コーデリアの姉 死の真相
「我は考えを改めた。コウガが我を認めぬなら、我の方がコウガを越えると!」
『それで、デヴィランに加担したのだな?』
「いかにも!」
肉体をデヴィランの神に捧げ、自ら望んで改造手術を受けたという。
「だが、改造にはデメリットがあった」
ただ忠実なる下部となるなら、永遠に近い命を得る。
その代わり、人間より弱くなるのだ。
強さを得るには反比例して、肉体の崩壊を招く。
つまり、強くはなるが短命となってしまうらしい。
それを乗り越え、王子は不死の肉体と強力なパワーを同時に入手したというのだ。
「もはや我は、コウガを越えた! 我はフェンリル! この星を統べる魔王なり! 犠牲は大きかったがな」
嫌な想像が、頭をよぎる。
「まさか、あなたが」
コデロにも、分かったらしい。
「そうだ。我が、ナタリア第一王女を殺した」
客人だったナタリアは、王子が怪人の姿となってメイドを食べている姿を目撃した。証拠隠滅のため、王子はナタリア殺害したという。
「私はナタリアを殺害した後、魔物に殺された、と偽装したのだ。厳密には、配下に殺させた。仮死状態になって」
葬儀の後、自ら這い上がり、デヴィランの長として活動を始めた。
「では、あなたは自殺だというのですね?」
「そうだ。あのまま生きていては、デヴィランとして活動するには不自由する。死んで自由の身になる方が便利だった」
「どうしてナタリアを!」
「彼女は、我がデヴィランのリーダーだと知ってしまったからだ! 変化するところも見られてしまったのだからな」
だが、自分だけ生き残っていると、どうしても怪しまれる。
実際、第二王子の勘は鋭かった。
「なぜそこまでする必要が?」
「食いしん坊の第二王子は、鼻が利くからな。ヤツは気弱なバカだが、それゆえに強かで自衛能力も高い。最初から我を信用していなかった。忌々しい弟め!」
もはや、肉親にすら悪態をつくほどだ。
「ナタリアには、愛はなかったのですか?」
「愛してたさ! だがあの時は、殺すことこそ愛だった!」
「なんですって……」
コデロは、怒りに拳を握りしめた。
どこまで身勝手な男なのか。
自分の野望を実現させるためなら、肉親だろうが婚約者だろうが手に掛ける。
もはや、同情の余地などない。
彼のような人間は、生かしておくわけには。
「うわああああああ!」
コウガの身体が、さらに輝きを増した。
まだもうひと段階、変身できるというのか? それほどの凄まじさが。
『これは、レイジングフォームだ!』
だが、様子が変だ。先程の劣勢はどこへいったのか、コウガは怪人を圧倒する。どういうことなのか。
「なんだこのパワーは!?」
最初こそ優勢だったオオカミ怪人の方を、コデロは徐々に追い詰めていった。
「貴様は、殺します! 絶対に!」
怒りに任せて、コデロは拳を怪人に打つ。
コデロの戦い振りを見て、リュートはひとつの可能性を見出す。
レイジングは、ライジングの下位互換ではないのでは。
コデロがレイジングを使いこなせれば、より強いコウガへと進化できる。
強い怒りを否定しては、コデロの力は発揮できない。それは認めざるを得なかった。冷静になれという方が無理なのだろう。
とはいえ、リュートはコデロに対し、恐怖しか感じない。怪人に勝てるイメージが沸かないのだ。彼の脳裏によぎるのは、自滅の二文字である。
「許しません。ヴァージル、貴様を!」
大地を蹴って、レイジングキックを浴びせた。
『いかん、コデロ!』
危機を感じ、コデロに呼びかける。しかし、コデロの怒りを止めることはできない。リュートですら。
「そんな攻撃など!」
両腕をクロスさせて、オオカミ上位怪人は防御する。
ガードを突き抜け、コウガの蹴りは怪人にトドメを刺す、はずだった。
『なにぃ!』
突然、エネルギー切れを起こす。
「ムダだ!」
オオカミ怪人が腕を広げると同時に、コウガの技は弾かれてしまう。
床に墜落し、コウガは変身も解除された。
『ライジングフォームですら、通じないとは!』
「時代が違うのだ。我々がどれだけの年月を掛けて、コウガの対策を練っていたか!」
今やコウガは研究し尽くされ、最強ではなくなっているのか。
「はあああっ!」
オオカミ上位怪人が、手のひらに擬似太陽を形成した。
「見よ。これが、コウガを超えた魔王の力よ!」
疑似太陽を、コウガに向けて放つ。
コウガは、受け止めるだけで全身を焼かれそうになった。
「なんという力だ! ぬわああああ!」
踏ん張りがきかず、コウガは吹き飛ばされる。
爆発が生じ、辺りに爆炎が広がる。
煙が晴れると、妙に辺りが明るく感じた。
砦の天井、どころか砦自体が爆発し、巨大な穴が開いている。
周辺には、ドレイや冒険者のみならず、戦闘員たちの死体まであった。
味方まで、殺すのか。
「とどめだ、コウ……アガ!?」
最後の一撃を放とうとした怪人が苦しみだす。黄金の輝きは消え去り、元のオオカミ怪人へ戻った。
さらに、ヴァージル王子の姿に。
「な、なぜ! まだパワー不足だというのか! タイムリミットごときに、我が足止めされるとは!」
どうやら、強化には制限時間があるらしい。
「やはり、月の宝玉がなければ、持続せぬというのか?」
月の石……ラキアスが持っていたあの石は、やはり重要なアイテムらしい。
「むっ!」
ベルトに収まっている、月の石が光りだす。
「イスリーブ領主婦人ラキアスが持っているはず。貴様が何故持っている!?」
『ご婦人の危機を察知し、オレが預かったのだ』
「おのれ……!」
苦々しい顔になり、剣を抜こうとした。しかし、王子は膝をつく。彼も、限界なのだ。
「今日は退く。だが、貴様の月の石を貰い受ける! 必ず!」
引き下がった王子が、姿を消す。
『待て!』
変身ポーズを取るも、姿が変わらない。
コウガはもう、変身する体力すら失っていた。
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