第0-12話 身辺警護:学校編:攻撃

━━━━━《美空視点》━━━━━


 授業のほうは問題なく終わり、部活の時間がやってきました。


 今日は体育は無かったので着替える必要は無かったのです。


 休み時間には、女子がこちらの会話に混じりに来たりしました。


 それでも事件の話題などはおくびにも出さなかったので、当たり障りのない話題になって行き普通の会話で済ませていたのです。


 視線に出て来てもらっても困りますし、そうした場合の対処方法が分からないのでえてその話題をけていたのでした。


 妖魔アヤカシの本体がどこかにある以上、霊弓が効くかも知れませんが、いたずらに対象の意識を自身だけに向けるのもどうかという考えもあり、やっていなかったのです。



 逆にうわさ好きな子の周りには、そこそこ人垣ひとがきができており事件の噂をばらいているようでした。


 放課後になって、さらにエキスパートしたような感じでした。


 噂の中に聞きのがせない単語がありました。


 それはヒソヒソ声で無く堂々と語っていたためハッキリと聞こえたのですが『狙われているのは、髪の長い女子中高生』といったのです。


 その情報は初めて聞いたものだったので、皆少しざわつきました。


 髪が長いに該当する子がこのクラスは少々多くて、私や転校生の温羅さんを含めると六名は居たのです。


 それは次に狙われるのは自分かも知れない、と思わされる一言でそれはざわつきを加速させる要因になったのでした。


 そのうち二人はすでに部活に行った後でしたからこの一言は聞いていなかったわけですが、確か吹奏楽部の子と華道部の加奈子ちゃんだと思いました。


 つまり噂好きの子は「髪の短い私は絶対に狙われないよ!」とも大きい声で断定的にきっぱりと言い切りました。


 逆にいえばその宣言がしたくて、噂を広めていた様にも聞こえてしまいます。



 その瞬間、視線の気配が再発しました。但し今度は私を見ている訳ではありませんでした、『髪の長い女子中高生』の言葉に反応した様な感覚でした。


 周囲に人が少ないのをいいことに「香織さん視線の気配があります、但し私を見ている訳ではありません」と静かに帰り支度をしながら伝えました。



不味まずいな、ターゲットを変えたか。妖魔の注意を引きつけられないかな?」と香織さんが静かに明らかに不味いといった表情でおっしゃいました。


「やれない事はありませんが、その後の保証はできないです。けれども、まず効くかどうかわかりませんし……」と私が静かにささやきます。


「被害が拡大するのを防ぐのも、仕事の一環いっかんなわけだが。撃てる手があるならやって見てくれないかな、その後こちらに向かってくるようなら対処しよう」と香織さんが冷静な表情を作り出すと静かにはっきりとした口調でおっしゃいました。



「ここではどちらにせよ目立ちます、一旦廊下に出た方がいいでしょう、妖魔とおぼしき気配は、廊下ろうかの監視カメラに居ますから」と私が静かに囁いたあと、「トイレに行きます」と、私が普通の声でいいました。


 香織さんも「私も一緒に行こう」と普通の声でいって、立ちあがりました。



 噂話をしている子やその周囲の子は、この気配には気が付かないようでした。


 トイレに行くフリをして廊下に出て、教室から離れ十メートルほどその妖魔から距離を離します。


 周囲に誰もいないのを確認して、香織さんに伝えました。


霊弓れいきゅうという術を使います。集中する間、無防備むぼうびになりますのでよろしくお願いします」と静かにつたえます。


 少し集中し妖魔の気配を探ると、その居場所が明らかになりました。


 教室内を見ているのを再確認すると、その監視カメラに向かって霊弓を放つ準備をします。


 一発で仕留められるように狙いを引きしぼり、精神の矢を放ちました。


 監視カメラに、妖魔にとって後ろという概念がいねんがあるのかは分りません。


 背中に該当がいとうすると思われる箇所に向かって射貫いぬきました。


 直後、


“ぐげぇぇぇぇぇぇっ!”


 という身の毛もよだつ妖魔の叫び声が廊下中にひびわたりました。



 流石さすがに今の声は皆にも聞こえたらしく、教室内がざわめきで満ちました。


 一撃では無理だったらしく、妖魔の視線がこちらを向きました。


 まだ魔物がこちらを見ている段階ですが、そのまま二射目を射貫くことにしました。


「再度、ます」と香織さんに静かに告げて、二射目を射ました。


 妖魔の目かどこか急所にでも当ったのでしょう。


 二度目にさっきよりハッキリ叫び声が聞こえたのです。


“グルワァァァァァァ――!!”


 とさっきよりハッキリとした叫び声としてとらえられました。

 輪郭りんかくははっきりしませんが、監視カメラの周囲に黒いもやが出て来ていました。


 教室内からはざわめきでは無く悲鳴が、聞こえ始めました。


 何人かにはあの黒い靄が、見えているようでした。


 そこに静かに印を組み、呪文を唱えていた、香織さんの術が、発動したのです。


不動明王火界呪ふどうみょうおうかかいじゅ」と静かに唱えられました。


 直後、その監視カメラが炎に包まれたのです。


 妖魔の叫び声はさらに聞こえます。


“グギャァァァァァァァ――ッ!!!”


 教室内は、もうパニック状態になっていましたが、教室から出ようにも、もう一枚あるとびらにはかぎらしきじゅつがかかっているらしく、その監視カメラの下を通らなければ、出られなくなっているようでした。


「三射目、射ます」とだけ静かに告げると、その気配に向かって三射目の霊弓を射ました。


 直後断末魔だんまつまと思われる、叫び声が廊下中に響き渡りました。


“グルヴァァァァァァァ――ッ!!!!”


 火界呪の炎を受けて、尚存在し続けるその靄に、三射目の霊弓が突き刺さるとその黒い靄がかすみの様にったのです。


「視線の気配消えました」と私が囁き、二人して即トイレに逃げる様に入ったのでした。


「あれが一体だけだとは考えにくいのですが……」と香織さんに囁きました。


 香織さんも「あれがそうだとしたら、下っ端を倒せただけではないかな?」と囁かれました。


 幸いながら私たちが術を使っているところは、放課後になっていたので誰にも見られていませんでした。


 トイレを済ませて、「まさか霊弓が効くとは思いませんでしたが」とハンカチーフをくわえ、手を洗いながらながらフガフガと話しました。


「火界呪は物理的にしちゃうからね。監視カメラさん一個おくなりだな。備品びひんのほうは、検非違使けびいしにツケておいてもらおう」と香織さんは囁かれたのでした。



 教室に荷物を取りに戻ると、噂を広めていた子は半泣きになっており周りの子も似たような状況になっていたのでした。


「何かあったの?」と二人でさっきのは聞こえていないフリで、入って行ったのでした。


 何かいわれても困るのでサクサクっと帰り支度じたくを終わらせると、開かなかったと思われるほうの扉ではないほうの、扉から帰ることにしたのでした。


 開かなかったと思われるほうの扉には、クラスメイトがいっぱいたまっていたからともいいます。


 敢えて、監視カメラには気を回さないようにして帰ったのでした。


 学校を出てから街路カメラに少しは気を配りましたが、視線の気配はありませんでした。


 帰り道は、特に何事もなく問題なく帰れたのでした。


「物損だけど、銀弾が出なくてよかったと思う」と帰り道に不意に香織さんがおっしゃったのでした。



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