第4話良いペット見つけました4

世界に果てなど無い、大地と海はどこかで繋がっていて、見えないほどに緩く丸いのだ。




 そう言ったのは、18年前魔王を封印した聖女。




 それまでは、魔王の統べる世界は、世界の果てにあると言われてきた。




 実際は今いるアテナリア王国の街道を西にずっと進み、鬱蒼とした大森林を抜けて、更に大河を渡った先にある大陸が魔界と呼ばれるところだった。




 そこまで馬車で一か月半。




 え、案外近いなと私は思った。世界の果て、近っ!




 封印された魔王は、いつかは復活する。その度に、わざわざ勇者と聖女と神官が封じに行く。




 倒せばいいと思うのだけど、魔王がいなくなれば統率が利かなくなって、下級魔族が暴走して、今の比じゃないくらい人間の住む領域を荒らすので、封印の形を取っている。




 魔王が目覚めたままだと、いずれ人間達の世界は魔界に取り込まれてしまう危険がある。


 大昔、世界の大部分が魔王軍に侵略されて、人間は隷属を余儀なくされた時代があったぐらいだ。




 その時、ある日奇跡が起こって人間は自由を手に入れたんだっけ?




 歴史の授業で習ったんだよね。覚えるの苦手だったな。




 18年前に封印された魔王が復活する時は、聖女の力量によって変わる。悪くて数年後なんてこともあるし、普通で10年後、今回は後2年ほどの猶予がある。




 つまり20年封印できる聖女様は、かなり強い聖女様だ。




 その聖女様が、目の前にいる。




 「ふあ、白亜様が近い!」




 滅多にお目にかからない本当の聖女様に会えるのは、最初に、ここに入学した直後と年に数回の国の大きな行事の時だけだ。




 試験に臨む皆も……と言ってもたった7人だけだけど…が、憧れで彼女を見ている。かくいう私も、彼女は尊敬してる。




 肩に届かない短い黒髪に白い肌。胸元まで開けたシャツに細身のズボンと男っぽい服装なのにスタイル良くて、30代半ばだというのに年齢を感じさせない目鼻立ちがはっきりした美人。




 強い眼差しは意思が強そうで、薄い唇はきりっと結ばれて、なんか凛としてカッコいい女性なんだ。声を掛けられたことは、あまりないけどね。それになんだか超然として掴み所のない神秘的な雰囲気も憧れちゃう。




 「いつ見ても、カッコいい……」


 「わかるけどさ、試験、集中!」




 じっと見てたら、橙に引っ張られた。




 私たちが先生に連れて来られたのは、神官が仕えている神殿だった。男の園だけど、人払いがされているのか、門番の男以外には、誰にも出くわさない。




 神官は、スカウトの経緯は一緒だけど聖女とは違う力を行使する。




 聖女が封印や治癒、闇属性の吸収の力に特化しているのに対して、神官は、防御や味方の身体強化、あるいは敵の体力減退の魔法を使う。




 20人の先生達が神殿の奥へと進む。彼女達は、いずれ次の聖女として魔王の封印に行くかもしれない人達だ。


 私達の後ろを歩く白亜様は、多分もう行かない。封印の力は強力だけど、身体的にも精神的にも負担が大きすぎる。


 二度も行えば、命や精神を削るだろう。




 突き当たりの壁に、封印の紋章があった。




 白亜様が、すっと前に進み出て、その紋章に手をかざし詠唱を小さく唱えた。




 紋章が光り、ゆっくりと壁に扉が現れた。その扉を先生が開けると、地下へと続く階段があった。




 「こんな所に…」




 私達は驚きながらも、先生達について階段を降りていった。薄暗くて不気味だった。


 降りた所は、思ったよりも広い部屋で天井も高かった。




 そこで、私は素敵な獣に出会った。


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