第76話 逆転現象
僕が千紗乃と付き合っていると嘘をついてから半月が経過した。
半月も経過すれば僕たちの話題も治るだろう、なんて思っていた時期が僕にもありました。
それが甘すぎる考えだということに気付いたのは最近になってからである。
僕と千紗乃が付き合っているという話は学校中へと知れ渡り、学校内ではどこを歩いていても視線を向けられる。
これまでは道端に落ちている小石程度の認識しかされなかった僕が急に注目の的となればその気苦労は計り知れないものがある。
それが気持ちのいい視線ならまだしも『あんな奴が神凪と付き合っているのか?』という好奇の眼差しなので居心地は最悪。
自分が千紗乃と釣り合っていないことくらい理解しているが、実際にそんな視線を向けられると更に自信を失っていきそうだ。
もう不登校になってしまいたいまであるが、そんなことで不登校になってしまえば僕だけでなく千紗乃にも迷惑をかけてしまうので我慢して登校してきている。
幸いなのは、千紗乃の周りに悪い虫が湧いていないことである。
僕と付き合っているという噂が流れれば、僕より自分に自信がある男子たちが千紗乃に無理やり告白したりする可能性もあったが、今のところはまだ誰からも告白されていないし男に言い寄られたりはしていないらしい。
唯一の安心材料を心の拠り所にしながら、今日も大勢の視線を浴びたが一日のスケジュールを終え帰宅することにした。
今日は千紗乃と雨森さんが遊びに行くということで一人での帰宅なので、僕は鞄をまとめてそそくさと教室を出た。
「本庄君だよね?」
教室の外に二人で集まっていた女子生徒二人が僕に声をかけてくる。
名前ははっきりと覚えていないが、隣のクラスの女子生徒だったような気がする。
「そうだけど」
「神凪さんと付き合ってるって本当なの?」
僕が女子に話しかけられるなんてどうせ千紗乃のことだろうとは思ったが、やはり千紗乃のことだった。
僕の目の前に立ち質問をしてくる女子生徒Aと女子生徒Aの背中に隠れている女子生徒B。
何の用があってわざわざ僕の教室まで来て声をかけてきたのだろうか。
「本当だけど。それがどうかしたか?」
「ふーん。やっぱり本当なんだ。ねぇ、私たちとご飯行かない?」
「……は? なんで僕が君たちとご飯に行かないといけないんだよ」
「そりゃあ
「--
先程までは引っ込み思案で静かな生徒だと思っていた女子生徒Bが急に大声で女子生徒Aの名前を呼んだ。
どうやら女子生徒Aは愛桜、女子生徒Bは憂という名前らしい。
いや、冷静に相手の名前とか記憶してる場合じゃなくない⁉︎
今とんでもないこと言ってたよねこの人⁉︎
え、いや、もしかしてこれ、千紗乃より先に僕が言い寄られるってパターンですか?
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