バイソン怪人【ミノタウロス・亜種】
「いちいち、名前の読みを変えたんですね」
『違いがあったほうが、わかりやすいだろ』
怪人が襲ってこなかった間、リュートはずっと、漢字とにらめっこしていたのである。
「私にとっては、どれもコウガなので」
『確かにそうだが!』
「もっと有意義な時間の使い方はなかったのですか? 装備を新調するとか」
コデロは、相変わらずの塩対応だ。
「ほら、来ました」
取り囲む戦闘員を前に、コデロは銃を構える。
『フィーンドバスターッ!』
銃の威力が上がっていた。戦闘員程度なら、一発で弾が貫通して倒せる。
襲ってくるのは、戦闘員ばかりだ。武装はしているが、コウガの敵ではない。消耗すらしていなかった。徒手空拳を繰り出すだけで、数を減らせる。
『ダブルスラッシュ!』
両手の短剣と銃を変換し、戦闘員たちを斬りつけた。
『装備を新調しろと言っていたな。見せてやる!』
コウガは短剣に、銃口を追加する。
『バースト・ダブルスラッシュ!』
ノワール映画さながらに、コウガが二丁拳銃をぶっ放す。フィーンドバスターの半分に下がる。だが、戦闘員程度ならこれで十分だ。
『さて、再生怪人の実力は?』
懐かしいイノシシ怪人が数体、投擲用の槍を構えた。
体格は一回り大きい。が、武装は鉄製の投げ槍と貧弱だ。言葉も話さない。野盗を改造したのだろう。品格どころか人間性も失ってしまったらしい。
「ぎいい!」
怪人が、槍を投げてきた。槍の先には、火薬弾が仕込まれている。
投擲槍を、コデロは蹴りだけで弾き飛ばす。
イノシシ怪人のバックにいた戦闘員たちに、爆発する槍を突き刺した。
『トゥア!』
怪人たちには、魔力を込めた拳を見舞う。
城塞の踊り場にて、こちらを狙う影が。
物陰に隠れていても、コウガのマルチアイで探し当てて撃ち抜ける。上にいた三体倒した。
「数はどのくらいですか?」
『見えているだけで、二〇〇だ。その先はわからない!』
戦闘員ばかりなら楽だ。
しかし、そんな軍勢で戦争など起こすはずがない。
おそらく強力な隠し玉があるはずだ。
「ザコは、一気に潰しましょう」
『OKだ』
今度は、短剣同士を並列にくっつける。ソードオフ・ショットガンのような形状にした。
「銃と融合させたんですね」
『おうさ。名付けて、メガ・フィーンドバスターッ!』
コウガは破壊光線を発射し、コマ状態に旋回する。
拳銃モードでは魔力の弾丸を撃つ。このモードだと光線を放つのである。
周囲にいた戦闘員や再生怪人が、破壊光線を食らって溶けた。
『やはり、再生怪人は弱体化していると、相場が決まっているな!』
「感心している場合ですか! 来ますよ!」
【ミノタウロス】らしき怪人が、斧を振り下ろす。
間一髪のところで、コウガは攻撃をかわした。
かつて倒した牛型怪人が
『こっちも! メガ・フィーンドバスターッ!』
バイソン怪人に、破壊光線を浴びせた。
しかし、斧によって弾かれてしまう。
反射した光線が、他の再生怪人に命中して爆発を起こす。
『強いヤツもいるな』
再生怪人ではない。
基礎から新しく作ったような印象を受けた。
『牛怪人の改変型だな』
「この怪人は、動物がベースのようですね」
人間の肉体に、体温を感じない。死体をベースに作ったようだ。
『ならば!』
ボモオオ! という雄叫びを上げながら、バイソン怪人が暴れ狂う。味方すら蹴散らし、執拗にコウガを追い立てた。
『こっちだそ、子牛ちゃん!』
コウガの挑発に、バイソン怪人はまんまと乗せられているようである。さらに怒り出して、角を前方に突進してきた。
『やばいな』
「あなたのせいでしょうが!」
バイソンの角が伸び、コウガの心臓を狙う。
『トゥア!』
跳び箱の容量で、コウガは跳躍した。
バイソン怪人は、真後ろから迫っていた牛型戦車と正面衝突をする。大量の戦闘員が、衝撃で吹っ飛んだ。バイソン怪人も、角が戦車を貫いて身動きが取れない。
『トドメだ』
ようやく戦車を振りほどいたバイソン怪人が、仕切り直しとばかりに再び迫る。
「コウガ・レイジングキック」
ローからの回し蹴りを、コウガはバイソン怪人に放った。
背の高い相手なら、足を狙うと考えていたのだろう。虚をつかれたバイソン怪人は、首を折られた。うつ伏せ状態で絶命し、そのまま爆発する。
「敵の印象は?」
『頭数を揃えたような印象を受けるな』
まだリュートには、敵戦力を分析する程度の余裕はあった。
「相手は、本気ではないと?」
『出し惜しみされている気分だ。こちらの戦力を測られているような』
「これだけのザコが、コウガの分析だけに登用されていると?」
コウガの力は、扱っているリュートでも未知数なのだ。ダニーですら、どこまでやれるのかわかっていない様子である。
「魔力残量は?」
『力はみなぎっている! 今日のオレは、劇場版仕様だからな!』
大技を繰り出しては、細かい技を挟む。
「調子に乗って、魔力切れを起こさないように」
『心得ている! 作戦もあるしな!』
「それを見せる前にやられたら。目も当てられませんよ」
やはり、塩対応だ。
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