1-2 「カレーが好物なのは戦隊のイエローだなんて、情報が古いぞ!」「へえ……」

コーデリアの経歴

 どうにか近くの森まで辿り着いたコーデリアは、森の中を駆け抜けていた。


 長時間泳いだせいで、体力を使い果たしている。


『食事を取ろう。もう死にそうだろ』


 リュートは食事を取らなくても平気だ。


 とはいえ、コーデリアは食べなくては。


 ベルトの性能で、リュートはコーデリアのバイタルが分かるのだ。空腹度合いがピークに達していた。


「少々お待ちを」

 氷の矢を川に放ち、魚を数匹捕まえる。だが、火を付けられない。


「炎の魔法を使えば、敵に知られてしまうかも知れません」


『なら、オレに考えがある』


 リュートは人格を入れ替わり、持ってきた折れている剣を握る。

 形見として手許に持っておきたいからと、コーデリアが持ってきた品だ。


 折れた剣をナイフ代わりに使って、内臓を取る。

 続いて、手の平に炎の魔法を出して、魚を炙った。


「これで殺菌できるはずだ。臭みも消えるだろう」


 炙り焼きなので、やや食感は生っぽいが、しっかり焼いたので食べられる。

 ちゃんと塩焼きにすれば、多少おいしいのだが。


『味覚は共有らしいな』


「そのようですね」

 腹も満ちて、コーデリアに眠気が襲っている。

 第一、彼女は丸一日も眠っていない。


『仮眠を取ったらどうだ? 敵が来たら、意識を変わろう』


「そうさせてもらいます」

 早々に、コーデリアはまぶたを閉じた。


 その間に、コーデリアのステータスを確認する。


 ベルト状態のリュートは、謎の空間で立っている状態だ。

 無数のウィンドウが周辺に現れており、様々なデータが見られる。


 コーデリア・ドランスフォード、一六歳。彼女は魔法王国ドランスフォードの第二王女だ。


 一〇歳の離れた姉と、五つ上の兄がいた。


 第一王女ナタリアは、まだ一五歳という年齢で魔物に殺されたと書いてある。コーデリアが五つのときに。



『これこそ、彼女が魔物を屠る剣士となった理由か』


 王国を滅ぼされる以前から、魔物を憎んでいたらしい。

 


 両親と兄は、デヴィラン襲撃の際にコーデリアをかばって死んだ。


 冒険者としても活動していて、主に魔物退治を生業としていた。最近では王国総出で、謎の秘密結社デヴィランの打倒に尽力していたという。


 以上が、コーデリアの口から語られた情報である。


『戦闘レベルが異常だな』


 武芸に関しては、達人に等しかった。剣術や魔法に長け、使える技が豊富だ。魔法に関しては、さっきの調理みたく応用も利く。


 特撮ヒーローでも、ここまで器用なキャラは少ない。


 あくまで、一般人基準だが。

 この世界の冒険者なら標準レベルなのかも知れない。


『デヴィランの情報は……なしか』


 全てが、謎に包まれていた。

 世界を裏で操っている組織とあるが、どれだけの規模を持つのか。

 数で攻めるタイプなら、個人では滅ぼせない可能性がある。


『とはいえ、あまり復讐に執着して欲しくないな』


 リュートの口から、本心が漏れた。




 できれば、コウガの力は正義のために使いたい。




 コーデリアの愛らしい寝顔を見ながら、リュートはそう思わずにはいられなかった。

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