市街戦
日が昇っている。
ドランスフォードの街は、まだ戦火の名残がある、ゴーストタウンと化していた。
さっきまで、人の息吹があったと感じられる街並みだ。
今は、暮らしていた人々の死体で埋め尽くされている。
「あんなに美しかった街が、ドランスフォード王国が、こうも無残に」
人の焼け焦げた匂いが鼻をつき、コーデリアは顔をしかめた。
「パレードの時を思い出しますわ。大勢の人で賑わって」
大通りの脇を歩きながら、コーデリアは惨状を確認する。
子どもの死体まであり、コーデリアは顔を背けた。
「ここのパン屋は、王家でも人気で。見てください。私が声をかけると、毎日お花をくれる少女がいまして」
あまりに精神がズタズタになっているのだろう。コーデリアは、過去の思い出に縋っている。
「ココに咲いているお花を」
コーデリアが花を摘み取ろうとすると、花は一瞬で灰になってしまった。
歯を食いしばり、コーデリアは涙を堪えている。
「絶対に許さない。必ず復讐します。覚悟をなさい!」
無念からくる静かな怒りが、コーデリアの中にこみ上げていた。
大勢の悲鳴が、コーデリアの耳に入ってくる。
怪物たちに追われ、人々が逃げ惑っていた。冒険者や城の兵隊が怪物相手に応戦しているが、まるで歯が立たない。
「もっとだぁ。もっと人を捕らえろブヒィ!」
イノシシの怪人が、人々を捕らえていは護送に使われる大型馬車に乗せている。
「やろう、ぶっ殺してやる」「市民を返せ!」
冒険者と兵隊が、連携でイノシシ怪人を挟撃した。
しかし、軽々と武器を掴まれ、壁に叩き付けられる。
「バカめ! このイノシシ怪人【オーク】様に、傷一つ付けられるか!」
オークを名乗る怪人が、ブヒヒと下品な笑い声を上げた。
「この豚野郎!」
両のこめかみに二本角を生やした女戦士が、斧を振り回す。
だが、怪人は棍棒で鬼族の腹を打ち、アゴを打ち抜いた。
「力自慢のオーガすら寄せ付けぬ、驚異の科学力! 解像技術とはかくも素晴らしいモノか!」
オーガの女剣士が、壁に激突する。「がはっ!」と息を吐く。
「この豚を止める術はないのか!」
地べたに這いつくばりながら、満身創痍の女オーガ剣士が地面に拳を叩き付ける。
荷台の牢獄から、幼い子どもが手を伸ばしていた。
コーデリアは、足を止める。彼女の思いは分からない。今は、目立つ行動は避けるべきと思っているのだろう。
『迷っているな。それは正しい』
リュートは、勝手にコーデリアから身体の所有権を奪った。
『変身、トゥア!』
強引に『コウガ』へと変身する。
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