聖女候補は、イヌ(悪魔)を飼う

ゆいみら

第1話良いペット見つけました1

 その獣を表すなら暗黒。


 深淵の闇。




 私には、その生き物のオーラが見えた。


 黒。見ていると息苦しくなるほどの圧迫感を感じる、そんな黒。




 いつからここにいるのだろう?


 長い黒髪は乱れて、顔を隠している。


 そこから覗く眼は、爛々と輝く金。


 下から睨み上げるように、こちらを照らすように光る。




 そう下から…。




 両腕には、太い鎖が何重にも巻かれ、その端は、神殿の遥か天井に穿たれた杭にきつく繋がれていた。


 膝をついた両足には、枷が嵌められている。ご丁寧に鉄の重しが付いて。


 その上、髪でよく見えないが、どうやら口にも特殊な布製の魔具がぐるりと巻かれているらしく、その獣は一言も発しない。




 ただ瞳だけが、鋭くこちらを睨み続けている。




 ぼろ切れを下半身に巻き付けただけのソレは、淀んだ球体状の結界の中にいた。


 裸の上半身の肉付きと体の小ささから、ソレがまだ幼い獣だと思われた。




「深紅……!」




 友達の橙が、私の腕にしがみついた。




「どうしたの?」




 震える橙に、首を傾げる。




「ど、どうしたって…、怖くないの?!あ、あんな化け物!」




 何言ってるの?!とばかりに、友達が言うけど、よくわからない。


 化け物?あの獣が?




「怖い?」




 いや、全く。




 私の顔を見た橙は、気持ち悪そうに眉をしかめていた。




 だって、嬉しくて。キラキラした目をしてるのは、仕方ないじゃない。


 背中がゾワゾワっとなった。これが萌えるってヤツだね!




 私は、獣に釘付けだった。生唾を呑み込んだ。




 欲しい!


 このコ、飼いたい!


 ペットにしたい!

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