コデロ(コーデリア)の実力
街じゅうに、悲鳴が上がっていた。
小鬼のような兵隊が、村人を襲っている。
冒険者たちも応戦しているが、数が多すぎて対処できない。矢を放っても、次の矢を装填する前に他の兵隊に攻撃される。
「あれは、戦闘員!」
コデロは、怪物たちの外見に見覚えがあった。ドランスフォードにもいた戦闘員である。
「【ゴブリン】の野郎共、こんな街まで襲うようになったか!」
腰のホルスターに手を当て、ダニーは銃を握った。
「ゴブリン?」
「ああ、周辺の街を荒らす厄介者さ」
ゴブリンという小鬼戦闘員に向けて、ダニーは引き金を引く。
銃口から、緑色の光線が放出された。
光線は戦闘員の胸を貫く。
「弾丸は、魔法ですか?」
「そうだとも。俺の科学力は完璧だ」
次々と襲い来る戦闘員を、ダニーは撃ち倒していった。
射撃の腕はプロレベルだ。民間人に当たる気配すらない。
とはいえ、数が多すぎる。ここは出番か。
「ではベルト様、ここは私にお任せを」
『体調は万全か?』
「それを確かめるためです」と、コデロはカレー皿を持ったまま飛び出す。
女子どもをかばいながら、コデロは戦闘員を追い払う。カレーを持ちながら。
変身前でも、戦闘員程度なら軽くやっつけられるらしい。
ここまで人が密集していると、武器を扱えば人に当たってしまう。
徒手空拳で戦うのを余儀なくされている。
「とっ、はっ、やあっ」
にもかかわらず、戦闘員に蹴りや拳を浴びせながら、コデロはカレーを食べるという器用な行動を見せた。
右に家族連れを追い回す戦闘員がいたら、顔面をヒジで砕く。
左に子どもを襲う戦闘員がいたら、尻を思い切り蹴り上げた。
『食べるか戦うかどちらか選んだらどうだ?』
「それは無理な相談ですね。お腹が空いているのです。それにこのカレーという食べ物は、一生食べながら生きていたいくらいの美味です」
『……そうか。よかったな』
復讐に思いを募らせる以前のコデロは、愛嬌のある子だったのだろう。
「ええい、役立たず共が!」
二メートルを超える大型の怪人が、頭突きで家々を壊している。
「うわあああ!」
あまりの勢いに、冒険者たちでさえ逃げていく。
その正体は、棍棒を持った大男だった。
頭部は、二本角のバッファローである。全身を黒い体毛で覆い、胸当てらしき鉄板は、鉄の杭と鎖で身体に直接繋いでいた。
改造人間だから痛くはないのか? あそこまで大きいと、そもそも人間なのかどうかすら疑問だ。
「ミレーヌ、あなたは隠れていてください」
店の窓から様子を伺っていたミレーヌに、カレー皿を返す。
「悪い状況になりそうですね、ベルト様」
『いざとなったら勝手に変身するぞ、コデロ』
「ご自由に。ですが、戦闘力は私の方が高いようです」
コデロの指摘は正解だ。
リュートは知識だけで、実力は伴っていない。実戦経験の多いコデロの方が、強そうだ。
「吾輩は、秘密結社デヴィランの【ミノタウロス】なり! この辺りにコウガという鎧の女が逃げたはず。そいつを差し出せば、見逃してやろう!」
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