リュートの過去
友だちとどこかへ行くどころか、学校へも通えなかった。
『キミたちの世界でも分かるように説明すると、【一生一人で立ちションできない】と告げられたよ。それくらい、重い病気だった。日常生活にすら支障をきたすほどの』
リュートはバカ笑いをして見せたが、コーデリアは笑っていない。
いつも病室と自室を行ったり来たり。
たまに来る友だちも、リュートに遠慮して疎遠になっていった。
学校は通信教育で博士号まで取ったが、友人らしい人物は誰もいない。
『想像してみろ。三〇年間、一人では何もできない生活を』
「壮絶な人生を、歩まれたのですね」
『そんなオレを救ってくれたのが、発明と、ヒーロー特撮だ』
「ト・ク・サ・ツ?」
『ヒーロー、つまり架空の英雄譚だ。弱い人たちを助け、泣き言を言わず、悪者をやっつける』
彼らが素晴らしかったのは、志だ。
孤独である自らの境遇に対して、少しも愚痴をこぼさない。
もちろん心の弱さで挫けることもある。
けれども、すぐに克服し、戦線に復帰した。
『オレだって、病気のことを何度も恨んだ。しかし、どれだけ巨大な悪でも立ちむかうヒーローたちの活躍を見て、オレにも何かやれるんじゃないかという気持ちが芽生えた』
その一端が、発明品である。
『このベルトだって、発明記述によって再生してみたんだ。かつての骨董品からは似ても似つかなくなったけど、カッコイイだろ?』
問いかけてみたが、反応がない。
やはり、女の子にヒーローの素晴らしさを説くのは、ハードルが高すぎたか。
『スマン、一人でしゃべりすぎた』
「私は、デヴィランを殲滅できれば、他に何も要りません。あなたの理想とするヒーロー像にだって、興味がありません」
コーデリアは、心を固く閉ざしてしまっている。
これ以上の説得は無意味だろう。
『今はそれでいいさ。だが覚えておくんだ。キミの力は、誰かのためにあるのだと。そのために、オレはキミを助けたのだと』
だが、今の状況に最も戸惑っていたのは、他ならぬリュートだった。
自分が変身したときと、造形が違ったから。
リュートが変身したときは、もっと姿形がヒーロー然としていた。
色も銀色で、コーデリアが変わったような赤黒い色ではない。
それにひきかえ、あの姿のなんておぞましいことか。
まるで鬼だ。羅刹じゃないか。
仮面の顔は険しく、まるで怒りに打ち震えているようにも、泣いているようにも見えた。
コーデリアの精神が反映してしまったのか。
あるいは、これが本来の姿だとでも?
ヒーローらしくない。
あまりにも、リュートの理想とはかけ離れていた。
また、本来の力も取り戻せていない気がする。
もっとコウガは強かったはず。あんなオーク如き、一撃で粉砕できるほどに。
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