俺の科学力は完璧だ

『この世界では、経理はすべてデジタルなんだな』

「デジタルとは?」


 そうか、電子制御ではない。


『魔法の力で、いちいち重い硬貨を持ち歩かなくて済むのは便利だな、と』


「何かと危険が多いですから。なるべく本人以外は扱えなくしたのです」


 タグだけ持ち帰っても、金が取り出せない仕組みだとか。よくできている。


「あのですね。報酬金額は、みなさんにも」

「よろしいので?」

「私はカレーの代金を稼ぎたかっただけです。それだけいただければ」

「ミレーヌ様のお店のですよね? はあ。分かりました」


 報酬金額は、他の冒険者と山分けとなった。

 なおも受付嬢は何か言いたそうにしていたが、コデロは聞く耳を持たない。


「新しいミッションはないか?」

「ないですねー」


 この一帯は、とある騎士団がモンスターを刈り尽くしたという。この前も、街を荒らしていた盗賊団を捕らえたらしい。


 腕利きらしき冒険者たちが待機しているのは、仕事がないからか。


「でも、それから騎士団のウワサを聞かないんですよねー。ギルドには報告だけして、後はこちらの国で始末するからって」


 妙だ。ギルドや役所を介さず、自分たちで私刑でもするのだろうか?


「あっ、一つだけミッションが。この近くの洞窟に、人間サイズの強いモンスターが出てくるようになりましたー。調査をお願いしまーす。可能であれば討伐をー」


 しかし、そのミッションを受けて生きて帰ってきた冒険者はいないという。


「討伐で登録しよう。行くぞ」


「大丈夫ですか? 誰も生きて帰っていません・いくらあなたっでも荷が重すぎるかと」


 受付は心配するが、ダニーは気にしない。討伐登録にチェックをし、退席した。


「あなたも戦うので?」

「俺にはこれがある」


 腰のホルスターから、鈍色に光る拳銃を取り出した。コデロに持たせた品と同種だ。


 ハッと思い出したかのように、カウンターへ。引き出しを引っ張って、一丁の銃を置く。


「コイツを持っていけ。たぶん、お前さんなら扱えるだろう」


 手の平に収まる程度の銃を、ダニーが差し出した。弾もコショウではない。光線銃だ。


「魔力を弾丸にして、撃ち込むんだ」

「お世話になります。ダニーさん」


 銃とホルスターを受け取ったコデロは、セットを腰に巻く。


『彼は、おやっさんと呼ぼう。おやっさん枠だからな』

「おやっさん、ですか。確かに」


 未知の世界を冒険するには、案内役が欲しい。ダニーは適任者と言えた。


「おやっさんか。まあオヤジだしな」

 ダニーも、悪い気はしないようだ。


「危なくなったら助けます、おやっさん」

「心配無用。俺の科学力は完璧だ」

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