デヴィランのアジト

 山を三つほど抜けると、小さな洞窟の入り口に辿り着いた。


 その間に、数体のモンスターを撃退している。そのすべてをダニーが銃で倒した。使い方をコデロに教えるために。


 とはいえ、銃の仕組みは地球から来たリュートの方が詳しい。あまり目新しさはなかった。


「いいのかよ? 報酬のほとんどがカレー代で消えたぞ」

「また稼げばいいだけ。それに、今回の依頼は、少数精鋭の方がいい」


 金に目がくらんだ冒険者に来られても、犠牲者が増えるだけ。

 それに、冒険者にはできるだけ、街を守ってもらいたかった。

 山分けした報酬額は、いわばその前金である。


「計算高いな。ただの考えなしでもない、ってか?」 


 そこまで説明すると、ダニーから関心とも取れる意見をもらう。


 道中の景色が不気味だった。

 生物の生きている心地がしない。

 荒れ地にでも来たかのような印象を受ける。


「ここはちょっと前まで、盗賊団のアジトだった。だが、最近はめったに活動を聞かなくなってる。アジトを移したのか、あるいはもっとデカイ山を狙っているのか」


 暗い洞窟に足を踏み入れる。


「人が通れるほど広いですね」


『明らかに、人工的な手が入っているな。それだけじゃない』


 配線のようなコードが、壁に張り巡らされている。


 盗賊団のような初心者が組み上げられる代物ではない。この洞窟を作った人物は、高度な科学力を持っている。


「木々のエネルギーを、特殊な機械で吸い上げているようだ」

 だから、周りの動植物が死に絶えていたのか。


「お前さん、そこまで分かるのか? オレも怪しいとは睨んでいたが」

「道中、不自然なほどに自然が枯れていました。動物の数も少ない。この先には何かある」

「注意して進むぞ」


 お互い銃を手に、先へと急ぐ。


 明かりの付いた場所が見えてきた。身を潜め、様子を伺う。


 眠らされた盗賊が、ベッドで手術を受けている。作業内容から見て、治療ではない。実験だ。


 かたわららには、全身鎧を着た騎士が立っている。隣には、見覚えのある怪人が。


『あのコウモリ怪人!』


 森で逃がした怪人を、手術室で見つけた。


『ヤツらは、盗賊をとらえて、怪人に改造している!』

「改造、ですか?」

『肉体を、別の個体に作り替えているんだ』


 コデロは、リュートの説明をダニーに聞かせる。


「それは興味深いな。マネまでしようとは思わんが」


 科学者らしい、インモラルな返答がきた。


「コウガのベルトだってそうだ。魔法使いが肉体的に強くなる手段として、二つの可能性があった」


 一つは、コウガのように外骨格を装備するパターン。


 もう一つが、改造人間だったという。

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