されてありました。

 その上には、人なのかどうか分からないくらい肥大した様な大きな人間? が居るのです、周囲への指示を行っているようで手を比較的大きく振って周囲の丈の短いチャイナ服を着た三人程の女性に指示を行っているようでした。

 鎖で繋がれた、少女と見紛うくらいの学制服を着た女の子が、四人程離れた感覚で鎖で繋がれ、周囲に大人の玩具と思わしき物体が並んでいます。


「人質と思わしき少女たちを一番北側のさくに発見、視界に入り次第確保されたし。皆ぐったりしている模様! 七班狙撃手より」と無線に乗せます。


「一班了解」と短いコールが入ります。

「二班了解、一班はマルサ大阪支部のバックアップに、少女の回収は二班で行う」という二班班長衣笠きぬがささんがおっしゃいました。


2035/08/29 19:00

「こちらマルサ大阪四班だ、特集ニュースの人員を全員検挙した。彼らからは麻薬のような香りもする。後でチェックに回す」と無線で入電がありました。


2035/08/29 19:01

 遂に庭園に、検非違使一班四月一日班長たちの姿とマルサ大阪の一班と二班が姿を現し、少し遅れて検非違使二班が北側から庭園に入ってくるのが見えました。


 真ん中の大柄な人が立ちあがり、何か文句を言っているようでした。

 その瞬間でした。

 その人物の頭の上に召喚陣が開いたのです。


 バフォメットに似た悪魔が召喚されたのでした。

 流石に大物だったようで、周囲の味方に動揺が走ります。


 こちらは容赦なく、一射目を頭部、狙いは眼です。

 そこなら装甲も何もないハズです。

 無風な上に、対象が比較的大きいのが災いしたようで、対象の右目に命中クリーンヒットしました。


 不意打ちの一撃です、対象が右目を押さえ若干ふらつきます。

 そこにもう一つ眼を狙った、狙撃が行われたのです。

 風祭かざまつり隊員の狙撃です。

 そちらも確実に命中クリーンヒットになりました。


 召喚された奴が、両目を押さえて、武器の大鎌を落とし動けなくなりました。

 さらに風祭隊員が額を狙って狙撃を行い命中クリーンヒットさせました。

 我々の使っている銃弾はただの銀弾では無く、刻印銀弾と呼ばれる刻印入りのコーティングされた特殊な銀弾なのです。

 刻印が対象に当たった瞬間に効果を発揮するタイプの新しい弾なのでした。

 私の使っている刻印も風祭隊員の使っている刻印も最初に量産され始めた破という刻印銀弾です。


 対象がしゃがみ込んでいるので一班が集中攻撃を開始します。

 術や至近距離から銀弾が叩き込まれて対象があっという間に弱っていくのが見えます。


 他にないか確認すると、空中からこちらに向かって一陣風と共に蝙蝠こうもりの群れが、飛んでくるのが見えました。


 狙撃を邪魔されるわけには、いかないのです。

 HK33SG/1を連射フルオートモードに切り替えると「地上は任せました、風祭隊員」と言って対空目標を次々に落とし始めました。

 連射した成果もあって、空中目標はいなくなりました。

 一マガジン使い切ったので直ぐに二マガジン目に切り替えセットします。


 その間にも、風祭隊員は召喚陣を開こうとした瞬間に、召喚陣目掛けて刻印銀弾破を撃ち込み、面になった瞬間の召喚陣を叩き壊す、という離れ業をやっていました。

 弾数の少ないPSG-1ならではの方法です。


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