エスパーダ・ローデス、爆現!
『一人で勝てる相手じゃないぞ!』
「皆様には、外の敵をお願いしたいのですわ」
『そうは言うが……』
コウガは悩んでいる様子だ。
「ベルト様、ここにはレンゲやディアナ様もいます。彼女たちを救助し、この場は退きましょう」
現状を最も理解したらしく、コデロが察してくれた。
『そうだな! 死ぬなよ!』
ベルトの発言に対し、イクスはフッと行きを短く吐きながら笑う。
「誰に口を利いているのです? ワタクシはイクス・レプレスタ! 偉大なるエルフ国家の王女ですよ!」
『まだ余裕がありそうだな! トゥア!』
コウガがディアナを抱えて、窓から飛び去った。
続いて、レンゲとクリスは同時に窓から退散する。
「ナメられたもんだね、怪神であるこのアタシに、一人で挑むなんてさ!」
杖をバトンのように回し、コブラ怪神は戦闘態勢を取った。
「いいえ。一人では、ありませんわ」
剣を抜き、イクスは変身の構えを取る。
「このベルトには、レプレスタのみならず、すべてのエルフたちの思い、願いが込められていますわ。ワタクシは、その思いを背負って戦うのですわ」
イクスは剣で、追加武装のバックルを撫でた。エスパーダの魔力が膨れ上がるのがわかる。
「なにを戯言を!」
「戯言かどうか、身を持って知るといいですわ! 変身!」
ポーズを取った直後、エスパーダのヨロイがイクスを覆い尽くす。
蒼い装甲の隙間を、燦爛たる黄金の装飾がカバーしていた。
軍刀も、壮麗なデザインへと変わっている。
マントに、オンディールの紋章が追加されていた。
『イクス。この形態は、
「ならば『エスパーダ・ローデス』と名乗りましょう。エスパーダ・ローデス、爆現!」
エスパーダが、剣を身体の前で立てる。
「その生命、森へお返しなさい!」
「なにをこしゃくな! レプレスタごときに、アタシが遅れを取るものかよ!」
杖をムチ状にして、コブラ怪神が振り回した。
ムチの複雑な軌道を、エスパーダは軽々とかわす。
今までの動きとは段違いだ。装飾の力によって、スピードがアップしているらしい。
エスパーダが、軍刀でコブラ怪神を斬り裂かんとする。
怪神も杖をサーベル状態に変形させて打ち合った。
だが、エスパーダの猛攻を止められない。
刃が怪神の身体に滑り込む。
怪神の装甲から、火花が散った。
「がああああ! だが、この装甲はヤワじゃないんだよ! 大怪人だったら、致命傷を受けていたところだろうけどね!」
装甲の特殊効果か、怪神の傷口がみるみる塞がっていく。
体力までは回復しきっていないようだが。
「どうだい、コウガ・シャイニングフォームのダメージすら受け止めたこの身体は! もはや、どれだけ
怪神が、杖を振り回した。
先端から、紫色の毒々しい駅を放つ。
ピアノの影に、エスパーダは隠れた。
まるで酸を浴びたかのように、ピアノがドロドロに溶ける。
『腐食毒攻撃だ!』
あんなものを浴びれば、エスパーダがどれだけパワーアップしても溶解してしまうに違いない。
「ならば、これでいかが?」
エスパーダが、マントを翻す。
「何をやっても同じことさ。この腐食毒は……な⁉」
マントが風のマジックアイテムとなって、腐食液を怪神へ弾き返した。
「ぐおお!」
毒液が左肩に当たった途端、怪神がうめき声を上げる。
『イクス、左肩の傷がふさがりきっていない。あれは、コウガが攻撃を浴びせた部分だよ!』
エスパーダのマルチアイによって、ノーマンが分析した。
弱点を探る機能まで備わっているとは。
「あそこにエスパーダの力を注ぎ込めばよろしくて?」
『そうだ。お見舞いしてやれ!』
「参りますわ!」
腕の装飾に、イクスは剣の背を滑らせた。
剣にエスパーダの全魔力が注ぎ込まれていく。刀身が、蒼い炎を上げた。
「生意気な小娘が!」
息を吹き返した怪神が、刺突するように杖を突き出す。
ヘビのムチによる無軌道突進を、エスパーダは縫うようにすり抜けていった。炎の刀身を旋回させる。
怪神の方も、杖をサーベル型に変形させた。フェンシングのように刺突を繰り出してくる。
敵のサーベルが、エスパーダの仮面をかすめた。
「トドメですわ! トンラセンド・ペネトレイト!」
狙い通り、炎の剣は怪神の左肩に命中する。蒼い炎が生き物のごとく、怪神の体内へ。
「あああああ!」
炎が全身に広がって、怪神の体組織を焼き尽くす。
怪神の装甲が、焼け落ちた。ベルトに戻り、二つに割れて落下する。
「これまで死んでいった犠牲者の痛み、思い知りなさい!」
「なにを。思い知るのは貴様の方だ!」
皮膚が焼けただれてもなお、コブラ大怪人の憎悪は止まらない。
「こうなれば、元の姿に戻らなくてもいい。要塞と一体化して、アタシ自らがこの世界を焼き尽くしてくれる!」
要塞の壁や床、天井から、細長い器官が伸びてくる。器官は大怪人の身体に突き刺さった。
「あはははぁ! みんなぶっ壊れてしまいなぁ!」
大怪人が、勝ち誇ったかのようにわめき出す。
『イクス、ここはヤバい! バイクの修理が完了したから逃げるぞ!』
バイクを召喚し、イクスは脱出した。
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