第1-04話 九龍という情報

━━━━━《斯波しば視点》━━━━━


 昼食後のデザートを終え、お茶に入ったところでした。


 先程の店員さんが、恰幅かっぷくの良い、黄色で統一された豪奢ごうしゃな服装をした方を連れてきていました。


 早速、風祭かざまつりさんが席を離れその方のところに行って、目上の方にするような流暢りゅうちょう広東語かんとんごでご挨拶を行い、その方と軽い談笑を始めたのでした。


 言語が全て広東語であるため内容こそ分かりませんが、その黄色い豪奢な衣服の方は風祭さんをいたく気に入ってらっしゃった様でした。


 その方の会話に笑みが入るからでした。


 雰囲気でかなりいい線の会話をされている事が分かります。


 そして、風祭さんが本題ことこちらのテーブルを手のひらで指すと、紹介したいのですがよろしいでしょうかといったようでした。


 すると「お客人がいらっしゃっていると聞いておりましたので、紹介してほしい」とその方がようやく日本語での会話にのぞまれたようでした。


 そして風祭さんがまず、私の事を「検非違使けびいしのこの地区の担当の一人で第七班の班長をしている斯波しばといいます」といわれました。


 と私の紹介をされたので、私が立ち上がり会釈をしました。


 そして「その隣は兵庫県警の捜査一課に努めている刑事さんで折神おりがみと言います」と伝えられました。


 と折神さんの事を紹介したので、折神さんも立ち上がって会釈をする事になったのでした。


 そして「本日は折り入って頼みがあるのですがお話を聞いていただけませんでしょうか?」と風祭さんが話されると椅子が二脚新たに用意され、「ワンさんどうぞ」といって先の店員さんが用意した椅子に、王さんが座るとその店員さんも王さんの隣の席に座られたのでした。



「客人をもてなすので、二階は全て貸し切りで扱わせてもらっております」とラウさんがいわれました。


「今日はどのようなご用向きで?」と王さんが言ったのを皮切りに、風祭さんが富国警備保障の話をしだしたのでした。


 結構しっかりと聞いていた王さんが、少し難しい顔をしながら「富国警備保障とは我々にとっても商売敵なのです、我々で知っていることならお話ししましょう。何なりと聞いてください」とおっしゃいました。


 すると風祭さんがまず聞いたのは母体の話でした、「中国系企業としかわからないのですが、どのような企業体なのでしょうか?」と聞かれたのでした。


 すると王さんが「ここから先は少し闇が深くなりますが、大丈夫でしょうか」と案に裏の話をするといったのでした。


「私は構いません、それをお聞きするために参ったのですから」と私が答え、折神さんもうなづき、風祭さんも「お願いします」といったのでした。


 そして王さんが語られたのは「中華系企業体は九つのカラーに別れ今はそれぞれが見えない抗争をしている」のであるといったのでした。


 そして「富国警備保障はその中でも、最も危険度が高い企業体の集団である黒龍配下の企業体である」と申されたのです。


「武力闘争をいとわず、相手が誰であれ噛みつくその姿から一番の武闘派集団と呼ばれている」といわれました。


 そして「我々穏健派とは違う道のりを歩んでいる」とおっしゃいました。


 すると風祭さんが「穏健派は何派閥あるのですか?」と聞いたのでした。


「穏健派は、白龍・水龍・黄龍・緑龍の四つだけで他は限りなく武闘派に近いか、全くの無干渉を貫いているかで、無干渉派閥は紫龍・橙龍で武闘派が黒龍・青龍・赤龍で九龍クーロンと呼ばれているのです」といわれたのでした。


「我々黄龍もやられれば報復は考えたりするのですが、今までに報復はすることは無く考えだけで終わっているのです」といわれたのでした。


「もちろん、九龍に参加していない、健全な企業体もあるのです」とも答え、全てがそうでないという答えを示されたのでした。


 そしてこうも続けられたのです。


「黒龍は武器密売組織が元になっています。その辺りを突けば少しはほころびができるのではないでしょうか? しかし、黒龍はそれだけではありませんありとあらゆる悪に精通しているのです」ともいわれたのでした。


「我々黄龍は人材派遣業がベースになっていますので、人ととのつながりをとても大切にします。これを機会に検非違使さんとも仲良くなれたらと思っています」といわれました。


「誠意はいただきました。それに答えられるように努力は惜しみません」と私が答えました。


 それを王さんが聞くと「ウチの門人であるラウを検非違使との間の協力者にしましょう」と更なる配慮はいりょはかられたのでした。


「そこまでしていただけるとは、思っても居ませんでした」と折神さんが素直な気持ちをべたのでした。


「協力者にも席は必要でしょうから、協力捜査チーム内に一席を設けましょう」と協力捜査チームを副長として預かる折紙さんがいわれたのでした。


 因みに、協力捜査チームの長は副課長でした。八課内で、一番対外的に活発な行動を行って居たので課長から推薦されたということだったのです。


 捜査協力詰め所があるのは、検非違使のビルの四階でした。


 新設されるにあたって、一部のスペースを片付けた際にそこしか空いて無かったからでした。


「必要なら、道具も用意しましょう」と暗にですが隠して、折神さんが言われたのでした。


 この場合の道具とは、銀弾とそれを射出できる武器の事を指しました。


 共通口径で、尚且つ取り回しやすいものだと考えられました。


「普段は七班の所属で構いませんか?」と折神さんから聞かれたので、「課長が承認すればその様になる」と答えることにしました。


「ラウさん、得物は何がお得意ですか?」と折神さんがズバリその物を聞きに入りました。


「青龍刀と短機関銃サブマシンガンなら扱えます。青龍刀は自前のものがありますので」と、ラウさんがそれに答えられたのでした。


「火器はこちらで用意させましょう」といわれ、課長にメールを送信したのでした。


 課長のほうでは協力者が七班所属になるのも、火器の配備もあっさりと許可が下りました。


 異例の早さです。


 しかも火器のほうは、神戸分署に配備されたばかりの四十五口径のM11が用意されることになったのでした。


 少々旧式ですが威力は折紙付きです。その理由は四十五口径規格銀弾が少し余ってきているという理由からでした。四十五口径は対人相手ならストッピングパワーに利益がでるのですが、対妖魔相手だと九ミリ口径規格銀弾より少し威力がある程度で弾数の件から考えると、九ミリのほうが継戦能力に優れているという理由からあまり使われなくなってきてはいるのでした。


 使ってない訳ではないが使用者が少なかったのです。


「えらく早いな」と私が正直な感想を口にしました。


 折神さんは、副課長にとっては隠し玉に相当する若手の人物ですがかなり気に入られているようでした。



第1-05話へ

--------------------《対応データ》--------------------

※この作品はフィクションです実在の人物や団体、

 ブランドなどとは関係ありません。


M11:四十五口径か九ミリかどちらかを選択できる短機関銃です。検非違使の、神戸分署八課で採用したのは四十五口径のほうでした。

 弾数より、も威力を重視した決断と言えました。

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