1-7 『オレは弱き人を守る太陽《たて》になる』「ならば私は、闇を切り裂く月《つるぎ》となりましょう」
攻城戦 馬怪人【ケンタウロス】
今は亡き故郷、ドランスフォードへ帰ってきた。
馬車で数日の道のりだったが、バイクでは半日と掛からない。
ノアやダニーによる改造と、コウガのパワーアップによって、バイクも驚異的な進化を遂げたらしい。コデロが乗った瞬間、形状が変わり、怪物じみた姿に。
「コウガだ!」「やはりこちらへ来たか!」
無数の戦闘員たちが、城の外で待ち構えていた。
「者共、ゆけえ!」
戦闘に入る半人半馬の怪物が、戦闘員たちの指揮を執る。
「我が名は【ケンタウロス】! 弟【ミノタウロス】の仇、討たせてもらう!」
『望むところだ。変身!』
コウガはバイクにまたがったまま、変身ポーズを取る。レイジングフォームへと変わる。
『トゥア!』
バイクに乗りながら、キックで戦闘員たちを打倒していく。
「数が多すぎます!」
『ならば、こうだ!』
二刀流の片手剣を、柄同士で合体させた。アテムのトマホークを応用したものだ。
棍術のように振り回して、戦闘員の群れに切りかかる。
あれだけいた戦闘員たちが、数を減らしていく。
順調に敵を蹴散らすコウガに向けて、矢が飛んできた。
コウガは剣を回転させて弾く。
「私を忘れてもらっては困るな!」
矢を撃ってきたのは、馬怪人だ。
『手下に任せていないで、かかってこい!』
「その心意気やよし!」
同じ長物を、コウガは馬怪人とぶつけ合う。
「デヴィランは、剣闘士として生きることしかできなかった我ら兄弟を、ここまで強くしてくれたのだ!」
ミサイルのような突きが飛んできた。
アクセルを吹かし、コウガは引いてかわす。
「その恩に、今こそ報いる時!」
『人殺しの道具に、望んでなったというわけか』
「殺すしか才能がないからな!」
ゼロ距離から、矢が仮面をかすめた。
あの槍は、弓の役割も果たすらしい。
近距離では長物の打ち合いになり、距離を離せば矢が振ってくる。厄介な相手だ。
「死ねい、コウガ!」
馬怪人が、矢をつがえる。
『フィーンドバスターッ!』
こちらにだって、飛び道具はあるのだ。銃から光線を発し、放たれる前の矢を撃ち落とす。
「まだ、こちらには槍があるぞ!」
槍を振り回し、馬怪人がこちらを威嚇した。土を蹴り、コウガへと突撃してくる。
コウガは、ウィリーで槍を飛び越した。
「バカめ、上空では槍のエジキよ!」
槍を上空へと向けて、馬怪人は勝ち誇る。
「なにい⁉」
コウガは、縦に伸びた槍の上を、バイクで滑走した。
「コウガ、レイジングキック!」
真下に、コウガは蹴りを放つ。怪人の額に、キックを撃ち込んだ。槍を伝って、コウガは地に降り立つ。
「これだけ殺す才能があれば、デヴィラン幹部になれたものを!」
馬怪人が、口惜しげに爆死する。
『そんな力など、必要ない!』
コウガの力は、人を守るためにあるのだ。
怪人の残骸を横切って、城へと急ぐ。
『むっ!』
門前に気配を感じ、コウガはバイクを急カーブさせた。
刹那、地面が爆発して、岩や土がはじけ飛ぶ。何者かが、炎の衝撃波を飛ばしているのだ。
バイクで向かってくるコウガを狙うかのように、火炎の波動が降り注ぐ。
「死ね、コウガ! グエエエエエ!」
火球を撃っていたのは、以前倒したコウモリ怪人だった。
コウガはバイクにまたがったまま、変身ポーズを取る。
『変、身!』
ライジングフォームへ。バイクのシートに直立し、跳躍した。
「コウガ、ライジングキック!」
コウモリ怪人の無軌道も、ライジングキックの追尾性能には通用しない。
胸部にキックを叩き込まれ、コウモリ怪人が城の上空で爆死する。
「消耗……していませんね?」
リュートも、ステータス画面を確認した。
コウガのエネルギーが減っていない。
『なぜか、無限に近いエネルギーが、身体から溢れ出てくるんだ』
「ドランスフォードが、それだけ魔素の強い土地というのもあるでしょう。デヴィランが欲しがるわけです」
再度バイクを操り、コウガはドランスフォード内部へと突撃する。
人々の笑顔に溢れていた街は、平和を脅かす漆黒の要塞へと様変わりしていた。全ての砲門が、コウガに向けられている。
『フィーンドバスターッ!』
銃をベルトから召喚し、バイクに乗りながら放った。
光の弾丸が、巨大な砲台を撃ち落とす。
馬に乗った戦闘員が、コウガを取り囲む。
『今一度。フィーンドバスター!』
バイクをコマのように一回転させ、銃を乱射した。
戦闘員たちが、次々と落馬する。
だが、襲撃の手は休まらない。
「レイジングフォーム」
バイクを降り、押し寄せる戦闘員たちを徒手空拳で叩き潰していった。ウォーミングアップにすらならない。
「城の内部へ急ぎましょう!」
懐かしい城の内部へ、足を進める。
だが、戦闘員だらけだ。それも、技術系の白衣を着ている者たちばかり。
コデロはたった一人で、城の大部分を占領した。
強い怪人は、あらかた倒してしまったらしい。魔王や、イノシシ上位怪人がピークだったようだ。
『外の警備の方が、厳重だったな』
「内部は、あまり重要視されていませんね」
焼け跡など、まったく片付いていなかった。
『こちらコウガ。ノア、聞こえるか?』
[ああ。しっかり機能するか不安だったが、なんとかね。どうした?]
『オレの目を貸す。焼け跡や壁・床などを調べるから、何か分かったことがあれば伝えてほしい』
[承知した。科学的な分野なら、キミらだと見落とす可能性があるからね]
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