拳銃使いのノーム
すっかり日も落ちてきた。
宿を探せればと思ったが、まだまだ見えてこない。
だが、歩くにつれてペアーチの実が大量に実っている場所へ出た。もうすぐだろう。
『む?』
凄まじい物音で、草がざわついている。
敵か? 違う。人だ。女の子が、何かに追われていた。
「はあ、はあ!」
セミロングの少女が、上空から来るモンスターに追い回されている。
それも複数だ。
助けよう、と思った矢先、少女が腰に手を当てた。
『あれは、銃じゃないか!』
少女は腰から大型の拳銃を取り出し、引き金を引く。見た目はオートマチックの銃に似ているが。
目に何かが直撃し、コウモリ型の怪人が落下する。
怪人が落ちてくる度に、むせかえるような粉末が飛び散った。この香りは……。
その後も、少女は次々と目に一撃を食らわせ、コウモリ怪人を撃ち落としていく。
「ぎゃああ!」
怪人は死んではいないが、目を押さえてもがいている。
とはいえ多勢に無勢だ。
少女の拳銃はあっけなくコウモリ怪人にたたき落とされる。
「ぐえええ!」
コウモリの牙が、少女のノドに迫った。
「変身!」
コウガに変わったコーデリアが、少女を襲うコウモリ人間を殴り飛ばす。
それだけで、怪人は爆死した。
『これでは強力すぎる。パワーを調節するぞ』
また、エネルギー切れを起こしては元も子もない。
両手足と胸しか装甲を覆っていない、簡易型に変える。イノシシ怪人との戦いで疲弊したときのモードだ。フルフェイスの仮面はそのままである。
コウガはコウモリ怪人の群れを、次々と攻撃していった。省エネモードとて、相手に反撃すら許さない。
倒されたモンスターは、次々と爆発を起こす。
やけに弱い。簡素な改造しかされていないからだろう。
『後一匹、待て!』
ただ、一匹だけ飛び去ってしまった。
「大丈夫ですか」
変身を解いて、少女を安心させる。
「ありがとうございます」
「あなたは、ノーム族の方で?」
コーデリアが、少女に問いかけた。
リュートの脳内に、所属の概要欄が表示される。
この世界での『ノーム族』というのは、小柄で手先が器用な種族らしい。キノコや薬草の知識にも詳しいという。
「わたし、ミレーヌ・バンナと言います。冒険者職では、ハーバリストを担当しています」
ステータスを見ると、ハーバリストとは【薬草の専門家】と説明があった。ヒーラーとして、パーティを支える後衛職だという。
セミロングの髪は、ブロンドだ。
「私はコ……」
コーデリア、と言いかけて、言葉をなくした。自分がドランスフォード家の人間だと知られては、ミレーヌに危害が及ぶと考えたのだ。
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