アテムと特訓

 適度に広い採石場があったので、特訓を開始する。


『トゥア!』


 簡易モードに変身したコウガが、アテムに跳び蹴りを放つ。


「てやっ!」


 アテムが斧で、コウガのキックを打ち落とした。


 幾度もアテムが振り落とす斧の攻撃を、コウガは素手だけで受け流す。両者とも、相手に致命傷を負わせるレベルの攻防を繰り広げていた。


「すごいね、さすが古の戦士コウガだ。ウワサ以上だよ!」


 アテムはコウガの力に打ち震えながらも、自らを奮い立たせている。まるで戦いを楽しんでいるかのよう。


 さすが鬼族だ。スパーリング相手として、アテムはちょうどいい。


「こちらも、武器を出していいですか?」

 珍しく、コデロが自己主張する。


「構わないよ、来な!」

 コウガは、両手持ちの剣で武装した。


「これで打ち合って下さい」


「おうさ、やるよコウガ! 負けたらあんみつを奢ってもらうからな!」


「カレーなら、いくらでも代金を払って差し上げます!」


 コウガは、剣で斧に立ちむかう。

 鍔迫り合いになって、相手を押す。


「くっ……」

 やはり、万全ではなかった。

 この程度の仕上がりでは、コーデリアの剣術を存分に振るえない。

 もっと強い剣に作り替えなくては。


「どうした、コウガ! あの化け物をやっつけたときのパワーがないぜ!」

「まだです!」


 ただ、片手剣で斧に立ち向かうこと自体、無謀だったようだ。


「次は、アテムの武器を調節するぞ」


 ダニーの指摘で、アテムは斧を思う存分に振り回す。


「もっと回転させてみろ」


「よし、こうか?」

 アテムが、武器をジャグリングのように弄ぶ。


「おお、残像だ!」


 斧の後ろを、赤い残像がついてきた。


「いや、それは実体なんだ」

「マジか!」

「いくぞ」


 ダニーがゴーレムを召還する。

 適度な大きさの岩を、アテムに向けて放り投げた。


「斧の残像で切ってみろ」

「よっしゃ。すりゃあ!」


 なんと、赤い残像の方で、スパッと岩が真っ二つに。


「おお、こいつはすげえぜ!」


 この技なら、自分の周辺にいる敵を一発で蹴散らせる。

 不要な武器を手放したはいいが、少し羨ましい。


「これさえあれば、どんな化物が出てきても勝てそうだ」

「あまり過信しないでくれよ。相手は改造手術を受けて、人知を超えた力を持っている。うかつに手を出さないコトだ」


「心得たよ」

 アテムは武器をしまう。本当に大丈夫だろうか。


『ダニー。オレの作った武器も、性能を見てもらえないか』

 リュートは、ベルトから折れた両手剣を出す。 


 ドランスフォードが焼け落ちた日、コウガはコーデリアの愛用していた剣を持ち帰っていた。 

 折れた剣の修復や魔法要素の再構築には、十日以上を要している。それでも、怪人に通用するとは思えない。


「修復が、終わっていません。刃が欠けたままです」

『待て。魔力を注いでみろ』


 半信半疑と言った様子で、コデロは剣に魔力を流し込んだ。




 ブン! と激しい音とともに、光の刃が姿を表す。




『光子剣といったな? 具体的にどのような武器なのか、自分なりにイメージしていたんだ』


 コデロからは、「刀身に魔力を流すと、光り輝く剣」と教わっていた。


 では、魔力そのものを刃にしてみては、もう折れることはないのでは、と考えたのだ。


『あとは実戦に耐えられるかどうかだ。アテム、勝負してもらうが』


「いいさ。楽しみだ!」


 その後は夕方まで特訓し、さらなる調節と研究に費やした。 

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