第6-07話 覚醒

2035/08/31 10:39

 アタシのほうにやってきたのが、両翼の灰色で眼が赤い大きい妖魔と黒い眼で翼は片翼灰色の妖魔でした。


 流石、妖魔です。

 素手の威力はかなりあると自負できるくらいにありましたが、あまり効いて無いようでした。

 ですが、ここで折れるわけにはいきませんでした。


 仲間が、二人果敢にも敵集団の中で戦っているのです。

 ここで負けるわけにはいかないので、気合いを拳の先に集中しながら、黒い眼のほうが弱そうだったので、対象を黒い眼の奴に絞って殴り倒しに行きます。

 対象にされた妖魔はアタシをTVクルーから引きはががそうとこころみました。

 明らかな牽制けんせいだったのです。


 よって私は対象を赤い眼の妖魔に、切り替えることにしました。

 明らかな反応の違いがあったのです。


 左側を蹴散らしに行った美空みそらのほうから、音はあまり聞こえてこなくなりました。

 香織かおりの行った右側も、大きな火柱が立ちのぼったと思ったらあとは静かになっていました。


 二人の事は心配ですが、今はみずからと、後ろでカメラを必死に構えている、こんな時でもプロ根性を忘れない人たちを守る方を優先しなくてはなりませんでした。

 アタシにもプロ根性があるからです、カメラの前で大見得切った以上ここは抜かせてはなりませんでした。

 今のアタシの双肩には、ADSecurityアドバンスドセキュリティーの権威も乗っかっているのです。


 拳に気力と言うか生命力が、込められることを今はっきりと知覚しました。

「そうか、こう使うのか」とつぶやきます。


 眼の赤い妖魔が術を唱えようと、アタシから離れようとします。

 離すつもりは、ありませんでした。

「そこだ!!」と闘気とうきを扱い、対象の両目を豪快にえぐり込みます。

 眼の赤い妖魔の顔面をしっかりとらえて闘気を放ち対象の両目を抉り込むようになぐり飛ばしました。


 一撃で、大きな赤い眼の妖魔を吹き飛ばします。

 距離を開けさせてしまったので術が来ると思ったのですが、赤い眼の妖魔は片眼がつぶれ術の詠唱どころではなく、怒りに燃えてこちらに手に生えた鋭い爪でおそかってきました。


 一瞬で相手の行動を見切り、反対側の目も抉り飛ばしに行きます。

 クロスカウンター見事に決まり、もう片方の赤い眼も半分潰れました。


 黒い眼の奴が割って入ってこようとしますが、アッパーカットを放ち闘気を乗せ相手のあごくだくように殴り飛ばします。

 見事にアッパーカットが入り、対象の顎が砕けました。


 アタシの感覚がいつもより鋭くなっていて、相手にしている対象の気の流れを読むことができるようになっているようでした。

「コレがすべ、いや技なのか?」とアタシが、呟きをらしました。まだ研ぎ澄ませられる、と思われたのでした。


 カメラにはADSecurityの本物のジャケットを着た赤髪で長髪の女性が、一回り人より大きい妖魔を圧倒している様子が取れています。

 肉体的には確かにしっかりとガタイはよく、さらに赤髪が映えますからカメラはさっきからアタシを追って動いていました。

 それに加えADSecurityの本物のジャケットが、完全に味方になっていました。

 周囲の状況は、アタシに味方していました。


 それは良いことのように思えました。

 本家の検非違使けびいしではあるが、学生バイトである二人を映させるわけにはいかないという強い思いが闘気に乗っていたのです。


 赤い妖魔が若干後退し、逃げ道を探し始めたようでした。

 その代わり、黒い眼の顎の砕けた妖魔が、アタシの邪魔をし始めました。


 すでに動きを見切った妖魔の攻撃は、アタシにかすりりもしませんでした。逆に重い拳に闘気をまとわせて殴り込み、黒い眼の妖魔をどんどん弱らせてゆきます。


 アタシが黒い眼の妖魔を倒し切った時には、二人共に最後の妖魔を倒し切ったところでした。


 そして赤い眼で両翼が灰色の妖魔はそこから一吠えし、さらに体を大きくしたのです。

 その時、右方向後方から香織が、左方向後方から美空がほぼ同時に、斬りかかったのでした。

 二人共の得物は光や雷光は放っていません、精神力をほとんど使いつくしているようでした。

 ただ、御神刀としての力や五鈷鈴としての力はある物なので、それで攻撃されればかなりのダメージを負うはずでした。


 確かに、翼の付け根を切り裂かれました。

 効いてはいますが、あと一歩というところまで読めました。

 アタシの一撃があれば行けるか? と思いました。


 準備行動を必要としませんが、あきらかに生命力を大量に消費するということをさっき思い知ったばかりでした。

 黒い眼のヤツ相手に、力を使いすぎたのです。


 これで倒れなければいいんだが、と思い拳を握り込みます。

 二人もこちらの放つ力に、気づいたようでした。


「今しか出せねえ、これで終いにするぞ!」と叫びます。

「分かった、これで最後ね」と香織が言いました。

 そして光の剣オーラブレイドを展開しました。

「分かった、それならこうだっ!」と美空が言いました。

 短刀サイズだった御神刀が、刀くらいのサイズに光り輝いたのです。


 三人で同時に飛び上がれなくなって立往生している赤い眼の両翼灰色の妖魔目掛けて、香織は袈裟懸けに斬り払いアタシはその顔面に拳を叩きこむために飛び上がり殴り付け、美空は背面から心の臓のあるあたりを貫きに行ったのでした。


 見事に三人の攻撃が刺さり立ち往生したまま、赤い眼で両翼灰色の妖魔は往生し“プツン!”と音を立てて結界が、晴れ渡り通常空間に戻ったのでした。


 直後、「行くよっ!」と言って人混みの中、香織が走り出しました。

 気が付いた美空も、香織と同じ方向に向けて全力で突っ走って行きます。

 アタシも遅れちゃなんねえ、と思い人混みの中を器用に人を避けて走って行きました。


 カメラにはアタシの背中がバッチリ収められていたわけですが、それには気が付きませんでした。

 むしろ今ここで捕まるわけにはいかない、二人を意地でも逃がさないというのが、先決だったのです。


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