レイジング・フォーム

『装甲のレベルが上がっているぞ。痛みがまったくない』


 コウガの装甲は、【レイジング・スキン】というらしい。さしずめ、今のコウガは【レイジング・フォーム】とでも呼ぶべきか。

 

 いかなる攻撃も跳ね返すと説明があるが、フルパワーでここまで強いとは。


 なにより、後ろにいる逃げ遅れた村人を守らねば。


「ぬお、さすがコウガだ。我が一撃に耐えるとは。だが!」

 怪人が、棍棒をさらに押し込む。


「これは耐えきれまい! 潰れてしまえ、コウガ!」

 コウガは、なおも耐える。

 

 戦闘経験値がどれほどなのかも、知る必要があるからだ。

 これまでの激闘で、強くなっているかも知れない。


『トゥア!』

 両手を広げて、怪人の一撃を突き放す。


 バランスを失った怪人が、後ろに倒れた。だがすぐに立ち上がり、棍棒を乱れ打ちする。


 マタドールのように、コウガは棍棒攻撃をかわす。その際、戦闘員をも巻き添えに。


「ひいいい! 暴れるなミノタウロス!」「俺たちを殺す気か!」「ヤロウの策に踊らされてんじゃねえ!」

 戦闘員たちが逃げ惑う。


「やかましい! 死にたくなくば、死ぬ気でかわせばよかろうぞ!」

 怪人の語彙が、おかしくなっていた。攻撃を軽々とかわされて、頭に血が上っているせいか。



 棍棒の一撃を喰らって、戦闘員の一人が吹っ飛んだ。

 建物が崩れ、逃げ遅れた少女が崩れた建物に埋もれそうになる。



『いかん!』

 コウガはとっさに飛びつき、ガレキを持ち上げた。


『大丈夫か! 逃げろ!』



 少女は立ち上がろうとしたが、足を押さえてうずくまる。足の骨を折っているらしい。



 母親らしき人物が少女に駆け寄ろうとして、戦闘員に囲まれる。



「愚かなりコウガ。貴殿の弱点は、その甘さよ! わざわざ矮小な人間を救わずにはいられない。そんな安っぽい正義感、打ち砕いてくれるわ!」

 怪人が棍棒を構える。



『許せ、コデロ。キミを危険な目に遭わせた』

「今さらです、ベルト様。こうなることは必然でした。今は反省より打開策を!」


 とはいえ、どうすれば。

 少しでも動けば、少女がガレキの下敷きになってしまう。


 なすすべなく、コウガは棍棒を脇腹に叩き込まれた。


「死ね、コウ……なにいいいい!?」


 あろうことか、コウガは無傷である。それどころか、棍棒は真っ二つに折れた。


「バカな!?」

 棍棒が破壊され、怪人がうろたえる。


「今だコウガ、やっちまえ!」


 ダニーたちが戦闘員を蹴散らす。そのスキに母親が駆けつけ、少女に肩を貸す。少女を引きずるように進んだ。


 刹那、コウガはガレキを安全な方角へどけた。

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